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【まとめ読み】騒音の神様 99〜100 でかい荒本、自称100キロ登場

 この花守達の戦いを、遠くから眺めている男達がいた。切り開かれて、土の地面だけが広がる造成現場。戦いの場所からは遠かったが、男達は木箱に腰かけたり、地面にしゃがみこんだりしながら休憩していた。そんな中の一人が花守達に気付き口にした。
「なんや、喧嘩やっとるで。あっち見てみい。」
「おー、ほんまやな。喧嘩やな。人が吹っ飛んでるやないか。めちゃくちゃ強いな。」
その話題に、あんパンを食べながらタバコを吸っている、ひときわデカい体の男が口を挟んだ。
「強いやと、俺の前でそんなこと言うなよ。俺より強いやつなんて、おらん。俺に失礼やぞ。」
と言うと周りの男達も
「まあそやな。お前より強いやつはおらん。」
「今から行って、倒したらどうや。ちっちゃい奴が頑張ってるけど、あれは無理やろ。相手でかいし強い。ああ、すまんな、まあまあ強い。」
そう言うと、あんパンをかじりタバコを吸いながら
「ちょうまて。あとあんパン二個あるんや。それ食べたら行く。暇つぶしや。すぐ終わらす。」
そう言ってあんパンを食べているうちに、拡声器の音が届いた。
「静かにするんや、、、騒音はいらん、、子供の音を、、」
と、はっきりとは聞き取れなかったがだいたいの音は届いた。その音を聞いて
「なんや、わけわからん事ぬかしとるな、」
「よっしゃ、食べ終わった。今から行くで、」
「はよ行け荒本、あの強い奴、帰ってまうど。」
「ああ、ほら見てみい。行ってしもたで。あんパンなんか食うてるからや。」
あんパンを食べ終わった荒本が立ち上がって遠くを眺めた。立ち上がった荒本を見て周りの男達が言う。
「やっぱりお前、でかいな荒本。」
「今のヘルメット男よりでかいやろ。」
「身長なんぼや、体重何キロあんねん。」
荒本は、でかい体で小さなショートホープに火をつけながら答えた。
「タッパは一八五や。体重は百や。ちょうど100キロなんやオレは、」
荒本は、ドヤ、と言わんばかりに答えた。
「オレにしてみたら、みんなちいちゃいんや。ちっちゃすぎる。あのヘルメット男も、ちいちゃいちいちゃい。」
そう言いながら荒本はショートホープの煙をぷかーと空に吐き出した。荒本はまだ話し続ける。
「待っとけ、ヘルメット変態男。いきなり現場来て、小さい人間たちをしばきまくるって、そうとう変態やろ。オレんとこ来んかい。ワシがあんパン食いながら弾き飛ばしたらあ。」
そう言いながら荒本はまた空に向けて煙をはいた。聞いていた皆は、
「頼むで荒本。お前は休憩してあんパンばっかり食うとるんやから、あいつ倒して役に立ってくれ。」
「そやで荒本、この休憩もお前のためやで、」
荒本はこれを聞いて怒りもせず、
「まかしといて。こういう時の為の荒本様や。小さい奴を踏み潰すための百キロや。はっはっはっは、ハハハハハハ、、、みんなも笑わんかい。」
そう荒本が言った頃には、皆立って仕事に戻ろうとしていた。
「荒本、はよ仕事せえ。」
「ほんまは百キロ以上あるやろ。少なく誤魔化しよったな。」
等と口にする。荒本は強いがリスペクトはされていないようだ。荒本は、
「もう仕事かい、汗が止まらんわい、」
と言いながら無駄に胸を張ってのしのしと持ち場に戻った。

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