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アルカトラズ監獄島

アルカトラズ島は、サンフランシスコ湾内に浮かぶ小島である。昔はここに灯台があり、そして軍事要塞、軍事監獄となり、1934年から連邦刑務所として使用された。アルカトラズ島は社会の敵である凶悪犯を収容する施設という役割を長く担った。

アルカトラズ刑務所は1963年に閉鎖されたが、直接の理由としては老朽化に伴う莫大な修繕費と耐震性に問題があったことだった。食糧や水など、あらゆる物資を船で運ばなければならず、刑務所の維持費も高額であったことが閉鎖につながった。しかし、映画『告発』(1995年)に描かれている事件も、閉鎖を決めた大きな原因になった。

17歳のヘンリー・ヤングは、幼い妹のために、村の売店に仕事をもらいに行くが、断られ、思わず店にあった5ドルを盗んでしまう。たまたまその店が郵便局も兼ねていたことから重い連邦犯罪となり、懲役25年の刑で彼はサンフランシスコの湾頭に浮かぶ監獄島アルカトラズ刑務所に送られる。映画「告発」の冒頭シーンである。

ヘンリーは刑務所仲間数人と脱獄を試みるが、仲間の密告で失敗し、かれは自分の手さえも見えない暗闇の地下独房に放り込まれる。そこで、彼はグレン副所長のサディスティックな虐待を受け続ける。3年後、地下牢から出されたヘンリーは、食堂で脱獄を密告した元の仲間と偶然出会う。平衡を失った精神状態で、ヘンリーは持っていたスプーンでその密告者の喉を突き刺し殺害し、第一級殺人罪で起訴された。

ヘンリーの弁護を引き受けたのは、ロースクールを出て間がない新米弁護士、ジェームズ・スタンフィルであった。200人の目撃者がいて、正当防衛などの事情もない。ヘンリーの有罪、すなわち死刑は確実だった。周りから猿でも弁護できる事件だと言われるが、ジェームズは、ヘンリーの態度や言葉のはしばしからアルカトラズ刑務所の異常な囚人虐待の事実に気づいていく。冒頭陳述でジェームズは、ヘンリーの無罪を主張し、アルカトラズ刑務所そのものを告発するのであった。

(注)甲南法務研究第8号(2012年3月)編集後記に加筆

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