アニメ録#6 体操ザムライ

年を重ねてなお磨かれる美しさ

 最初に映るのは引退会見。主人公・荒垣城太郎はプロの体操選手である。思いつめた顔で始まる引退会見。若いころはそのパワーと己のセンスで日本代表の座を手にしていた彼も老いには勝てず、大会に出ても成績は下がる一方だった。コーチからも諭されついには引退を…。
「引退しま・・・せぬ。」
 なんと引退会見で引退を撤回したのである。新聞にも大きく取り上げられ、城太郎の娘・玲がいる小学校でもネタになるほど。
 しかし、『頑張ってだめなら、もっと頑張らないといけない。』と思った城太郎は過度な練習の積み重ねで肩を痛め、長年の付き合いだった天草コーチに勘当されてしまう。
 その後、凄腕のオネエ整体師・ブリトニーにアドバイスをもらい、天草コーチの思いに気づいた城太郎は、老い始める自分の体と付き合いながら強くなる方法を模索し始める。

 去年のことだったか、おらおらでひとりいぐもという本が賞を受賞していた。老いも楽しいぜ。人生楽しんでこうぜ。みたいな内容だった気がする。それも悪くないとは思うが、城太郎の生き様はちょっと違う。

 スポーツ界では特にだが、若さが選手生命に直結しやすい。若いほうが技術も吸収しやすいし、パワーや瞬発力といった筋肉に関しては圧倒的に若いほうに分がある。
 しかし、経験というのはそれだけで貴重なものだ。どんなアドバイスも実際にやってみなければわからないし、聞いて分かった気になっていては3流だろう。逆に、何も知らなくても経験していればそれだけで大きなアドバンテージになるのだ。

 若くなくなっても、頑張っていい。

 城太郎は、肉体の限界に逆らいながら、そして誰よりも楽しみながら戦っていた。
 体操がしたくてたまらないとでも言いたげに。

 肉体のピークを迎えてなお成長しようする人へ向けた一作。

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