お中元

 鬱蒼とした梅雨の時期。1週間のうち8日は雨が降っているのではないかと思う。そんな中、インターホンがピンポン。あれ、何か頼んだっけな。

 受け取る。おお、いい大きさだ。なんかちょっと重いし、これは期待できるぞ。宛名と送り主の名前を確認すると、友達からのラインを他所にカッターを持ってくる。自然と家族が集まってくる。今日はみんな休み、日曜日だ。

中身を確認する。慌てて冷蔵庫に敷き詰める。

全員が顔を見合わせる、今夜の夕食が楽しみだと。夕食の時間まであと2時間、あるものは本を読み、あるものはランニングへ。あるものは、風呂を済ませ、思い思いの時間を過ごす。夕飯は何かと予想しながら。

今夜は、鍋か?すき焼きか?それとも刺身にするのか?いやぁそれは贅沢だろう。でもたまにはいいだろう。それぞれの思惑がダイニングを駆け巡る。

トントン、トントン。心地よい包丁とまな板がぶつかる音が、鳴り響く。心なしかいつもよりリズミカルだ。

このタイミングで、弟と父親はお使いから帰ってくる。どうやら父親は、ちょっと奮発して高めのアイスを買ってきた様だ。

ああ、なんだ結局なべか。他の選択肢がなくなったこと悲しみが一瞬脳裏をかすめる。

いつもよりスムーズに夕飯の用意が進む。いただきますが待ち遠しい。自然とテレビが消される。ポン酢かごまだれか、それとも最初は何もつけずにいくか。作戦会議をする。何しろ数が限られる。


待ちに待ったこのタイミングが訪れる。

『いただきます。』



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