【連続小説】騒音の神様 128 デカ男、また現る。

万博造成現場では、松原はじめ竹之内工業の従業員達が仕事に取り組んでいる。松原は足を引きずりながら、指示を出したり自分にできる作業をしている。皆が二日休んだ分を取り戻そうと張り切っていたし、当たり前のように現場の熱気の一部になっていた。竹之内は、松原達の仕事を手伝い、たまに一人万博現場内をハーレーで巡回していた。
 松原達は、顔も腕も真っ黒に日焼けしていた。午後二時半を過ぎた頃、松原はみんなに声をかけた。
「あと三十分したら、休憩しよ。」
「やったー、あとちょっとや、しかしあっついなあ、」
と言う会話を交わす。その時、近くに車が止まり、見たことのある人物達が近づいてきた。みなその姿を見て緊張が走った。デカイ体の男、荒本を含めて男三人が松原達のほうに歩いて来た。松原も他の皆も、その三人をにらみつけながら手に武器になりそうな道具を握りしめた。松原はやる気だった。デカ男の荒本が乗り込んできて騒動になり、その後松原が一人で仕返しに行ったのはほんの数日前。松原は男たちを見た瞬間、怒りと悔しさと殺意が湧いて来た。松原は男達のほうに進んだ。殴りかかるために。
「くそっ、あいつらまた来やがった。許さんぞ、」
デカ男の前を歩いていた男は松原達の殺気に気付き、ささっと松原に近づいて話し始めた。
「いや、先日はすまんかった。いや、すんませんでした。失礼なことを致しました。」
と言い、二人の男が腰から曲げて頭を下げてまず謝って来た。
「ほんま先日は失礼なことをしてしまいまして。申し訳なかったです。」
「荒本、お前も頭さげんかい」
と二人の男が必死にあやまる。デカ男はただなんとなく二人の男の後ろについて来ている。松原は急に謝罪が始まって驚いたが、まだ警戒していたし、他の竹之内工業の男達も油断せずに三人の男を睨み続ける。

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