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「安いから買うという行為」を理解する

「安いから買うという行為」。私は、この行為に至るまでの心理状態が上手く理解できていない。これは、自分の物欲が少ないこと、買い物への興味が少ないこと、物質的な充足が自分の幸福度にそれほど関係していないことなど、自分の性格に起因している。そもそもの性格に起因して理解に及んでいないのだから、他者の感情を正確に理解する様な試みが困難であることは理解している。しかし、「安いから買うという行為」は世間でも一般的な行為であり、家族や友人がこの行為に及んでいる場面に立ち会う機会も多い。なので、周りの人への理解を深めるためにも「安いから買うという行為」に至るまでの心理状態を自分の中で確立しておく必要があるのだ。身近な疑問に自分なりの答えを用意しておくことで、頭の中のモヤモヤを解消することが今回の主な目的である。

「安いから買うという行為」を理解するにあたってまずは、この行為を定義していこう。安いから買っているのか、必要な物が安くなっていたから買っているのか、欲しかった物が安くなっていたから買っているのか。洗剤やトイレットペーパー等、生活必需品を購入する場合は、「安いから買うという行為」に該当しない、必要な物の購入だからだ。また、以前から購入を検討していた物を購入する場合、これも「安いから買うという行為」に該当しない、そもそも欲しいという前提で買うからである。スーパーで安い食料品を見かけた際、食べるかもしれないから購入する。これは、「安いから買うという行為」に該当する。理由は購入の動機が欲に直結していないからだ。

食べたいから買うのではなく、安いし食べるかもしれないから買っておく。これは、食欲に直結した購入ではなく、安いことを理由にした購入だ。「安いから買うという行為」を改めて定義すると、「購入の動機が安いということ以外に、欲に直結していない商品の購入」ということになる。

それでは、「安いから買うという行為」への理解を深めていこう。この行為は主に食料品を対象に行われることが多い。前述のスーパーで安い食料品を見かけた場合や、レストラン等での「お得」なセットを見かけた場合など、意図しないところで「お得」を見かけた場合によく見られる行為だ。不意に訪れた「お得」に対する判断は確かに難しい。食欲が絡むとなると、なおさらだ。

私は以前、ラーメン屋で食べきれないチャーハンを注文する現象について、考察したことがある。実際に食べ始める前の食欲というのは底なしで、いくらでも食べられる気がするのだ。しかし、実際には食べ始めてすぐに満腹中枢が刺激され、自分の限界に気が付く。問題は、食べ始めるまでは気が付かないということだ。

この食べ始める前の食欲問題に「お得」が絡んでくるとなると正しい判断をすることは難しい。「お得」に底なしの食欲を満たせるならば、そちらを選択するに越したことはない。しかし、実際にはラーメンのみで食欲を満たすことは可能であり、チャーハン分の注文は過剰摂取である。金銭面で見れば、チャーハンを注文しなかった場合の方が「お得」である。

ここに新たな問題が生じる。二郎系ラーメンを好んで食べる人に多く見られる、食事の過剰摂取にある種の達成感を感じる人の場合、過剰摂取で得た幸福の対価として支払った金額を考えれば「お得」なのではないかと。「お得」という言葉は、金銭面での「お得」に対して使われることがほとんどだが、幸福面での「お得」というのは実際に存在する。わかりやすい例で言うと、旅先での嬉しいハプニングなどが該当するだろう。そもそもの幸福に不意な幸福が重なることで、幸福面の「お得」が発生する。これには個人差があるので、今回は幸福面での「お得」は一旦考えないものとする。

食べ始める前の食欲を根拠に購入する場合に「安いから買うという行為」が多く行われることは理解できた。これは、食欲の問題だけではなく物欲や所有欲など、様々な欲求にも当てはまるだろう。

食べ始める前、物を購入する前、所有する前などの欲を満たす行為に取り掛かる直前の欲を「仮想欲」とし、実際の欲を「実欲」とする。自分の「実欲」を理解していないと、「仮想欲」を根拠に欲を満たそうとするので、「実欲」以上に購入してしまうことになる。

この「仮想欲」と「実欲」の差を普段は把握できているのだが、いざ欲求の対象を前にすると判断が鈍ってしまう。その状況に「お得」という材料が加わるとさらに判断が難しくなる。その結果、「仮想欲」を根拠に「実欲」以上の購入をしてしまう。これが「安いから買うという行為」の裏にある心理状態なのだと思う。

「安いから買うという行為」が間違っているかというと、幸福面での「お得」を考えるとそうではない。買うという行為自体に幸福を感じる場合もあるため、一概に何が正しいとは言えない。幸福面を踏まえた上での「実欲」を把握し、購入までの判断をすることが重要になってくるだろう。言葉にするのは簡単だが、「仮想欲」と「実欲」の見極めは難しい。

今回、自分の中で【「安いから買うという行為」に至るまでの心理状態が、どの様なものなのか】という問いに対して答えを出せたことに加え、「仮想欲」という人間らしさを表す重要なポイントを自分の中に確立できたことも大きな収穫だ。

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