「サザエさん」は何故「さん」付けなのか


「サザエさん」は言わずと知れた、50年続く国民的アニメだ。漫画原作であるとか、何時に放送されているといった説明は不要だろう。その作品の主人公、「フグ田サザエ」、彼女は何故、視聴者から「さん」付けで呼ばれているのだろうか。「さん」とは、対象の人物及び団体等に対して尊敬の意を表す際に用いられるのだが、「フグ田サザエ」がまだ24歳であることや、おっちょこちょいな性格、おしゃべりで人当たりの良い様を考慮すると、「ちゃん」付けの方が自然だよなぁと思ってしまう。



作品のタイトルが「サザエさん」であるが故に、「フグ田サザエ」のことを作品の登場人物を除いて、ほとんどの人が「さん」付けで呼んでいる。果たしてこれは、「フグ田サザエ」を呼称するにあたって適しているのだろうか。「さん」付け以外にもっと適した呼称があるのではないだろうか。「サザエ」や「サザエちゃん」、「サザエン」、「ザエちゃん」、「サザ」など、「フグ田サザエ」を呼称するにあたっての可能性をタイトルが「サザエさん」だからという理由だけで潰してしまうのはもったいない。故に私は、「フグ田サザエ」が「さん」付けで呼ばれることが適しているのかどうか考えていくことにした。



私が抱えるこの問題を考えていく上で、別の大きな問題が存在する。それは、皆が言う「サザエさん」が作品のことを指しているのか、「フグ田サザエ」個人のことを指しているのかよくわからない問題だ。私が抱えている問題は、「フグ田サザエ」個人のことを皆が「さん」付けで呼んでいると仮定した場合の問題であって、全国民に『「フグ田サザエ」個人のことを何と呼んでいますか』というアンケートを取った際に「サザエ」や「サザエちゃん」が多数派だった場合は、私が抱える問題は存在しなかったことになる。よって今回は、皆が「フグ田サザエ」個人のことを「さん」付けで呼んでいると仮定して話を進めていく。



「フグ田サザエ」は24歳で一児の母だ。若くして母親になり、「タラオ」を育て上げているのは尊敬に値する。正直、一児の母というだけで「さん」付けするには十分な要素なのだが、立場だけで「さん」付けするかどうかを決めてしまうのは、いささか乱暴だ。その人の愛称というのは、普段の行動や人間性、周りとの関係性などで決まってくる。実際に「サザエさん」の主要な登場人物で「フグ田サザエ」を「さん」付けで呼ぶのは「ノリスケ」くらいで、家族や友人等からは、別の呼び方で呼ばれている。視聴者は「フグ田サザエ」を一方的に認知しているに過ぎず、直接的な関係は無いため、実際に「フグ田サザエ」に声をかける場合は「さん」付けが妥当なのだが、有名人やアニメのキャラクターを本人がいない場所で「さん」付けするのは、やはり違和感がある。



「サザエさん」の公式サイトで「フグ田サザエ」は、明るく朗らかとか、竹を割ったような性格とか、おしゃべりでおっちょこちょいなどと紹介されている。この特徴であれば、本人がいない場所で呼ぶなら「サザエ」もしくは「サザエちゃん」が妥当だろう。要するに、「フグ田サザエ」の人間性のみで判断した場合は、「さん」付けは適していない。



ここまでをまとめると、「フグ田サザエ」の一児の母という立場を考えると「さん」付けが妥当だが立場のみでは判断材料として不十分、視聴者と「フグ田サザエ」に直接的な関係が無いため、関係性の観点からは呼称を決める材料は無し、「フグ田サザエ」の人間性を考慮すると、呼び捨てもしくは「ちゃん」付けが妥当と、いまだ「さん」付けが適していると判断するには、これといった材料がない。



呼称を決める上でのもう一つの判断材料として、「フグ田サザエ」の普段の行動を考慮する必要がある。「フグ田サザエ」の普段の行動は、家事をするか、「カツオ」を叱り追いかけまわすかの2パターン。お出かけしたり、トラブルに巻き込まれたりといった特殊な事例は、今回考えないものとする。家事をしている様子と、「カツオ」を叱り追いかけまわす様子だと、視聴者のイメージとして強く脳裏に焼き付いている方は、「カツオ」を叱り追いかけまわす様子だろう。「カツオ」を叱る際は、姉としての立場で叱っており、「カツオ」も「フグ田サザエ」を「姉さん」と呼んでいる。つまり、視聴者の頭の中では姉としての印象が強く残っているのだ。



「フグ田サザエ」は一児の母であると同時に、「カツオ」の姉であり、視聴者の頭の中では、「カツオを叱る姉」という印象が強く残っている。そして「カツオ」は叱られている際に、「姉さ~ん」と言うのだ。この要素は、「フグ田サザエ」を視聴者が「さん」付けで呼ぶのに十分な材料である。



ここまでくると、「フグ田サザエ」が「さん」付けで呼ばれていることは妥当であると認めるしかない。しかしこれは、作品のタイトルが「サザエさん」だから「さん」付けで呼ばれているのではなく、「フグ田サザエ」が一児の母であるということと、「カツオ」との関係性を起因とした「さん」付けであるということがわかったのは、大きな収穫だ。「フグ田サザエ」を呼称する際は「さん」付けが妥当という結果になってしまったが、必ずしも「さん」付けする必要はない。「サザエ」、「サザビー」、「サザ姉」、「ザエちん」、「サザ」など、自由に呼べばいいのだ。周りに合わせる必要など無いのだから。



今回は「サザ姉」にならって、最後にジャンケンしたいと思います。



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