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割賦販売法を分かりやすく解説!消費者に与える影響や事業者の対応とは

ネットショッピングの流行により、「割賦販売法」が再注目されています。
割賦販売法は、クレジットカードなどを利用して分割払いする際に適用される身近な法律ですが、内容を詳しく知らないという方も多いのではないでしょうか。
今回は、割賦販売法が制定された背景や、2018年に改正された理由やポイントなどを解説します。

この記事は20年以上金融サービスを提供してきたソモ㈱が執筆しています。
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割賦販売法とは?

割賦販売法とは、取引形態が複雑な割賦販売のトラブルを防ぐために制定された法律です。
ここでは、割賦販売法が制定された背景や対象となる取引を解説します。

割賦販売法が制定された背景

割賦販売法は1961年に制定され、時代に合わせて改正されてきました。

割賦販売とは、商品を分割払いで販売することです。
初回の支払いが少なく、消費者が抵抗感を感じずに購入でき、支払総額を把握しにくいため、トラブルが起きやすい取引形態とされています。
消費者は、商品を購入する店舗とクレジット会社で、異なる契約を結ぶため、複雑な取引形態だとも指摘されています。

割賦販売によるトラブルから、消費者を守るために制定されたのが割賦販売法です。
消費者の利益を守り、取引を円滑化することは、国民経済の発展に寄与することに繋がります。

割賦販売法の対象となる取引

割賦販売法の対象となる代表的な取引は、クレジットカードの分割払いです。
商品を購入する際に、クレジットカードの分割払い(リボルビング払いを含む)を利用して、支払期間が2か月を超える場合に割賦販売法が適用されます。
翌月1回払いの場合は、分割払いではないため、割賦販売法の対象とはなりません。
また、クレジットカードのキャッシング機能は、クレジットカード会社からの「借り入れ」なので、対象外となります。

その他には、「ショッピングローン」やスマートフォンを購入する際に利用する「信用購入あっせん契約」なども、割賦販売法の対象です。

これらの条件を満たしても、以下に該当する場合は適用除外となります。

  • 営業のために、もしくは営業として締結する契約

  • 国外在住者による契約

  • 国や地方公共団体による契約

  • 事業者が従業員に対して行う契約

  • 不動産の販売

割賦販売法で消費者が受けるメリット

訪問販売等で個別信用購入あっせん契約を結んだ場合、クーリング・オフ制度を利用できます。
「訪問販売等」には、電話勧誘販売やマルチ商法・エステなどの継続的なサービスなどが含まれます。
訪問販売では8日以内、マルチ商法やエステなどは20日以内に、個別信用購入あっせん業者に対してクーリング・オフの通知をすれば契約を解除可能です。

また、消費者と販売店の間で、「商品が引き渡しされない」「不良品を交換してもらえない」などのトラブルが発生した場合は、クレジットカード会社への支払を拒否できる権利(抗弁権)が与えられています。

改正割賦販売法(2018年6月)のポイント

2018年の改正では、加盟店のセキュリティ強化や調査義務など、販売店への規制が強化されました。
ここでは、改正割賦販売法のポイントを解説します。

加盟店のセキュリティ対策の義務化

クレジットカードの加盟店は、以下のセキュリティ対策が義務付けられました。

  • カード情報保護対策

  • 偽造カードによる不正利用対策

  • ネット取引等における不正利用対策

具体的には、店舗に設置する決済端末のすべてをIC対応すること、決済端末から直接外部の情報処理センターにカード情報を伝達する「非保持化」に対応することが求められました。

近年は、ECサイトなどネットショッピングでの取引額増加に比例して、クレジット取引の不正使用額も増えています。
経済産業省の資料によると、2013年のクレジット取引における不正使用額は78億円だったのに対し、2016年は約2.1倍の142億円に急増しました。

出典:経済産業省「改正割賦販売法について

クレジットカードの不正使用は、国内だけでなく国境を越えて利用されるケースも多く、犯罪組織に資金が流出している懸念もあります。
この事態に対応するために、加盟店に対してセキュリティ強化が義務付けられました。

クレジットカード番号等取扱契約締結事業者の登録制度

クレジットカード会社(アクワイアラー)は、「クレジットカード番号等取扱契約締結事業者」として、経済産業省への登録が義務付けられました。
登録の際には、経済産業省による審査があり、悪質な業者は登録できない仕組みです。

登録された事業者が、杜撰な情報管理などを行っている場合は、経済産業省が行政処分を課して、社名や内容が公表されます。

加盟店調査義務

クレジットカード番号等取扱契約締結事業者に登録された事業者は、加盟店に対して以下の調査を実施することが義務付けられています。

  • 加入時の初期審査

  • 加入後の定期調査

  • 調査結果に基づく指導

調査により不備が見つかり、指導しても改善が見られない場合は、加盟店契約を解除すると規定されています。
また、クレジットカード番号等取扱契約締結事業者が調査義務を履行していない場合は、経済産業省が業務改善命令や登録の取り消しを行えます。

改正割賦販売法による消費者への影響

2018年の改正割賦販売法の施行により、クレジットカードの加盟店などは設備投資など、多くの影響がありましたが、消費者にもいくつかの影響を及ぼしています。

改正割賦販売法は、セキュリティ体制の強化を目的としているため、クレジットカード利用時に不正利用ではないかの確認を求められます。

従来は、クレジットカード番号や有効期限だけで決済できていましたが、あらかじめ登録したIDや暗証番号の入力を求められるようになりました。
このような本人認証を3Dセキュアといい、不正利用者によるなりすましを防止可能です。

改正割賦販売法の施行により、クレジットカードの利用が少しだけ手間がかかるようになりましたが、安心して取引を行うためには仕方がないと言えるでしょう。

まとめ

割賦販売法は、取引形態が複雑でトラブルを起こしやすい割賦販売から消費者を保護するために制定された法律です。
クレジットカードでの2回以上の分割払いや、ショッピングローン・スマートフォン購入の際の信用購入あっせん契約などが、割賦販売法の対象となります。

割賦販売法は時代の変化に合わせて改正されていて、2018年にはネットショッピングの増加によりクレジットカードの不正利用が急増したため、セキュリティ対策が強化されました。
これにより、消費者がECサイトでクレジットカードを利用する際に、暗証番号を求められるなど本人認証の手間が増えましたが、より安心してネットショッピングを楽しめるようになりました。


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