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東京ゲームショウ2022「Elebeater」個人出展記録

週末に作っていた個人制作ゲームを東京ゲームショウ2022(9月15〜18日)に出展してきました。まさかのインディー選考採択でした。自称週末クリエーターが作ったにすぎないゲームを、東京ゲームショウの1出展社として公式の場に出展できた奇跡。少し時間が経ち、冷静に思い返せるようになってきました。

大手だけでなく、インディーも、本気で作り込まれたゲームばかりの中で、7〜800行程度のHTMLとJavaScriptで作ったゲームを、恥ずかしさのあまり赤面せずに展示できるのかという不安の中、例えるなら布の服と棍棒を持ったレベル1から出発する旅人の気分での出展。とはいえ、おそらく歴代の東京ゲームショウの中で最小のコードで構成されたゲームであることだけは自信があったので、それを逆手にとって挑んだ4日間でした。そんな弱小個人インディーがどのように東京ゲームショウに出展してきたかを、思い出せる限り書き出しました。

出展ブース 4日目
画面内左: リピートし続けたプレイ動画
画面内右: 試遊画面
気づけばQRコード多すぎて、このあと整理しました

東京ゲームショウ 2022は、9月15日から18日まで幕張メッセで開催されました。3年ぶりのリアル会場での開催とのことで本当にラッキーなタイミングに採択していただきました。メールを読み返したところ、5月27日までの締切のところ5月19日に応募して、6月16日に採択の連絡をいただきました。結果のメールが来た時、最初は「選考通過」という表現ではなかったので、落選したと思ってメールを閉じました。「採択」という文字だったことに後から気づいて、メールを見直して選考を通過した事実を知ることになりました。あやうく出展を棒に振るところでした。

応募したのは、見た目が線だけのシンプルすぎるエレベーターゲーム。リアルエンジン全盛のこの時代に、No real enigne、No technologies といった丸裸のような見た目でして、開催されるまでは 幕張メッセの入り口あたりで、「何かの手違いでした」のようなオチで追い返されないか という思いが拭えませんでした。実際 応募したものの通過するとは思っていなかったので、応募時に勢いで書いたゲーム紹介説明を記録しておらず、「私は何を応募しましたでしょうか」的な恥ずかしい問い合わせをするところから準備がはじまりました。

開催前: 出展社紹介

インディーゲーム選考出展社のゲーム紹介文を提出する必要がありました。応募時から変えても良いとされていましたが、どこが採択されたポイントか分からなかったので 1文字も変えず応募時のままとしました。

紹介されたインディーゲーム選考出展社一覧

No.32 で紹介されましたが、この説明はそんな経緯もあって、応募時にえいやで書いた時のままでした。

この一覧でどんなゲームが選考を通過して、出展されるのか知ることになりました。どれも本気で作られていて、人生かけて作り込んでいるゲームばかりじゃないですか。そんな中に並んで自分のゲームを試遊してくれているイメージができませんでした。採択されて舞い上がっていた一方で、出展時の現実も見えてきて、私大丈夫か という漠然とした不安を感じるようになったのでした。

開催前: インディーゲーム紹介番組

そんな不安の中、最初に一般公開されたのは、8月24日の全インディー選考作品の紹介番組でした。
(動画のリンクは頭出し済)

最初はとても見ていられませんでしたが、IGN Japan 副編集長の今井さんのお言葉「ゲームデザイン剥き出し」という心優しいお助けコメントは、本当に嬉しいお言葉でした。MCの竜瀬さんの「無心になって遊んでしまいそう」という前向きなコメントもありがたく、不安も解消されていきました。ライブ配信は観れなかったのでコメントの様子は分からないのですが、観てくださっていた方の情報によるとチャットコメントでは、「画的チャレンジ」「シンプルでいい」「頭使いそう」「理解がついていかない」などのコメントを頂いていたらしいです。

その後もどのように出展するのか迷っていましたが、結局 採択していただいた事実を信じて、手作り感と中身で勝負することにしました。

初日: 設営

入場制限していたとはいえ仮に10万人が来場したとして、仮に0.1%の人に気づいて気に入ってもらえるとしても100人になるわけです。0.1%はまだ大きいので、せめて数人でも、本気で気に入ってもらえる方と出会えればいいなという気持ちで初日を迎えました。

