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『ヒップホップ・モンゴリア』の著者・島村一平さんがモンゴリアンラップの魅力を語る!

J-WAVEで放送中の番組『SONAR MUSIC』(ナビゲーター:あっこゴリラ)。番組では、毎回ゲストを迎え、様々なテーマを掘り下げていく。

11月17日(水)のオンエアでは、「モンゴルのめくるめくヒップホップワールド」をテーマにお届け。ゲストには、モンゴルのヒップホップ事情を書いた『ヒップホップ・モンゴリア』の著者で、国立民族学博物館准教授、文化人類学者の島村一平さんが登場。

■モンゴルのヒップホップ事情

モンゴルでは今、ヒップホップが盛り上がっているという。めくるめくモンゴリアンラップの世界とは…?

あっこゴリラ:まずモンゴルって、どんな国なんですか?
島村:モンゴルって、面積は日本の4倍くらいあるのに、人口は330万人くらいしかいなんですよ。
あっこゴリラ:日本より全然少ないだ。
島村:その人口の内、約半数の160万人くらいが、首都のウランバートルに集中しています。遊牧民というイメージが強いかと思うんですけど、実は遊牧民は人口の10%以下になっています。地下資源が豊富なので、今は工業の国と言った方が正しいかもしれません。
あっこゴリラ:なるほど~。そんなモンゴルで今、ヒップホップが盛り上がっているとか?
島村:人口330万人の国なのに、ヒップホップのYouTubeの再生回数が100万回、200万回がザラで、なかには1000万回超もあるくらい人気があります。
あっこゴリラ:ええ~! そんなに盛り上がってるんですね! もう日本の比じゃない。
島村:ヒップホップが日常で聴かれている感じですね。私は、もう遊牧民の国じゃなくて、ヒップホップの国なんじゃないかと思っています(笑)。
あっこゴリラ:あははは。ここでまず一曲お聴きしたいんですけど、何にしましょうか?
島村:このコロナ禍で登場した、まだ二十歳前後の女性ラッパーNENEの『Sugar Mama』を紹介したいと思います。

あっこゴリラ:モンゴルにヒップホップが入ってきたのは、いつ頃からなんですか? 
島村:90年代後半からです。92年の社会主義崩壊とともに、欧米の文化が入ってくるようになったのがきっかけで、その中にヒップホップもあり、モンゴル人もヒップホップの存在を知ることになります。
あっこゴリラ:なるほど~。
島村:そんなモンゴルで、最初にヒップホップのラップスタイルを確立したのは、ダイン・バ・エンヘとLuminoというグループです。
あっこゴリラ:そもそもモンゴルのラッパーたちは、どんな人たちなんですか?
島村:モンゴルは貧富の格差が大きく、ゲル地区派と都会派という二つのスクールがあります。都会派のラッパーの特徴は、恋愛系の曲が多く、逆にゲル地区出身のラッパーは、自分たちの現状やポリティカルなことをラップすることが多いです。
あっこゴリラ:へえ~。
島村:ちなみに、先ほど紹介したダイン・バ・エンヘはゲル地区派で、ゲル地区というのは、治安が悪く、“モンゴルのゲットー”なんて言われたりしています。そこでラップが生まれてくるんですね。
あっこゴリラ:それは貧富の格差が生まれているところで、そりゃヒップホップが生まれるに決まってるだろうって環境だと思いますね。
島村:そうですね。ゲル地区からしたら、都会の高層ビルを見ながら“クソー”って思ってるわけですからね。

■モンゴル語は、ラップ向きの言語!?
ここからは、モンゴルのラッパーたちの韻踏みの技術について教えてもらった。

あっこゴリラ:モンゴルのラッパーたちの韻踏みの技術は、どうなんですか? 
島村:そもそもモンゴル語って、すごくラップ向きの言語だと思うんです。子音を3、4つ重ねることができるんですよ。
あっこゴリラ:おお~! それは踏みやすい。
島村:彼らは遊牧民だったので文章で残すのではなく、もともと口承文芸の韻踏みの伝統があったんです。モンゴルには昔から、文化として「掛け合いの歌」が存在しますが、全部韻を踏んでるんです。
あっこゴリラ:ええ~!
島村:暗記術みたいなものだったと思うんですけど、遊牧民は子供の頃から韻を踏みながら相手を言い負かす技術を学んでいるんですね。
あっこゴリラ:じゃあ、もともと言語の成り立ちがヒップホップ向きなんですね。
島村:そうですね。ただアメリカのラップは、どちらかと言うとフットライムが中心だったと思うんですけど、最初はそれに気づかなくて合わせていくのが大変だったみたいですが、気づいたら頭もお尻も踏んでいくとか、単語ごとに踏んでいくとか、いろんな技術を生み出してきました。
あっこゴリラ:話を聞くだけで、モンゴルのラッパーたちはライミングのスキルが高くて、巧みなんだろうな~って感じますね。
島村:大好きですね。韻踏み命みたいな(笑)。

■意外!? モンゴルは女性の社会的地位が高い
ここからは、モンゴルの女性ラッパーについて教えてもらった。

あっこゴリラ:モンゴルには、女性ラッパーも多くいるんですか? 
島村:女性ラッパー多いですね。意外かもしれないですが、モンゴルはもともと女性が強い国なんです。医師・弁護士・教師の6、7割が女性で、女性の社会的地位が高く、日本より女性の社会進出が進んでるんです。
あっこゴリラ:ええ~!! すごい。
島村:その一方で家庭内暴力も多く、高い離婚率につながっているなどの問題もあったりします。そういう中で、女性ラッパーたちはたくましく歌を歌っています。
あっこゴリラ:ちなみに、モンゴルの女性初のラッパーは?
島村:ジェニーという、1987年生まれのラッパーが女性初です。
あっこゴリラ:では、ここで女性ラッパーの曲を聴いてみたいのですが、どんなアーティストですか? 
島村:「Mrs M」という覆面・フェミニストラッパーです。ドイツ育ちの非常に洗練されたラッパーで、常にサングラスをかけ、スカートは決してはかないというスタイルが特徴です。

あっこゴリラ:もう一人、女性ラッパーを紹介していただけるということですが、どんなアーティストですか?
島村:モンゴルの冬は寒いので、ストリートでのフリースタイルバトルが難しく、ネット上で行われるんですが、そこで優勝したラッパー「NMN」です。紹介する楽曲『tsahilbaa』では、肉食系女性の一途な恋を歌っています。楽器の馬頭琴とのコラボにも注目です。

あっこゴリラ:最後にもう一人、モンゴルのラッパーを紹介いただけるということですが、どんなアーティストですか?
島村:この人は男性なんですが、スラム出身のラッパー「Thunder Z」です。シングルマザーの元、ゲル地区で育った、すごくフェミニストなラッパーです。ちなみに彼は、モンゴルで最難関の大学でITを専攻する現役の大学生でもあります。紹介する楽曲『Er hun shig er hun bai』は、「男らしくあれ」というタイトルですが、これは反DVの曲になっています。

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【番組情報】
J-WAVE 81.3FM『SONAR MUSIC』
放送日時:月・火・水・木曜 22時-24時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/sonarmusic/

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