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誕生から現在進行形まで。テクノミュージックの歴史と文化をテクノDJ・Q'HEYが解説!

J-WAVEで放送中の番組『SONAR MUSIC』(ナビゲーター:オカモトショウ)。番組では、毎回ゲストを迎え、様々なテーマを掘り下げていく。

■テクノの発祥は、1980年代デトロイト
番組では、テクノミュージックの誕生から現在進行形までテクノミュージックの歴史と文化を特集。

オカモトショウがナビゲートした11月10日(水)のオンエアでは、ゲストに 今年で24年目となる東京で最長寿のテクノパーティー「REBOOT」をオーガナイズしている、テクノDJのQ'HEYが登場。フジロックフェスティバルやULTRA JAPANに出演するなど、日本のテクノシーンをリードする存在である。

ショウ:Q'HEYさんは、もともとはロックのDJだったそうですね。
Q'HEY:1989年からDJ活動を開始しましたが、当初は学生時代から好きだったNew WaveやIndie DanceなどロックをプレイするDJでした。でもハウスとかテクノとかに触れるようになってから、リズムマシンが打ち鳴らす太いキックやシンセのノイズにギターを超えたダイナミズムを感じるようになって。それから徐々にダンスミュージックをプレイするようになり、1993年以降はテクノDJとして現在に至ります。
ショウ:僕、もともとテクノを聴いてきてなかったんですけど、ロック、パンクの感動に近いような、アナーキズムにも近いような感じを受けていて。機械が出している音なんだけど、そこに宿る威力というか、そういう骨太のものを感じるようになってきてから一気にハマりましたね。そもそもテクノミュージックの誕生は、いつ頃になるんですか? 
Q'HEY:テクノは、1980年代デトロイト発祥とされています。同じ高校に通っていたホワン・アトキンス、デリック・メイ、ケビン・サンダーソンの3人が始めたと言われています。
ショウ:この3人って、同じ高校に通ってたんですね。知らなかった! 
Q'HEY:そうなんです。先輩後輩みたいな感じで。そんなデトロイトで始まったテクノがイギリスやベルギーなどで評価され、ヨーロッパで作品が広く紹介されるようになります。テクノに先行してシーンを形成していたハウスミュージックとともに、「Second Summer of Love」として一大ムーブメントとなります。先ほど紹介したデリック・メイの『Strings of Life』が、アンセムとして世界中のクラブでプレイされていました。
ショウ:ここで、Q'HEYさんの選曲で1曲お届けしたいと思いますが、どんな曲にしますか?
Q'HEY:Joey Beltramの『Energy Flash』です。アシッドハウスで多用されたTB-303を歪ませたフレーズが衝撃的で、後のアシッド・テクノの礎を築いた、今もなおプレイされ続けている曲の1つです。

ショウ:1990年当時のテクノサウンドの流行とは? 
Q'HEY:一口にテクノと言っても様々なスタイルがあるんですが、僕がどっぷり浸かっていたテクノのシーンで言えば、ハードでアグレッシブなサウンドですね。ロックで言えば、ハードロックって感じですかね。
ショウ:なるほど~。ちょっと歪んでたり、ヘビーだったり、早いテンポだったり。
Q'HEY:そうそう。


ショウ:続いてのQ'HEYさん選曲の1曲は?
Q'HEY:Circuit Breakerの『Overkill』です。黎明期から活躍していて、常に先進性のある音楽性で時代をリードしつつ、イベントのブランディング等様々な分野で成功を収めるRichie Hawtinの若かりし頃の血気あふれる作品です。

ショウ:カッコいい~! 踊っちゃいますね! さっきよりもTB-303の音数が増えましたよね。
Q'HEY:そうですね。この曲では、複数台のTB-303を同時使用しています。
ショウ:ちなみにこのTB-303って、どんな楽器なんですか? 
Q'HEY:一般的に知られているのは、日本の楽器メーカー「ローランド」が発売して、見事に失敗作となったシンセサイザーですね。
ショウ:あはははは! 失敗作だったんだ。
Q'HEY:本来求めていたリアルな音からかけ離れていたので、全然売れなかったんですよね。でも、それが海外でメーカーが狙ってたのと違う形で使われてるようになって、アシッドと呼ばれる、非常にトリッピーなフレーズを量産するマシーンにとしてミュージックシーンに革命を起こしました。
ショウ:その後は?
Q'HEY:Richie Hawtin を継ぐような形で登場したのが、HARDFLOORです。TB-303に激しいディストーションをかけ、さらにアグレッシブになったアシッド・サウンドでジャーマン・トランスというシーンの立役者になります。

