見出し画像

マフィアもジョージもベンジャミンも好きなお菓子、カンノーリ/ カンノーロ

カンノーリは複数形、単数形だとカンノーロ。
リコッタチーズのクリームをたっぷり詰めたシチリア生まれのこのお菓子、大好きなのだが皮は揚げてあるので、甘さ控えめでもカロリーは高い。あぶないあぶない。

コロナ以降、録画して以前よりよく観るようになったNHK BS「世界ふれあい街歩き」、昨日はシチリアのカルタジローネの再放送だった。土地の人のおすすめNo.1ドルチェとして、カンノーリが紹介されていた。

私が初めて食べたのは高校生の時、友だちの家で。イタリア系のお父さんの大好物だそうで、「今買ってきたとこ。ラッキーだね」と、箱にぎっちり入ったのを一本くれた。「今、ここですぐ食べて!」と言われてかぶりつくと、パリパリの皮が割れてクリームがあちこちからはみ出るのを焦って食べた。
美味しくて驚いた。
名前を聞いたら「カノーリ」という。
映画「ゴッドファーザー」に登場するお菓子だというのは、後になって知った。

ゴッドファーザーが公開された時、私はまだ小学生で観ていない。中学か高校の時に、テレビで観たのだったか?ベッドの血まみれの馬の首に「マフィア、怖〜!」と衝撃を受けたのは覚えているが、カンノーリについては全く記憶がなかった。

その後ゴッドファーザーとカンノーリの関係を知り、映画もまた観てみた。

汽笛が聞こえる冬枯れの草地。自由の女神の後ろ姿が見えるから、NJのリバティー州立公園?
銃声が響き、立ちションを済ませたコルレオーネ・ファミリーの幹部クレメンザが車に戻り、仲間に一言。
「銃は置いていけ。カンノーリを取ってくれ」(昔の字幕では「カンノーリ」ではなく「お菓子」)
出がけに奥さんから買ってくるよう言われたカンノーリの平べったい箱を手に去っていく。
クレメンザ、奥さんや小さな子どもには優しいけれど、裏切り者には容赦なく、殺しに関しては冷徹。風貌もアル・カポネっぽくてマフィアそのものなんだけど、割れやすいカンノーリの箱をちゃんと水平に持つところがおかしい。

映画にはセリフと、紐でくくられたそっけない箱だけでカンノーリそのものは登場しない。

一方、ゴッドファーザーIIIでは、終盤カンノーリが重要アイテムとして出てくる。こちらはとても綺麗な箱入り。修道女特製。

シチリア料理店カフェのカンノーロ、
クリームたっぷりすごいボリューム。
ゴッドファーザーIIIのと似ている

クレメンザのオリジナルのセリフ
"Leave the the gun. Take the cannoli."はカンノーリのイラストと共にTシャツやトートバッグにもなっているようで、カンノーリファン層は厚いのだなあ。

そのカンノーリ、そんなにお金のかかる食材を使っているようには見えないのだが(すみません、素人考えです)、どこもやけにお高い。だいたい一つ500円以上で、1000円超えるお店もある。そうしょっちゅうは買えない。

ローマの市場では皮が大中小あって、一番小さいのは1€だった。お腹の空き具合やお財布と相談してサイズを選べるのはいいな。

大きさと、端っこのトッピングを選べる。
タイトル写真もこの店の物

都内で売っている中で一番好きなのは、深川にあるnicottoのカンノーロ。

店名通り、食べたらニコッと

気軽に買えるおやつ屋さんということで、お値段は良心的な300円!そしておいしい。
もちろん、クリームは注文後に親切で感じのいい店主が店の奥でたっぷり詰めてくれる。カンノーロ以外にも、生菓子や焼き菓子がたくさん。

許可を得て撮らせてもらったショーケース、中にはゴッドファーザーIIIの、ドン・アルトベッロがマッシモ劇場の桟敷席でカンノーロをつまんでいる写真。左には、おさるのジョージの写真が。

ジョージが黄色い帽子のおじさんと一緒に
ショーケースのカンノーリを眺めている

絵本『ひとまねこざる』の新シリーズ『おさるのジョージ』のアニメ版のエピソード「名探偵ジョージ」、ピスゲッティさんのお店の椅子を傷つけたと犯人扱いされた猫のニョッキの疑いを、ジョージが見事晴らしてカンノーリをごちそうになる、というお話。
この中ではみんな「ノ」にアクセントがある「カノーリ」と発音している。
かぶりつく時のサクッという音もおいしそうだった。
訪れた博物館の天体望遠鏡もカノーリに見えてしまうほど、食べそびれたカノーリのことで頭がいっぱいのジョージ。
歴史上の偉大な科学者たちから仮説検証のヒントを得て、椅子を傷付けたのがニョッキではないと証明するのだが、その科学者の一人ベンジャミン・フランクリンも、「カノーリは大好物」と(肖像画の中から)言っていた。

ジョージは食いしん坊。カンノーリ以外にもピザや


「おさるのジョージピザをつくる」
M.&H.Aレイ原作 福本友美子訳
岩波書店 2014

チョコレートにも目がない。

「おさるのジョージ
チョコレートこうじょうへいく」
M.&H.Aレイ原作 福本友美子訳
岩波書店 1999

特にバナナクリームのチョコレートが好き。
足まで使って(猿だからね)チョコレートをほおばる。

出典同上


ところで、nicottoではクリームを詰めたら賞味期限は30分!
買ったら急げや急げ、コーヒー持参で近くの清澄公園へ。皮の欠片が落ちても気にならないので、カンノーロはできれば屋外で食べたい。

カンノーリの形は北海道の六花亭店舗で売っているサクサクパイに似ているけれど、あちらは賞味期限は3時間。カンノーリの方がずっと短い。

クリームを詰めると皮が湿ってしまうから、マリトッツォやカヌレみたいにコンビニで商品化はできないだろうな、と思っていたら、

ひゃ〜、セブンイレブンに!
製造元は山﨑製パン
税込¥194

商品名は「焼きカンノーロ」。
「筒状に焼成したパイにさわやかな酸味のあるクリームを詰めました」と書いてある。
皮は揚げておらず、クリームもリコッタチーズは入っていない。何より、サクッとするどころか皮がクリームを吸ってへにゃへにゃ。

見た目はそれっぽいが…

う〜ん、いくら「焼き」って但し書きしても、これをカンノーロと呼ぶのはいかがなものか…。
端っこのちっちゃいビターチョコレートのチップは、惜しみなくまぶされていておいしかった。カンノーロと言わずに、別のお菓子として食べたらそういうものかと思うけれど。


別のお店のカンノーロ。ここのは皮が薄く繊細すぎて、持ち帰りにしたら割れてしまっていた。皮はサクサクパリパリ、オレンジピールも爽やか。

このお菓子と言えばあのお話!というのは日本なら何だろう?
ドラえもんのどら焼きと、サザエさんのご先祖磯野藻屑源の素太皆のおはぎかな。

「サザエさん」No.38
長谷川町子
姉妹社 1986

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?