見出し画像

賃上げ促進税制(続き)

前回の投稿では値上げに拘った内容となりましたので、令和6年度税制改正による「賃上げ促進税制」の内容について触れていきたいと思います。

まず、「賃上げ促進税制」の適用対象は以下の3類型に分類されます。
(※いずれも青色申告書の提出が要件)

1)中小企業向け
  資本金1億円以下の法人、従業員数1000人以下の個人事業主
2)中堅企業向け
  従業員数1000人超~2000人以下の法人、個人事業主
3)大企業向け
  従業員数2000人超の法人、個人事業主

今回は、特に相談が多く税額控除率の大きい“中小企業向け”の内容について説明させていただきます。

▶税額控除率

令和6年4月1日以降に開始される事業年度(個人事業主は令和7年度以降)にアルバイトやパート含む全従業員に対して支払った給与等(通勤手当含む、退職金は除外)が前事業年度と比べて1.5%以上増加した場合、その事業年度の法人税、所得税から税額控除が可能になります。
(※役員報酬や青色専従者、特殊関係人に支払った給与等は除きます)

給与等支給額の増加割合により、以下の通り税額控除率が変わります。
1.5%未満  ・・・適用無し
1.5%以上増加・・・税額控除率15%
2.5%以上増加・・・税額控除率30%

なお、令和6年4月1日以前に開始される事業年度については現行の令和4年度税制改正の内容が適用されます。

▶上乗せ措置

また、従業員向けに支出した教育訓練費が前事業年度と比べて5%以上増加した場合
→ 控除税額率10%上乗せ
男性の育児休業取得を推進する「くるみん以上」または、女性の職場での活躍推進を後押しする「えるぼし2段目以上」の認定を受けた場合
→ 控除税額率5%上乗せ

※くるみん認定 https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/jisedai.pdf

※えるぼし認定 https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000594317.pdf

つまり、上乗せ措置を加えて合計で最大45%の税額控除を受けられるという内容です。(※控除上限額は法人税等の20%以内

▶未控除額の繰越控除

また、今回から新たに未控除額の繰越控除措置も創設されました。
こちら、どいういうことかと言いますと・・・

◇ せっかく賃上げしたのに今期は赤字なので税額控除できない
◇ 前期以前の繰越欠損金があるので法人税額が0円なので税額控除できない
◇ 税額控除額>法人税×20%で控除額が使い切れない場合

上記の場合、せっかくの税額控除額が引ききれずに残ってしまいます。
この、賃上げを実施した事業年度に控除しきれなかった控除金額を最長5年間繰り越して控除できるというのが、令和6年度税制改正による「賃上げ促進税制」の大きな改正ポイントです。

<計算例>

以下のケースで見てみましょう。

前期給与等支給額:600万円 前期教育訓練費額:100万円
今期給与等支給額:660万円 今期教育訓練費額:120万円
今期法人税等額 :30万円
              ⇩
給与等支給額増加額   :660万円-600万円=60万円(増加率10%)
控除可能額       :60万円×30%=18万円①
教育訓練費増加額    :120万円-100万円=20万円(増加率20%)
控除可能額       :20万円×10%=2万円②
当期税額控除限度額   :30万円×20%=6万円③
繰越控除額(①+②-③):18万円+2万円-6万円=14万円

上記の例では、今期の法人税額30万円から6万円の税額控除が受けられ、引ききれなかった14万円は来期以降5年間繰り越されることになります。

いかがでしょう?
賃上げの際は1.5%以上という基準を覚えておいていただければと思います。
今回は中小企業向けに絞っての解説となりましたが、中堅企業や大企業向けの要件を知りたいという方はご連絡いただければと思います。

なお、この「賃上げ促進税制」は確定申告時に別表を記載し添付することが必須要件となります。(当初申告要件
確定申告時に添付を失念しますと、後から更正の請求をしても適用できませんのでお忘れなく。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?