見出し画像

知っておいて損はない映画の基本2~スタイル~

映画は様々な基準でグループ分けが可能である。
グループ分けをすることで、より作品の目指さんとするところを理解できる場合があるし、監督の特徴を掴むこともできる。
映画の分類として真っ先に思いつくジャンルについては次回書くので、今回はもっと根源的なイミを基に分類していこう。

①記録性(リアリズム)
実写映画は常に現実世界をカメラでとらえるメディアだが、記録性を重視する映画の場合、被写体に何を付け加えるか、よりも被写体から何を引きだすかが重視される。監督が積極的に演出を加えるよりも、現場で偶発的に、あるいは即興的に生じる何かを捉える傾向にある。可能な限り映画的なコントロールを避けるため、長回し(編集によるつなぎ目を少なくする)したり、俳優ではなく素人を起用したりする。
上手く映画が完成すれば、嘘であるはずの映画世界に現実の感触が現れるが、失敗すればただカメラを回しただけの素人映像に見えてしまうから怖い。

記録性を重視していると思われる監督は、日本だと是枝裕和、中国だとジャ・ジャンクー、欧州だとダルデンヌ兄弟などが代表的。


②表現性(フォルマリズム)
記録性とは真逆で、映画が現実をどのように装飾するかに関心がある。映画ならではの表現、ありえない舞台装置、過度な演技や時代性不明な衣装、絵画的な画作り、スロー表現、CGなどを積極的に活用する。目まぐるしいまでの映像が展開される場合もあり、あまりのインパクトに物語が打ち消されてしまうことがある。
上手く映画が完成すれば、完全に監督が創り上げた世界に観客を同化させられるが、失敗すればただの自己満足に見えてしまうから残酷だ。

表現性を重視していると思われる監督は、日本だと寺山修司、アメリカだとデヴィッド・リンチなどが代表的。


③物語性

ストーリーを語ることに最も重きを置いている。とにかく何が起こっているかを伝えることが重要だから、被写体やカメラワーク、編集もすべてそのために施される。反対にストーリー以外の観客の目を引く②のような表現は嫌う傾向にあり、とにかく観客に物語を理解させるよう誘導する。①②が観客の能動的な読み取りを必要としているのに対して、物語性を重視する映画は往々にしてかなり親切だから観客が受動的になりがちである。普段劇場で流れている大衆映画はたいていがこれに沿って作られている。

物語性を重視していると思われる監督は、日本だと黒澤明、イギリスだとアルフレッド・ヒッチコックなどが代表的。


以上の三つが根源的な映画の分類ではあるが、もちろんこの映画は①で、あの映画は②と厳格な分類ができるわけではない。
むしろ、①②③のバランスによって映画や監督の特徴が見えてくる。
あなたの好みの映画や監督は①②③のどの傾向がもっとも強くて、どんなバランスになっているのかを考えてみると、自分がどのような映画に惹かれるのかより鮮明に掴めるかもしれない。

そんな金がありゃ映画館に映画を観に行って!