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かわら版No.27 人口問題を、超えて

いつもお読みいただきありがとうございます。一昨日の12月22日に国立社会保障・人口問題研究所から最新の『日本の地域別将来推計人口(令和5(2023)年推計)』がプレスリリースされました。報道でも、各地域間の格差に対応した人口政策がより一層求められるとされています。

かわら版No.22でも触れましたが、
現在米沢市当局が策定を進める米沢市人口ビジョン(案)では、2065年の米沢市の人口見通しは、米沢市の公式見解では約38,000人です。内訳は、年少人口(0~14歳)約3,400人、生産年齢人口(15~64歳)約17,300人、老年人口(65歳以上)約17,500人です。令和5年12月現在約78,000人ですから、これから約40年でおそよ半減します。

米沢市議会の12月定例会の一般質問でも、中川市政2期8年における人口動態とその取組について質問させていただきましたが、市長退任会見においても、最大の市政課題は「人口減少」との内容のとおり、この8年間においても人口減少に歯止めはかからず、人口減少は加速しました。人口減少は本当に難しい課題です。

これから正式に示される米沢市人口ビジョンの内容をみても、米沢市当局は分析は概ねしっかりやっています。しかし、問題は、分析から一歩踏み込んだ尖った具体的な政策とその実現に向けたコミットメントがない、あるいは弱いと思います。これからの時代の政策は、特にローカルでは、細かく、PR(広報戦略)を含めて、圧倒的に尖っていないと結果に結びつきません。

統計的未来には、米沢市に、住み続ける理由は示されていないのです。「地元に帰ってこい」と声高に言ってみても、統計的未来はとても冷たい未来が待っています。

この点、米沢市議会を含めた米沢市当局の行動選択の内的モデル、政策決定のモデルは、例えば政策科学の入門書にあるようなゴミ箱モデルに似ています。つまり「組織の行動選択は、合理性モデルに代表されるようなきっちりと整理されたプロセスの中で行われるのではなく、いろいろな問題とその解決策とが乱雑にごちゃまぜになって入れられたゴミ箱(garbage can)の中での選択のようなものである(p190-191,宮川公男著「政策科学入門第2版」東洋経済新報社 2002)」ということです。少し厳しい意見ですが、現在の米沢市行政の政策決定からは明白かつ明晰な学術的意図が汲み取れないのです。そこで、この反省にいったん立ち、そのうえで自覚的に政策プロセス、構成、内容を、これまでとは全く異なる方法に変えていかないと、同じ轍を踏み続けることになります。

人口政策など、最も重要な政策は、その政策決定モデルから見直す必要があります。

では、どのような政策決定モデルを採用すればいいのでしょうか?人口の変動の要因は、出生数と死亡数の差による「自然増減」、流出数と流入数の差による「社会増減」の2つですが、この他に近年では、人口減少が前提となる現代社会では、「定住人口でも交流人口・観光客でもなく、そして、企業でもボランティアでもない、新たな地域外の主体の概念とする、関係人口(特定の地域に継続的に関心を持ち、関わるよそ者(p77,田中輝美著「関係人口の社会学」大阪大学出版会 2021)」を含めた、人口の網の目・ネットワークを想定する必要があります。

そして、このような人口の網の目・ネットワークを有機的に機能させる技術的・社会的なプラットフォームとは何であって、どのような状況であるのか、これを迅速に探求し、政策決定モデルのプロセスの中に組入れていく必要があります。次回以降では、エツィオ・マンズィーニ著「ここちよい“近さ”がまちを変える ケアとデジタルによる近接のデザイン(Livable Proximity: Ideas for the City That Cares」Xデザイン出版 2023」からその可能性を探りたいと思います。

本日も最後までお読みいただきありがとうございます。そして、メリークリスマス!!本日が世界の平和を願い、誰にでも楽しいクリスマスが来ることを願う日であってほしいと思います。

かわら版No.27


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