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【連続小説】騒音の神様 129 竹之内工業、謝罪のサイダーを飲む

誤りに来た男は喧嘩になる予感を感じながら、そうならないように素早く動いた。
「ほんますんませんでした、竹之内工業の皆様、サイダーです。どうぞ皆さんで飲んで下さい、」と大声で言いながら手に持っていたバケツを地面に差し出すように置いた。
「さあ、どうぞどうぞ、暑いですよね。お疲れ様です。」
と言いながら二人で氷で冷やしたサイダーを取り出して、まず松原に手渡した。松原は受け取ってしまった。松原に手渡した男は内心「やった、受け取った、このまま皆に早よ配ろ、」と思い次々にサイダーを手渡していく。もう一人の男はすぐさま栓抜きで、サイダーのフタを開けていく。プシュっ、スワー、と言う良い音が響いた。あまりに良い音に、竹之内工業の男達は気分が良くなってしまう。そしてサイダーの瓶から泡があふれてこぼれそうになる。すぐに口でサイダーを迎えに行く。一口飲む。
「くわー、うまいわあ、」
と一人が飲み出すと、他の者達も後に続いた。みな、松原の様子を伺ってはいたがサイダーの勢いが上回ったようだった。松原はそれを察して言う。
「ほな、みな、いただこか。もらうでサイダー、」
と言うとサイダーのビンを口にあて、飲んだ。
「ふあー、うまいなあ。」
と松原が言うと皆、遠慮なくサイダーを飲んだ。
「いただきまーす、」
と口々に言いながら従業員達がサイダーを飲み始める。松原は別の場所で作業している者達も呼んでくるように若い者に伝えると、若い者は走っていった。デカ男はどこを見るでもなく興味なさそうに突っ立っていたが、しっかりサイダーを入れた一斗缶を持って来ていた。皆にサイダーを配った男が声をだす。
「おい、荒本、サイダーお前も配らんかい、」と言うと荒本も黙ってサイダーを配りだした。

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