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虚構日記:ゲームショウ

ゲームショウに来ていた。

あたりは群衆と呼んでいいほどの人だかりだが、不思議と圧迫感がない。
それも道理で、よく見ればみんな人の形はしているものの、くらげのように透き通っていて、ふよふよとしていた。

身体が触れても何の手ごたえもない。人間のかたまりは嫌いだけど、これなら居ないのと同じだ。

色とりどりの透き通ったくらげ人間が建物のなかに消えていく。

ひそみに倣ってあとに続いた。

建物の中は細かいブースにわかれていて、どのゲームも無料で体験できるという。

普段は手を出さないようなゲームにも果敢に挑戦して楽しんでいると、来春発売される予定の新作ゲームのブースが空いているらしいとターコイズ色のくらげ人間が教えてくれた。

どんなゲームかも知らないままに、ブースに向かう。

目指すブースに到着すると、となりのブースがひときわ賑わっていて、くらげ人間がふにゅふにゅと押し合い圧し合いしていた。有名なゲーム実況者が来ているらしい。

そうなると、そちらのゲームも気になる。下手くそなくせに挑みたくなる。紫の煙がただようブースに向かって並んでいると、前方のくらげたちがたふ、たふ、とくずおれていくのが見えた。

どうやら紫の煙は演出ではなく毒ガスらしい。普通に諦めた。

わたしが抜けたあとも、くらげたちはたふ、たふ、と虹色に混ざりあって積みあがっていく。高いところから落とした求肥の餅が重なるような音だけが響く。誰もブースに入れない。

その気配を感じながら、わたしはもう別のブースにいて、画面の中のバナナを房に戻していくゲームに挑んでいた。

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