都合により前日設営を出来なかったので、許可をいただいて開催日当日に設営しました。ブースに到着したのが8:50頃。レンタルのPCとディスプレイを箱から出すところから セットアップを行い、10:00開場までの短時間のセットアップ。間に合わないかもと思いつつ、ネット接続がなくても展示できるようには準備していたのが功を成して、開場までに余裕を持って設営完了できました。結局ネット接続方法は分からず、問い合わせる時間もなく オフラインままのPCで4日間展示し続けました。

初日と二日目のブース
黒い壁


初日 : ビジネスデー

色んなことを思い描いた準備期間でしたが、当日を迎えていざはじまってみると、そんな心配は不要でした。初日は関係者とプレスのみが入れるビジネスデー。画面をみて ピンとくる方にはすぐに伝わって、そしてそういう方ほど、熱いコメントをいただけたのでした。

最初の奇跡の胸熱はというと、深い質問をされて、写真をたくさん撮ってくださる方だと思っていたら、記者さんでした。思っていることの全てを綺麗にまとめてくださいました。この記事は家宝にします。

Yahoo news!

ファミ通

早速テレビ・雑誌で紹介されました的アピール作戦

記者さんが展示ゲームに関する記事を見事に表現して、書いてくださったので、出展内容についてはそちらをみていただくとして、私は出展側で見てきたことを書こうと思います。

Weekend Game Designer

ビジネスデー(初日〜2日目14:00までのプレスとビジネス関係者のみの時間) に渡す機会もあるかと思い、名刺は作っておきました。考え抜いた東京ゲームショウ用の肩書き "Weekend Game Designer" を入れておきました。日本語だと「週末ゲームデザイナー」です。

名刺を渡した時、この "Weekend Game Designer" が意外にも反応がよく、面白がっていただいて、おそらく会場内にこの肩書きを持っている方はいないと改めて思いましたので、2日目以降はここを よりアピールすることにしました。武器か魔法の種類が増えたような気分でした。

こういうのをゲームづくりという

大学の教授にも立ち寄っていただけました。ゲーム制作の授業をお持ちとのこと。とても気に入っていただけて、最後に「こういうのをゲームづくりというんだよね」と思ってもみなかった神様からいただくような一言をいただけました。このお言葉に救われて、その後の支えになりました。このお言葉も家宝にします。

その他、ゲーム会社や音楽製作関係の方にも立ち寄っていただき、貴重なコメントをいただきました。ビジネスデーでは深いコメントをいただきましたね。

2日目 (ビジネスデー〜14:00一般公開)

二日目になると少し慣れてきて、オランダから来日されていた Paladin Studio さんを訪問しました。ステイホームの時に、ちょうど発売されたGood Job!というゲームを子供とプレイして、親子で気に入って以来のファンです。Apple Arcade Galaga Wars+ や Cut the Rope Remastered というゲームも制作されています。

問い合わせからファンメールを出したことがあるくらいのファンです。お返事もいただきました。確か6月頃は出展社一覧には入っていなかったのですが、オランダブースが出展されることを知り、お話できたら嬉しいなと思ってました。ビジネスデーが終わる時間頃に訪問したところCEOさんとお会いできて、お話しできました。ステイホームで世界的にも気持ちが落ち込んでいる時、Good Job! をプレイすることでどれだけ救われたかを直接お伝えできて、次のリリース予定の話とか伺えました。「我々のスタジオは小さなスタジオで」と謙遜されていたのが印象的でした。自分にとっては世界最大のゲームスタジオですとお伝えできました。

