![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/144314455/rectangle_large_type_2_cad18af3fdc2c48b2c55a15625d368df.png?width=800)
Photo by
szkjszdrm
虚構日記:ゲームショウ
ゲームショウに来ていた。
あたりは群衆と呼んでいいほどの人だかりだが、不思議と圧迫感がない。
それも道理で、よく見ればみんな人の形はしているものの、くらげのように透き通っていて、ふよふよとしていた。
身体が触れても何の手ごたえもない。人間のかたまりは嫌いだけど、これなら居ないのと同じだ。
色とりどりの透き通ったくらげ人間が建物のなかに消えていく。
ひそみに倣ってあとに続いた。
建物の中は細かいブースにわかれていて、どのゲームも無料で体験できるという。
普段は手を出さないようなゲームにも果敢に挑戦して楽しんでいると、来春発売される予定の新作ゲームのブースが空いているらしいとターコイズ色のくらげ人間が教えてくれた。
どんなゲームかも知らないままに、ブースに向かう。
目指すブースに到着すると、となりのブースがひときわ賑わっていて、くらげ人間がふにゅふにゅと押し合い圧し合いしていた。有名なゲーム実況者が来ているらしい。
そうなると、そちらのゲームも気になる。下手くそなくせに挑みたくなる。紫の煙がただようブースに向かって並んでいると、前方のくらげたちがたふ、たふ、とくずおれていくのが見えた。
どうやら紫の煙は演出ではなく毒ガスらしい。普通に諦めた。
わたしが抜けたあとも、くらげたちはたふ、たふ、と虹色に混ざりあって積みあがっていく。高いところから落とした求肥の餅が重なるような音だけが響く。誰もブースに入れない。
その気配を感じながら、わたしはもう別のブースにいて、画面の中のバナナを房に戻していくゲームに挑んでいた。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?