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消費者契約法とは?違反する事例を分かりやすく解説

スーパーで食材を買う、スマートフォンを契約する、車を購入するなど、日々の生活は契約の連続です。
しかし、事業者のしつこい勧誘や嘘のセールストークなどに騙されて、不利な契約をしてしまう方が絶えません。
今回は、事業者・消費者ともに知ってほしい消費者契約法を、分かりやすく解説していきます。

この記事は20年以上金融サービスを提供してきたソモ㈱が執筆しています。
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消費者契約法とは

消費者契約法とは、悪質な事業者から消費者を保護・救済するための法律です。
取引をする際に、消費者と事業者では持っている情報の質や量・交渉力などに差があります。
そのため、悪質な事業者は自分に有利な契約条項を作成したり、虚偽の情報を伝えたりして、契約を締結しようとするケースが多発しました。
そこで、消費者を保護することを目的として、2001年に消費者契約法が施行されました。

消費者契約法に反した契約をした場合、消費者は取消しすることができ、不公正な契約条項があれば無効を主張することが可能です。

消費者契約法の対象となるのは、消費者と事業者間の契約のみです。
事業のために契約したケースでは、消費者契約法の対象とはなりません。また、使用者と労働者が交わす「労働契約」も消費者契約法の対象外です。

消費者契約法において取消しできる契約

ここでは、消費者契約法において取消しできる契約や無効となる契約条項について解説します。

取消し

不当な勧誘により契約を締結した場合、後から取り消すことができます。不当な勧誘には、以下のケースが挙げられます。

・嘘を言われた(不実告知)

契約上、重要となる事柄について嘘をついて契約をした場合は、契約が無効となります。

省エネ効果がないのに、「省エネ製品だから購入すれば電気代が安くなる」
車の修理の際に問題がないのに、「ブレーキがすり減っているから交換が必要」

などは不実告知となり、消費者は契約を取消しできます。

・不利になることを告げられなかった(不利益事実の不告知)

消費者が不利になることを、事業者が故意に告げなかった、もしくは重大な過失により告げなかった場合には契約を取り消せます。
例えば、マンションを購入する際に「日当たりがよく、眺望も良好!」と言われてマンションを購入したのに、隣にマンションが建ち、日当たりが悪化した場合は取消しが可能となります。
ただし、事業者がマンション建設計画を知っていた場合のみ取消しが可能です。

・不確実なことを確実であるかのように話す(断定的判断の提供)

将来における変動が不確実なのに、確実だと断定して告げられた場合、契約を取り消すことが可能です。

エステ店にて「1か月後には必ず10kg痩せている」
証券会社にて「この投資信託は確実に利益が出る」
などのケースは断定的判断の提供となります。

・大量に商品を購入させる(過量契約)

消費者にとって通常の使用量を著しく超えることを知りながら勧誘された場合、消費者は契約を取り消せます。
以下のようなケースは過量契約とみなされる可能性があります。

例1.外出頻度が少なく洋服をあまり必要としない人に対して、店舗にて勧誘をして何十着も販売した
例2.一人暮らしだと知っているのに布団を10組も購入させた

・帰ってほしいのに居座る(不退去)

消費者が帰ってほしいと伝えても、しつこく食い下がり帰らずに勧誘を続けた場合は、契約を取消しできます。
消費者が帰ってほしい旨を告げる必要があるため、事業者に対してはっきりと伝えることが大切です。

・帰らせてくれない(退去妨害)

消費者が帰りたいと伝えているのに、帰らせずに勧誘を続けた場合、契約を取り消すことができます。
長時間の勧誘を受けると思考がにぶり、早く帰りたいという思いから、やむなくサインをしてしまうこともあります。
こちらも、消費者が帰りたいと告げる必要があるため、事業者に対してはっきりと伝えることが大切です。

・不安をあおる告知

社会生活上の経験の乏しさにつけこみ、不安をあおって勧誘された場合、契約を取り消せます。

例1.就職セミナーに参加しないと無職になってしまう
例2.進学塾に通わないと、どこにも進学できない

・好意の感情の不当な利用

消費者が勧誘者に好意を抱き、勧誘者も自分に好意を抱いていると錯覚していると知りながら、契約しなければ関係は終わると告げて勧誘をされると契約は取消しできます。
デート商法は昔からありますが、消費者が違法な勧誘とは気が付きにくいため、表に出ないケースが多くあります。

・判断力の低下の不当な利用

加齢や心身の故障などにより生活に不安を抱いていると知りながら、不安をあおり勧誘をされた場合は、契約の取り消しが可能です。
「このサプリを毎日飲まないと認知症が進行する可能性がある」と勧誘すると違法となる可能性があります。

・霊感等による知見を用いた告知

事業者が「自分には霊感がある」など特別な能力により、このままでは不幸になると不安をあおり勧誘した場合は、契約を取り消すことができます。
「先祖のたたりで不幸になる」「この印鑑を購入すれば運勢が開ける」など、典型的な霊感商法が良い例です。

無効

消費者にとって不当に不利となる契約条項は無効にできます。以下のような契約条項が無効となる可能性があります。

  • 事業者は一切の責任を負わないとする条項

  • いかなる理由があってもキャンセルできないとする条項

  • 平均的な損害の金額を超えるキャンセル条項

  • 消費者の利益を一方的な害する条項

事業者側は「何かあった時のために」と、つい自分に有利な契約条項を作ってしまいますが、消費者契約法に反すると無効となるため注意が必要です。

消費者契約法の努力義務

消費者契約法では、契約の取消しや無効を定めるだけでなく、事業者と消費者に努力義務を課しています。

事業者の努力義務

事業者は契約条項を策定する際に、分かりやすく明確な内容となるように配慮することが大切です。
最近では、スマートフォンの契約の際に内容が理解しにくいと、多くの相談が消費者庁に寄せられています。
その他、事業者が勧誘する際は、消費者の知識や経験を考慮したうえで、必要な情報を提供するように求められています。

消費者の努力義務

消費者は契約を締結する際は、事業者から得た情報により契約内容についてしっかりと理解することが求められます。
契約内容を理解しないで締結すると、後から「事業者が嘘をついた」と勘違いして、問題が大きくなる可能性があります。
無用なトラブルを起こさないためにも、消費者は事業者の話をよく聞いて、契約内容を理解するようにしましょう。

まとめ

消費者契約法は、消費者を悪質な事業者から保護するための法律です。
虚偽の情報を伝える・大切な情報を伝えない、など消費者契約法に反する勧誘を行った場合は、契約を取り消すことができます。
また、消費者にとって不当に不利な契約条項が存在する場合は、無効とすることも可能です。
消費者を騙すつもりがなくても、オーバーに話してしまったり、不確実なことを断定してしまったりするケースは存在します。
消費者契約法を理解して、お互いに余計なトラブルは起こさないように注意しましょう。

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