二日目は14:00から一般公開でした。ちょうどPaladin Studioさんを訪ねて戻ってきた頃でした。たくさん人が入場されてきたけど、わざわざ開場前から来場された方々ですので、お目当ての大手ブースに並ぶのに一目散で向かわれていたのだと思います。インディーコーナー、特にその中でもうちのブースは、しばらく暇かなと思っていたところ、来るとも聞いてなかった知り合いが「こんにちは」と目の前に立っているという嬉しい訪問。開場前から並んで観に来てくれました。初日からずっと初めてお会いする人ばかりだったので、セーブポイントにたどり着けたかのような安堵の瞬間でした。会場近くの仕事を工面して仕事の合間に来てくれたとのこと。せっかくなので一緒に会場全体を回って楽しんで来ました。でも、お陰様で全体の様子が分かりました。自分のブースだけが閑古鳥が鳴いちゃってる可能性とか、色んな意味で恥ずかしいところをお見せすることになるかもしれないので、事前にお知らせしていたのは本当にごく限られた知り合いにとどめていましたのですが、これは嬉しい訪問でした。こんなこともあり、少しリラックスして対応できるようになってきた二日目でした。

3-4日目: 一般公開日

こなれてきた3日目くらいの様子
マウス、キーボード用消毒液も持ち込み
名刺も配置

他のブースでは、パンフレット、ステッカーなど準備万端でした。私の弱小インディー出展社はそのような気の利いた準備はありません。3日目くらいからパンフレット代わりに、名刺を積んで置いておきました。説明した方にはパンフ代わりにそこから手渡すようにしていましたが、ブースに置いている名刺を勝手に持っていってくれている方も時々見かけるようになってきました。それどころかすぐにプレイできるQRコード(これは初日から置いてた)からアクセスだけして、そのまま立ち去る方もいました。ブースで試遊はせずとも、興味は持っていただけたのかと思ってます。

この頃から、PCで試遊した後にスマホ版を紹介すると反応が良いことが分かってきて、自分のスマホで、スマホ版のみのルールを見せて補足説明して、「休憩中やご飯食べた後の気分転換時に遊んでみてください」と伝えるようになってきました。混雑時は、用意した厚紙QRコードを差し出して、スマホで遊んでもらって、説明していく形もできてきました。

出展の壁スペースには応募した説明を貼っていただけるのかなと都合よく思ってましたが、そんなことはなく準備していなければ黒い壁のまま。初日と2日目はそのままの出展となりました。2日過ぎると少し慣れてきて、対策を考えられるようになります。ひとり弱小インディー出展社に、ポスター印刷する時間も余力もなく、プリンターでできる範囲で、弱小インディーならではの手作り感を武器にできる方法を考えて思いついたのがこれでした。

2日目の夜に思いついて、3日目朝に作ったゲーム名

エレベーターの箱を1枚の紙に割り当てて、手書きの人を子供と描きました。手書きはこだわりました。綺麗に作り込まれた画面が並んでいる展示ブースに、手書きを入れることで目に止めてもらう作戦。あとエレベーターのロープを毛糸で表現すること自宅アイテムだけで完結できました。手作り感をもって、世界観を表現できた気がするので結構気に入っています。

これが良かったのか、3日目以降は、通路を通っていきながら「エレビーター(なにそれw)?」と読まれる声を何度か聞きましたし、それで試遊されていく方もいらしたと思います。また、試遊後に「棒人間目立ってますよっ!」と励ましてのコメントをもらったりしたので、いい感じの展示にはなったのではないかと思います。

3日目: 試遊の様子
3日目: 隣のゲーム順番待ちの時間潰しでの試遊
最終日4日目午後
悪天候にも関わらず一番混みました


実名の出展

応募・採択の連絡を受けた時、実名で出展する気はありませんでした。応募時に会社名を書く欄がありまして、会社での出展ではなかったので、個人名を入れておきました。会社名は、仮で書いていたつもりでしたが、出展社リストが公開された時、会社名が一覧で公開されてしまい、そこが出展社の名前として扱われるのか、、、と。多分こういうゲーム出展イベント系では常識なのでしょうね。変更してもらうことも考えましたが、実名を見ているうちに、昔パソコン雑誌(マイコンベーシックマガジンとか月刊マイコン) に投稿していた時に実名を使っていたことを思い出しました。それで、その頃を思い出して、悪くないかもと思いはじめ、最終的には実名のまま出展することを覚悟しました。

