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戦争と薬物

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疲労、飢餓、恐怖、睡眠不足、これらが戦争のもっとも基本的な要素である。薬物はこれらの問題を中和する手段である。個人の戦闘行動も、集団の戦闘行動も、すべてその当時の文化規範や道徳規…
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#タバコ

禁煙令に違反した者は鼻と唇を切り落とされて処刑された

タバコは、紀元前5000年から3000年の間にアンデス地方で初めて栽培され、その不思議な効能から、宗教行事や戦争前の儀式用、あるいは薬用として重宝された。人びとは、戦いの前には戦士の顔に、農耕の始まりには畑の土に、また性行為の前には女性の身体に紫煙を吹きかけた。 タバコは徐々にアメリカ大陸全体に広がり、ヨーロッパ人が到着するまでにはしっかりと根付いていた。コロンブスから始まって、新大陸に到着したヨーロッパ人たちはすぐにタバコが手放せなくなった。 タバコがヨーロッパ大陸に定

戦闘の前にまずは一服

アルコール(酒)とタバコは、第二次世界大戦における戦時薬物としては、もっとも重要な薬物だった。タバコは、神経を鎮め、空腹を抑え、退屈を凌ぎ、負傷者を慰め、兵士の仲間意識を高め、士気を高揚させることができるからである。そして何よりもタバコは国を豊かにした。 イギリスでは、タバコは軍の必需品とされ、民間への配給は免除された。アメリカでは、タバコ産業は政府によって手厚く保護され、莫大な収益を得ていた。ルーズベルト大統領は、徴兵委員会にタバコ栽培業者の徴兵を猶予するように命じていた