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【創作物語】騒音の神様 113 松原、車の中で社長について話す。

松原は社長との記憶をたどるように思い出しながら話しを続けた。「俺がこの会社に来たんは、社長が誘ってくれたんや。ジムに来てはってな。サンドバッグ叩いてるの見たけど、ど迫力や。ばけもんや思たわ。でかい体で、めっちゃ速いパンチや。俺に仕事の事、聞いてくれてな。日雇いばっかり行ってる、言うたら。うち来いや、言うてくれて。試合のときは融通効かしたる、言うてくれて。ジムの会長も、薦めてくれて俺すぐ竹之内工業入ったんや。」松原は、また話し続ける。「俺、チャンピオンなりたいんですわ、言うたんや。ほな社長、お前やったらなれる。面倒見たる、言うてくれて。嬉しかったで。めちゃめちゃ強そうな人に、それもチャンピオンになって、それから社長やってる人に、チャンピオンなれる、て言うてもらえたんやから。そら嬉しいわ。」そう言ってから、しばらく松原は黙った。車から見える景色をぼんやりと眺めながら、車は走った。しばらくすると、松原の家に到着した。松原は慌てるように「ああ、着いたか。もう着いてしもたか。まだ、社長のこと言いたかってんけどな、すまんな。あと、とにかく社長は喧嘩が強いんや。めちゃくちゃ強いんや。社長が暴れ出したら、誰も止められへん。みんな、それを心配してるんや。まあ、とにかく送ってくれてありがとう。朝、俺んとこ寄ってくれ、」運転していた若者が、「いや、あしたは休みやと、安め、と、社長が、、」松原は、「ええねん。俺んとこくるだけや、頼んだで。」そう言って、家の玄関に向かって歩いた。

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