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おにぎりくんのこと

私が住む大山町(鳥取県)に「おにぎりくん」と呼ばれる青年がいる。

「おむすび屋ひとむすび」の若き店主であり、いつも明るい笑顔でおむすびを握っているという青年である。

噂は耳にしていたが、先日、「ぐるぐるかいけ」という米子市のイベントに出店している彼と初めて会い、おむすびを握ってもらった。

お寿司屋さんのように細いねじりはちまきをした彼が、移動型屋台の前に立っていた。

すがすがしい。そんな第一印象だ。

「氣愛の塩むすび」というものを注文した。他のおむすびの倍はする値段だ。

手にしてみると、普通のサイズのおむすびだ。見た目も普通だ。

食べてみる。中身も普通だ。

しかし、何だろう。このじわじわと伝わってくる「何か」は。

おむすびを通して愛情、あるいは幸せが伝わってくる。身体が何となく癒やされていく。そんな気がするのは、見た目も大きさも中身も普通なのに、値段が倍するからだろうか。私はすでに「おにぎりくんマジック」にかかっているのであろうか。

彼が売ろうとしているのは、単なる食べものではないのではないか。

気になった私は彼のことを調べてみた。彼がおむすび屋を志すきっかけとなったのは、ある女性との出会いだったそうだ。

その佐藤初女さんは青森県で「森のイスキア」という悩みや問題を抱えている人々の癒やしの場を運営されていた。彼女のもとへ来た青年が、おむすびを食べて自殺を思いとどまった。そんなエピソードがあるということだった。

佐藤さんに会いに行ったおにぎりくんは、相手のことを思いやり、食べ物を大切に食材と向き合いながら、おむすびを通して人を元気にするおむすび屋になろうと決意したということだった。

「おむすび(お結び)」という言葉は、人と人を結び、ご縁を育むという意味を内包している。人を幸せにする何かを秘めている。そんなことを感じた、おにぎりくんとの出会いであった。

大山町にある「おむすび屋ひとむすび」はこちら:





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