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【連続小説】騒音の神様 126 花守の一日

神様が電気屋さんで楽しんでいる頃、ヒジ打ち男こと花守はスーパーカブに乗っていた。刺すような陽射しの中、大和川のそばで汗だくになっている。今日はヘルメットもゴーグルも着けずに、気軽なスタイルだ。首にはタオル、足には仕事用の足袋を履きでこぼこ道を楽しんで走る。雑草を踏み分け、登れない坂はカブを降りて自力で押す。花守にとっては、楽しみであり体力トレーニングでもあった。帰る前には必ず、土手の急な坂を押して登る。土手の上に着くと、また下りてから押して登る。何度かこれを繰り返してから、家路につく。汗はびっしょりだが、花守は夏の暑さも汗をかくのも大好きだ。ゴツイ体にシャツがぴたりと張り付いて筋肉が浮き出た。家に帰ると、玄関口の水道にホースをつないで水浴びをする。頭から水を浴びるのは最高に気持ち良い。一眠りすると夜勤の工事現場に向かう。花守は南大阪の道路工事や埋立地、住宅地など様々な現場に行っていた。毎日飽きることが無かった。そして次に万博に行くのを楽しみにしていた。
「前より強い奴がおるとええな。」
毎回そんな風に考えていた。寝る前には腕立て伏せをまた汗をかくくらい行なってから寝た。寝る時にはいつも汗びっしょりになっていた。花守は玄関も裏口も開けて、風通しを良くしてセミの声を聴きながら眠りについた。

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