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【解説】「Rakuten NFT」が批判されている理由

楽天グループ株式会社は25日、NFT(非代替性トークン)マーケットプレイスおよび販売プラットフォーム「Rakuten NFT」の提供を開始したことを発表した。
この「Rakuten NFT」に対して、以前からNFTやクリプト分野に触れている人を中心に批判のコメントが多く見られる。

今回の記事では、
・「Rakuten NFT」が批判されている理由
・「Rakuten NFT」の可能性
について解説していく。

1.NFTとは

まず「Rakuten NFT」の解説に入る前に、このNFTとはそもそも何かについて解説していきたい。

結論としては、デジタルデータの所有権を証明する証明書とイメージしてもらいたい。
ここで注意してもらいたいのは、デジタルデータをコピーできなくする技術ではなく、あくまでオリジナルを証明する技術である点だ。
また著作権の保有までできる点ではないため、商用利用を許可されるものではないことも留意しておきたい。

NFTの代表例として、ニュースではよくデジタルアートなどが取り上げられているが、デジタルデータで作られたファッションアイテムやツイート等も高額で取引された実績は多い。

これらの多くはNFTマーケットプレイス(NFTの売買ができる場所)である、「OpenSea」で取引されているため、どのようなNFTが取引されているのかは一度自分の目で確認してみることをおすすめする。

※クリプト業界(暗号資産)においては、偽サイトが検索上位に表示サれていることが多くある。よく知らない方は、上記のリンクから飛んでもらう方が安心だ。

また、ウイスキー等の蒸留酒の樽をNFTにしての管理、取引を可能にするサービスもあるなどNFTの活用可能性は広い。

その他、NFTに特化して説明をすると記事が一個できあがってしまうため、割愛させていただく。

※詳しく知りたい方は、かなりわかりやすく解説されているイケハヤさんというNFTでビジネスをされている側でもありつつ、投資もされている方がいらっしゃるので以下を参考にしていただければ理解が捗ると思います。

2.「Rakuten NFT」とは

Rakuten NFT」とは、「NFT市場を民主化する」ことを目的として開発されたサービスだ。
サービス内容としては、大きく以下の2つに分けられる。

Rakuten NFT」のサービス内容
①販売所
IP(知的財産権)を所有するアーティストによるNFTの発行/出品/販売までがワンストップで可能。

②取引所
Rakuten NFT」内で購入したNFTを、マーケットプレイスに出品し、個人間で売買することが可能。

3.従来のNFTマーケットプレイスとの違い

バックエンドのブロックチェーン技術などを比較しだすと複雑になるため、今回はフロントエンドの部分にしぼり比較すると、基本的な特徴としては以下のとおり。

・基本的に自由にNFT化して出品できる場ではない※現状有名IPのみ
・マーケットプレイスへ出品可能なモノは、楽天NFTで発行されたNFTのみ
・楽天NFTは、楽天が管理する自社ブロックチェーンのみ対応
・決済は、楽天市場などのECサイトで決済する方法と基本同じ
・基本的に国外からはアクセスすることはできない

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審査が必要と記載はしたが、基本的に本文でも記載したように自由に出品できるような仕様には現状なっていない。

これらが現状、批判されている理由の大枠だ。
この事業における根本的な課題を次に述べていく。

4.「Rakuten NFT」における課題

結論から言うと、

楽天のプライベートブロックチェーンで運用されている

ことが課題の真因である。

これは法人、特にこの規模の国内上場企業となれば仕方がないといえば仕方がないのだが、簡単にいうと何か問題があったときにプライベートブロックチェーンでないと対処のしようがないのだ。

理由を説明するのにあたって、以下にブロックチェーンの種類を並べた。

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先程述べたとおり、「OpenSea」は世界中で利用されているNFTマーケットプレイスの代表例である。

運営自体は、アメリカ・ニューヨークに本社を構え、2017年に設立された「OpenSea社」であるが、積極的に様々なブロックチェーンへの対応を進めており、イーサリアムの他にもMatic、Klaytn(クレイトン)、Tezos(テゾス)といった多種多様なパブリックブロックチェーン上のNFTに対応している点から、愛用されている。

NFTや仮想通貨といったクリプト領域の需要が高まったのは、現GAFAに代表される一企業が力を持ちすぎることや不正な政治利用をされるといったWEB2.0と言われる今のインターネットへのアンチテーゼ的な背景もある。
こうした背景から、WEB3.0という分野にも注目が集まりつつある。

今のWEB2.0ではどれだけ良いサービスを作ろうと、そういったプラットフォーム企業が作るアルゴリズム一つで、トップに表示されるものは自由に入れ替えることができる。

そうした閉ざされた世界ではなく、インターネットの本来の「自由で開かれた世界」を求めた結果なのだ。

今回の楽天プライベートブロックチェーンで発行されたNFTのみでは、楽天の意思で自由に操作ができるし、国内での取引かつ、一部の作品しか取り扱われない点が批判された大きな理由だ。

とはいえ、「OpenSea」内でもユーザーによる価格操作や先日も総額2億円のNFT254個が盗まれるなど問題が止まないのが現状だ。


これらの問題も匿名でやりとりができてしまうパブリックブロックチェーンでは、どこの国の誰が行ったのか特定することができないため、法整備も間に合っていない。

こうした問題は、国の境目を超えた問題であるためなかなかすぐには決まらない可能性が高いが、今後整備がされ次第楽天のNFTも見直しが入る可能性も考えられる。

5.「Rakuten NFT」の可能性

課題との表裏一体であるが可能性については、既存のIPブランドを毀損せずにNFT化しやすいという点は日本としては大きい。

新しいものへの警戒が強いあまりに、あらゆる分野でトレンドが過ぎ去った頃にようやく開始するのが日本の風土としては多い。
リターン以上に、リスクばかりに目がいくのだ。

日本のIPは、未だに唯一世界で戦える武器である。想像してほしいが、世界的に有名なキャラクターといってパッと思いつくのはなんだろう。
ほとんどが日本のIPのはずだ。あとは、アメリカのディズニーやマーベルといったところだろう。
それもそのはず、日本のキャラクターIPは圧倒的に市場規模が大きい。

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引用:『オタク経済圏創世記 GAFAの次は2.5次元コミュニティが世界の主役になる件』中山 淳雄 (著)

これだけのIPをNFT化させ、今話題のメタバース等にデビューさせたとき、日本は圧倒的な地位を確立するだろう。

実際に、今後アイドル『アンダービースティー』のトレーディングカードNFTや、『TIGER & BUNNY 2』のキャラクターを使用したNFT、株式会社BEAMSとのコラボ作品、『コートギアス 反逆のルルーシュ』の監督の谷口悟朗氏が手掛けるオリジナルアニメ企画『エスタブライフ』に関する作品を販売することを予定しているなどIPのNFT化に力を注いでいることは間違いない。


再び日本が世界で戦えるよう、この楽天NFTが今後どのように動くか注目していきたい。

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