■日本でのテクノブームのきっかけは、「Rainbow 2000」
その後、テクノは日本ではどのような受け入れ方をしていくのだろうか。

Q'HEY:日本でテクノがブームとして火がついたのは、1996年に初開催された野外オールナイトフェス「Rainbow 2000」。このフェスでは、大ヒット曲『Born Slippy』をひっさげたUnderworldやレジェンド・CJ Bolandを招聘し、国内の有名テクノDJが全員集合って感じでしたね。NHKでも特番が組まれ、社会現状になりました。
ショウ:へえ~!
Q'HEY:「Rainbow 2000」終了後も、2000年から2012年まで開催されていたオールナイト野外フェス「Metamorphose」がシーンを牽引します。
ショウ:世界的には、テクノシーンはどうなっていったんですか? 
Q'HEY:世界的にはUKのディストリビューターであるPrime Dsitributionが、1995年に発足したレーベル「Primate」とその周辺レーベルが一時代を築きます。Primeの他にも、「Primevil」や「Primate Endangered Species」といったサブレーベルをいくつも抱え、DJがこれらのレーベルから出ている曲をかければ、イベントは必ず盛り上がるという図式が成り立つようになりました。
ショウ:レーベルごとのカラーがあるから、レーベル聴きするのも楽しいですよね。続いて、Q'HEYさんが選曲した1曲は? 
Q'HEY:この「Primate」というレーベルからの作品で、どのDJもこぞってかけたがって、オーディエンスも必ず踊り狂った曲、Ben Simsの『Manipulated』です。この曲を手掛けたAdam Beyerは、自身で発足したレーベル「Drumcode」が大ヒット。栄枯盛衰の激しいテクノレーベルの中においてサヴァイブし続け、現在独壇場とも言える地位を確立します。

■若い世代の中で往年のテクノが再評価
ここからは、現在進行形のテクノシーンについて教えてもらった。

ショウ:2000年以降のテクノシーンは、どうなっていくんですか?
Q'HEY:ミニマルやクリック・テクノといった音数が少なく、激しく踊るというよりは音響を楽しむタイプのテクノが流行し始めます。それにより、多くのレーベルが活動を休止、または消滅していきます。
ショウ:BPMも変化ありました?
Q'HEY:はい。BPMも遅くなり、BPMが早く激しいビートのテクノは完全に葬り去られた時期ですね。かつては140BPMが普通だったのに、この頃は125あたりに落ち着いていたかなと思います。
ショウ:その後、どうなるんですか?
Q'HEY:ここでもまたその揺り戻しが来るんですよね。世界的にはEDMが大流行して、Tomorrowland、Ultra Music Festival、Electric Daisy Carnivalなど巨大フェスによってマーケットを拡大した後、若い世代の中で往年のテクノが再評価されていきます。
ショウ:なるほど~。おもしろい!
Q'HEY:特にNina Kraviz、Charlotte de WitteやAmelie Lensといった女性DJが台頭してきます。彼女たちがプレイするハードなテクノがオーディエンスに支持されて、またコマーシャリズムを獲得していきます。
ショウ:確かに今、女性DJ、力ありますよね。
Q'HEY:アンダーグラウンドのシーンでは、ベルリンのクラブ「Berghain」を取り巻くシーンが強力で、こちらはミニマルやクリック・テクノを発展させたシーンなんですよね。世界的には、先ほどのAdam Beyerのレーベル「Drumcode」が、テクノシーンの独壇場にあると言えます。そのDrumcode周辺、Berghain周辺、その他というのが現在のテクノ勢力図ですね。


ショウ:今のテクノシーンのサウンド面の流行は?
Q'HEY:アシッドでヘビーなサウンドが主流ですね。90年代のアツいサウンドが戻ってきたかのような感じはしています。
ショウ:現在進行形の日本のテクノシーンからは、新しいアーティストも登場していますか?
Q'HEY:国内の若手の中でもレイヴィーなでハードなテクノをプレイするDJが出てきています。その中でも20代のアーティスト「Seimei」。彼は、今時っぽい音のリリースが多いレーベルを運営しているんですけど、そんな彼が全編に亘って140BPMのハードなテクノトラックを詰め込んだアルバムを10月にリリースしています。

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【番組情報】
J-WAVE 81.3FM『SONAR MUSIC』
放送日時:月・火・水・木曜 22時-24時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/sonarmusic/

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