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ベルモンド傑作選3 - 一つはアタリ、もう一つは…。
新宿武蔵野館でジャン=ポール・ベルモンド傑作選3。先週7作品中未見の2作を観に行った。
一つ目はずっと観たかった『勝負をつけろ』。
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原作はジョゼ・ジョヴァンニのノワール小説『ひとり狼』。監督はジャン・ベッケル。
この作品は11年後に著者ジョヴァンニが監督して『ラ・スクムーン』として同じベルモンド主演でリメイクされている。『ラ・スクムーン』の方は既に観ていたので内容は知っていたが、『勝負をつけろ』の方が個人的にはずっといいと思った。
ざっくりあらすじ
1930年代から第二次大戦後までの物語。
銃の早撃ちの名手ロベルト(ベルモンド)は冤罪で服役中の親友グザヴィエを救おうと、彼を陥れたカジノのボスを倒し、その縄張りを奪う。その間、グザヴィエの妹ジュヌヴィエーブにも何くれとなく世話を焼く。
街の酒場に現れたヤクザまがいの米兵崩れたちとの闘争で自身も服役したロベルトは、刑務所でグザヴィエと再会。
やがて二人は刑期短縮の恩赦が受けられる地雷除去の作業に就く。地雷の爆破でグザヴィエは負傷したものの、二人は出所し、用心棒として再起する。ジュヌヴィエーブも交えて新たな日々を送ろうとするが…。
1972年作の『ラ・スクムーン』は、40歳目前のベルモンドの佇まいにも話の内容にも厚みが増していたが、こちらは若くすっきりとしたベルモンド。全編とにかく淡々としている。最後も、まさかこれで終わりじゃないよね?と思っていたらいきなりスクリーンにFinが出た。
でも、そういうストンとした終わり方は嫌いではない。
『ラ・スクムーン』ではベルモンドの親友グザヴィエ役だったミシェル・コンスタンタンが、『勝負をつけろ』ではベルモンドと敵対する米兵くずれのチンピラ役!何をしでかすかわからないフランケンシュタイン感が漂う強面だから、こっちの方がはまっていた。
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普通にしてても怖い
一方『勝負をつけろ』でのグザヴィエ役、ピエール・ヴァネックがたっぷり見られたのはよかった。
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ヴァネックは第二次大戦下のレジスタンス運動とパリ解放を描いた『パリは燃えているか』では、危険を顧みず米軍に援護を求めに行くかっこいいガロア少佐役だった。
でもこの映画はベルモンドやアラン・ドロン、オーソン・ウェルズ、カーク・ダグラス、イヴ
・モンタン、アンソニー・パーキンス、ジョージ・チャキリスらの錚々たる俳優がたくさん出ていたためか、ヴァネックのクレジットは末席。
映画パンフレットにも、ベルモンドとドロンの写真はたくさんあるのに…
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二人とも若い
1966年作品
ヴァネックの写真はこの一枚だけ。
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『勝負をつけろ』のグザヴィエは、まじめで健気な妹に心配かけてばかりのダメ兄ちゃんで、ちゃんしたいのにできないんだよ、って空回りする感じがよく出ていた。
所作も控えめで表情乏しいけど、いい俳優。
もしも日本の小津映画に出たとしても違和感なく溶け込んでいるような気がする。
とにかく『勝負をつけろ』は当たり。満足。
二つ目は『ベルモンドの怪盗二十面相』。
40数年ぶりの劇場公開だそう。
初めて観るのでワクワクしつつも邦題からなんだか悪い予感がしていたのだが、的中。
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なぜに『怪盗二十面相』って邦題?実際には怪盗ではなく詐欺師。『ムッシュとマドモアゼル』や『ベルモンドの道化師 ドロボーピエロ』もあまりの酷さに泣けてくる邦題だったが、経験則ではイタい邦題は内容もはずれが多い気が…。
ざっくりあらすじ
ヴィクトール(ベルモンド)は、刑務所から出所したその足ですぐに不動産詐欺をはたらくという懲りない常習詐欺師。その詐欺もくるくると変装して同時進行で複数をこなす。詐欺稼業の傍ら複数の女性との関係もおろそかにしない。
そんな彼の元に保護観察官としてやってきたマリー・シャルロットは、親身にヴィクトールの更生の手助けをしようとする。
ヴィクトールはマリー・シャルロットに惹かれるように。
彼女の父が学芸員をつとめる美術館に、エル・グレコの名画があると知った詐欺仲間が、絵を盗み出そうと画策し、ヴィクトールも加担するが…。
冒頭の、刑期を終えて出所する場面からもう既視感。ベルモンドは刑事役も多いが、犯罪者、前科者役も多数。脱獄含めてムショから出てくるところ、何度見たことか。
シンプルなストーリーのドタバタコメディ。詐欺師の変装もおざなりでチープ。派手なアクションはないがベルモンドが得意とする、せわしなく動き回ってマシンガントークを繰り広げる展開に、疲れを通り越してだんだんイライラしてくる。周りでは何度も笑いが起こっていて、確かに楽しい映画ではあるのだが、ただそれだけ。
よかったのは、マリー・シャルロット役のジュヌヴィエーブ・ビジョルド。役所勤めの保護観察官なのでずっと地味な服でお堅い雰囲気なのだが、
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手料理作ってベルモンドを自宅に迎えた時のファッションが最高にキュート!
白Tにジーンズ、腰にエプロンがわりにスカーフ巻いてとても軽やか。この後のお着替えもかわいかった。
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ジュヌヴィエーブ・ビジョルド、『パリの大泥棒』でベルモンドの相手役をやっていた時は個性が感じられず全く印象に残っていなかったが、『怪盗二十面相』ではベルモンドを食うくらい生き生きとして、スクリーンの中で弾けていた。いわゆるボン・キュッ・ボンではないが、ハスキーボイスで健康的なセクシーさ。
オープニングの音楽が『大盗賊』に似てるなあと思っていたら、監督も音楽も同じフィリップ・ド・ブロカとジョルジュ・ドルリューと知って納得。『リオの男』の音楽も出てきてサプライズ。『警部』に出ていた役者たちも次々登場。安宿屋のしょぼくれた親父だった人が今度は文部大臣役でこれもびっくり。
セントジェームスのボーダーシャツをぱっつんぱっつんで着ていたベルモンドは、ヘンテコで最高に似合ってなくておかしかった。モン・サン・ミッシェルを臨む草地で食事するラストも、フランス映画って感じでよかった。
本質と関係ないところで楽しめる部分もあったので、ハズレって一概に切り捨ててはいけない。
底抜けにおバカで明るいベルモンドが好きな人には楽しい映画。
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