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アニメ「PSYCHO-PASS」の魅力2(ネタバレなし)

先日、「劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス PROVIDENCE」を見てきました。感情の揺さぶられる最高の映画でした。今回は、映画を見て改めて感じた「PSYCHO-PASS」の魅力について書いていきたいと思います。「PSYCHO-PASS」の大まかな説明や自分が好きになった経緯等については、以前にも書きましたので割愛させて頂きます。気になる方は、下記の記事を読んでみてください。「PSYCHO-PASS」という作品の構造上の面白さについて書いています。

今回は、私が感じた「PSYCHO-PASS」の魅力について紹介していきます。あくまで私の主観的な感想であり、製作者の意図とは異なる感想が含まれているかもしれませんが、ご了承願います。

私が「劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス PROVIDENCE」を見て、改めて感じた作品の魅力とは、「PSYCHO-PASSの舞台、2100年代の日本が抱える問題に対するアプローチが現実的である。」ということです。人間のあらゆる心理状態を数値化し管理する巨大監視ネットワーク『シビュラシステム』が人々の治安を維持している近未来では、善悪の判断基準が全てシステムに委ねられています。人間による善悪の判断が必要とされていないため、「法律は既に不要である」という論調すら強まってきています。登場人物たちは、そういった世界の中で、正しさとは何か、真実とは何かを考え行動する。そんな人間模様が「PSYCHO-PASS」の魅力です。

『シビュラシステム』による監視社会での正しさとは何か、というのが作品の大きなテーマの一つなのですが、このテーマに対するアプローチが現実的で、魅力的なのです。『シビュラシステム』による監視社会には、『シビュラシステム』に全てを委ねようとする者、『シビュラシステム』と法律を両立し議論の余地を設けようとする者、善悪の判断を誰にも委ねない者など、様々な考えを持ったキャラクターが登場するのですが、その全員にそれぞれの正しさがあるのです。中には過激な思想のキャラクターもいるのですが、そのキャラクターの考える正しさにも一部共感できる部分があり、一概に悪と断定することは出来ません。では、「PSYCHO-PASS」に登場する敵の何が悪とされているのかというと、それは正しさの強要です。

この様な状況の中で「PSYCHO-PASS」という作品が、「『シビュラシステム』による監視社会での正しさとは何か」というテーマに対して、どの様な答えを出すのかが重要なのですが、シリーズ全体を通して私が感じたのは、「様々な正しさがある中で、それぞれが妥協できる落としどころを探る」という過程を見せているのが「PSYCHO-PASS」という作品が視聴者に示している答えなのではないかと感じました。あくまで、作品としての答えは出さず、落としどころを探る様子を見せることで、視聴者にも正しさとは何かを考えてもらう。この姿勢が「PSYCHO-PASS」の魅力であり、視聴者に当事者意識を芽生えさせる要因なのだと思いました。

勇者が魔王を倒して平和になるとか、主人公とヒロインが結ばれて幸せになるといった、わかりやすい結末ではなく、作品を通して落としどころを考えるという「PSYCHO-PASS」の姿勢は、とても現実的です。現実世界で出てくる答えはいつもグレーで、白黒ハッキリつけれるものなど、ほとんどありません。勇者が魔王を倒した後どうなっていくのか、主人公とヒロインが結ばれた後どうなっていくのか。「PSYCHO-PASS」という作品は、各シーズンの結末の後、エピローグが描かれるのですが、内容としては結末のその後のプロローグです。各シーズンが結末のその後のプロローグで終わることで、2100年代の日本が抱える問題が根本的に解決していないことを示唆しています。そもそも、問題の根本的解決というのはファンタジーの領域であり、現実的ではありません。そこを巧みに描いているのが「PSYCHO-PASS」という作品です。

今回、「劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス PROVIDENCE」ではその辺りが、より強調して描かれているなと感じました。正しさへの向き合い方がキャラクターによって異なり、正しさについて考える大切さや、他人の正しさに対する敬意、与えられた正しさを妄信してしまう弱さ、自分の正しさを信じぬく強さなど、一つの作品で正しさが多面的に描かれています。

「PSYCHO-PASSの舞台、2100年代の日本が抱える問題に対するアプローチが現実的である。」という魅力には、視聴者を作品の当事者として引き込み、夢中にさせる力があります。正しさについて多面的に描くことで、自分だったらどうするだろうかと考える余地が生まれ、さらに当事者意識が増してきます。これこそが「PSYCHO-PASS」の魅力なのです。

「PSYCHO-PASS」は自分にとって、正しさとは何かを考えるきっかけになった大事な作品です。この記事をきっかけに「PSYCHO-PASS」に興味を持つ人が増えたら嬉しく思います。

「劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス PROVIDENCE」素晴らしかったです!

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