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【連続小説】騒音の神様 95 松原とヒジ打ち男、盛山花守

高石が打ち込んだパンチは、サッパリ効いていないのが高石にも分かった。ヒジ打ち男こと、盛山花守は背中ごと高石にぶつかるように動いた。花守はそのまま背後を見もせずに、ヒジを後方に打ち込む。高石は必死で回り込み避けた。高石が回り込んだ方向に、松原も回り込もうとしていたので二人はぶつかった。二人の男が同じ場所に立った瞬間、花守は二人に体ごと突進する。ヒジを両側に突き出しながら、飛行機のように。松原は避けたが、高石はぶつかり地面に飛んでいく。松原は高石の心配をしている暇は無かった。ヒジ打ち男、花守の横から、右フックを打ち込む。正確にアゴにヒットした。ただ、残念ながら花守に効いている様子は無かったし、松原にもそれは分かった。松原が何発パンチを打ち込んでも、ヒジ打ち男は効いていない。それだけでなく、松原の拳が壊れそうに感じた。「でかい男のまわりを、小さな男がただ動き回ってるだけやないか。どうやって倒す、どうやったら倒せる、」松原は必死で倒す方法を考えた。それも、一瞬のうちに答えを見つけ出さなければいけない。「くそう、分かってる。パンチを打ち続けるだけなんや。しかし疲れる。なんや疲れる。」松原のは激しく呼吸をしていた。まさに、ぜえぜえ、ハアハアと息をしている。パンチのガードが下がっていく。ボクシングの日本チャンピオンにもなったことのある松原にとって、疲れるような時間は戦っていないはずだった。周りの男達からは、「高石、邪魔すんな、」「松原、言ったれ、」と言う声が飛んだ。その中に、「松原、一旦下がれ、」と言う怒鳴り声も聞こえた。

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