結果的にはこれもよかったと思います。
最終日に記者さんが再度訪ねてくださって話をした時、また思ってもみなかった潜在意識を引き出してくださいまして「自分はずっと自称クリエータでしたが、東京ゲームショウ に出展したからクリエーターになれたと言っても良いでしょうか」と呟いた自分がいました。それに対して「なれてますよ」と言っていただけて気づいたのですが、自分が好きなアーティスト、クリエーターは実名で出てるなと。近年だとエド・シーランや、よこみぞゆり さん のような才能には憧れます。もちろん足元の元の元にも及ばないですが、一時的でも開催期間中に 実名クリエーターです と言える状況は幸せだったかもしれません。でも、ひらがな名かカタカナ名 くらいにはしておいても良かったかもしれませんね。

お隣のブース 「Planet Cube: Edge」


話が変わりますが、周りは海外からの出展が並んでました。自分の列は、日本、コスタリカ、フランス、スペイン、韓国からの出展。お隣のブースはコスタリカから来日されていたチームSunna Entertainmentさんのゲーム「Planet Cube: Edge」を出展されていました。

Planet Cube: Edge


初日に到着した時に挨拶したらCTOさんが事前に「エレビーター」のことを知っていてくれていて「エレベーターのゲームだね。ポテンシャルを感じるゲームだよ(英語)」みたいなことを話していただきました。最終日に話した時に分かったのですが、ゲームショウのインディー選考の全出展紹介番組をみて知っていてくれたらしい。
社長さんとCTOさんとデザイン担当さんが来日されていました。この作品にかけて来日されているので意気込みが違います。デザイン担当さんは日本語で普通に話されていて、大学でもCGを教えられているとのこと。昔使っていた共通のパソコン話で盛り上がりました。そんな方々の作品「Planet Cube: Edge」は、ジャンプ&ショットアクションが好きそうな方が列になってプレイされていました。出展者は原則試遊禁止なのですが、お隣さんなので空いた時間に私もプレイさせてもらいました。可愛いキューブデザインの世界観を崩さずに、さまざまな仕掛けが仕込まれた、ほのぼのするけど、やりごたえのあるアクションゲームでした。チャンスがあったら是非プレイしてみてください。


出展してきたゲーム「Elebeater」

そして、申し遅れましたが、こちらが出展してきた
「Elebeater(エレビーター)」です。

出展中にいただいたコメントのいくつかは反映済です。

・人が乗っているエレビーターの色が薄い
・人が到着した時のアニメーションがあると楽しいのでは?
・ゲージが「ビルの資産価値」という設定はとてもウケましたw。分かるように画面内にかかれている方が良いと思います(これは対応中)

他にもたくさんのコメントをいただきました。
さすがの大規模イベントでした。
ありがとうございました。


そして、過去の関連 noteをまとめたマガジンです。


東京ゲームショウという名のリアル出展ゲーム

東京ゲームショウが終わって、時間も経ち、冷静に思い返すことができるようになってきました。会場で気に入っていただいた方との事後コミュニケーションの中でわかってきたことがあって、「ゲームショウ 出展」そのものが、今までプレイしたどのゲームよりも楽しい最大のゲームだったのではないかと思えてきました。

小さなゲーム(布の服と棍棒相当の装備)で、一人でゲームショウに出展し、周辺ブースに少しづつ知り合いができていき(仲間が増える)、ビジネスデーでは 胸熱な貴重なコメントをいただき、もしかしてこの装備は 光の布の服と光の棍棒かもと 思わせていただくことで経験値を得て(レベルアップ音が聞こえました)、連日の足の疲れを就寝時に回復をさせ(毎朝、ドラクエ宿屋の音が聴こえてくる気がしました)、そして沢山の一般公開日でも嬉しいコメントをいただきました。

作ったゲームを持ち込んで、東京ゲームショウでリアルに出展ゲームを遊んできた、そんな気持ちです。週末ゲームデザイナーという気楽な立ち位置だからこその向き合い方だったのかもしれませんが。

とここまで書いて、見てきたこと・感じてきたことの半分くらいの量です。そんな密度でしたから、4日間が終わった後は、力尽きて「もう出展は無理」と思いましたが、いまは もし また更なる奇跡でチャンスをいただけるなら、来年以降もまた「東京ゲームショウという名のリアル出展ゲーム」で遊んでみたいなと思っている自分がいます。

セーブデータが残っていれば、レベル5くらいから再開できるかもしれません。

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