箱庭タウンズ

 子どものころから、箱庭ゲームが好きだ。
 スーパーファミコン版のシムシティに出会ったのは、小学五年ごろだっただろうか。とにかく夢中になった。あれにはどれだけ時間を費やしたか知れない。暇さえあれば、盆栽の手入れをする老人のように道路や線路を引き直して遊び、それに飽きたらいちからまた始める。外に出れば街並みが全てアイコンに見えた。バランスが悪いからとりあえずあそこは潰すか、なんてことをぼんやり考えてはにやにやするという子ども時代であった。
 シムシティといえば、目標に掲げられているのが、街を大きく――人口五十万都市のメガロポリスにすることだ。しかし(今はどうだかわからないが)、シムシティでメガロポリスを作ろうとした場合、碁盤のように区画を作らねばならない。整然と並んだアイコンは機械のように精密できちんとしている。わたしはこれがなんとなく嫌いだった。自由度の高いゲームのはずなのに、自由度が狭められている気がしたのだ。なので、わたしはわたしなりの、面白いと思う街を作っていた。好きなキャラクターの住む街をイメージしたり、自分の住んでいる町を再現しようとしたり。花畑を作り、その中央にはわたしと美知主(当時の推し)のお家☆など夢いっぱいだった。シムシティの本来の楽しみ方は、こちらであろう。でかけりゃいいってもんでもないのだ。
 とはいえ、メガロポリスに憧れなかったわけではない。攻略本や雑誌を読み込んでいたうえ、几帳面で理論屋の弟は、このメガロポリスを作り上げる職人だった。弟の街はレベルマックス状態のアイコンが画面いっぱいに展開し、躍動していた。しかも、BGMがやたら華やか。マリオ像だの何だの、見たことのないアイテムが並ぶ圧巻の街並みを横目で見ていたものである。
前置きが長くなったが、今のわたしはカイロソフトのゲームが大好きで、最近心奪われっぱなしなのが『箱庭タウンズ』である。端的に言って、最高。
その名の通り、自分の好きな街を好きなように作れるという、わたしの理想通りのゲームである。住民は皆かわいらしく、改名もできる。職業を変えたり、結婚したり。子どものキャラクターは成長までする。先日は花輪くんとみぎわさんが共に成長し、結婚するというイリュージョンが起き、感動した。みぎわさんの職業が部長(何の?)、花輪くんの職業が遊び人ということも含め、いろいろ想像が捗って仕方がなかった。その一方で、タモリさんが磯野フネさんに告白をし、玉砕するというドラマもあった(ゲーム内ですよ、念のため)。すばらしいゲームである。
 最初こそ無課金で頑張ろうと思っていたけれど、四日後にはしっかり課金していた。こんなすてきなものを作ってくださってどうもありがとうという感謝の気持ちを込めたつもりだ。しかも広告が出なくなったし、めちゃくちゃ快適です

 携帯でゲームをすることなど殆どなかったのだけど、いや、いいものですね。暇さえあれば手のひらに収まる街並みや、そこに住まう人々を眺められる。そこに、無限の想像の場がある。わたしにとってのゲームとは、今も昔も、想像の欠片なのだ。
 さて、目下の目標は、そのこちゃん(言わずもがな、わたし)が、ヨシヒコ(勇者のあれです)と結婚することなのだが、油断していたら石原さとみちゃんに奪われそうになった。さとみちゃんには即刻、遠く離れた地に越してもらった。さらば、ライバル。

 そんなこんなで、しばらくはこの小さな箱庭から出られそうにない。

#町田そのこ #箱庭タウンズ  

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