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【連続小説】騒音の神様 111 社長が動き出す。

皆でわいわいと晩飯を食べた後に、社長が言った。「あしたは、みんな休みや。あさっての朝、会社来い。」それを聞いて従業員達は、どんな反応をして良いか一瞬分からなかった。松原はすぐに切り出した。「いやいや、社長。行きますよ。俺行きますからね。」社長はすぐに「休みや。みんな、休むんや。ええな。」松原は、くいついた。「誰か他の人間入れるんですか、間に合いませんよ。俺行きますし。他も、来る奴おるし。高石、お前来いよ、」社長はもう一度言った。「みんな、休むんや。ええな。何回も言わすなよ。」場がシーンとした。本気の社長だと皆わかった。社長は落ち着いてゆっくり話し出した。「ええか、あしたは休むんや。体を休めろ。現場の事は心配せんでええ。一日二日、どうにかする。ええな。」皆が心配していた事が起こりそうで、怖かった。「社長が動く、それはあかん。絶対あかん、」と今日の騒動の帰り道、誰ともなく口にしていたし、口にしなくても分かっていたことだ。古株の一人が勇気を振り絞るように、唸るように言葉にした。「社長、気持ちは有難いんですけど、わしら大丈夫です。明日は」
「黙れ」、社長の即答で誰も何も言えなくなった。「どえらい事になってしもた。どえらい事をしてしもた。」心の中で皆が、今日一日の行動を言動を後悔し始めた。「何があかんかったんや。どこで、どう間違うたんや。」「社長が動く。」竹之内工業、社長、ボクシングミドル級元日本チャンピオン、竹之内塊童(たけのうち かいどう」が動きだす。

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