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虚構日記:炭酸水

炭酸水が好きだという話をしたら、水道局に行って手続きすれば水道水を炭酸水に変えてくれるよ、と誰かが教えてくれた。

さっそく水道局に問い合わせてみると、たしかにできますという。
費用も今の基本料金に月額百五十円追加するだけというので、さっそく手続きしてみた。

家に帰り、わくわくしながら蛇口をひねる。

しばらく普通の水が出た後、じゅわわわと明らかに音が変わって炭酸水が出はじめた。

コップに注いでみる。しばらく待ってみても、コップの中の泡は消えない。飲んでみると、しゅわしゅわと強めの炭酸が口の中ではじけた。まごうことなき炭酸水だった。

こんなに美味しい炭酸水が自宅で飲めるなんて。
重たいペットボトルを必死の思いで二階に運びあげていたあの日々はなんだったのか。もっと早くに知りたかった。

なにより炭酸水のお風呂の気持ちの良いこと。
設定温度は変えていないのに、泡が全身を包んでくれるおかげなのか、いつもより暖かい気がする。

肩まで浸かったところで、買ってあったバスボムを入れてみた。
ぶくぶくとバスボムから綺麗な空色の泡がはじける。
見る間に炭酸水とあわさって巨大な空気玉になっていった。

水中から、ばぼんばぼん、ばぼんばぼん、と聞いたことのない音がする。

はっとひらめいて、素裸のまま急いで部屋から雑誌とネクターを持ってくると、空気で満ちたお湯の中にもぐってみた。

案の定、お湯の中は空気で満ちていた。

浴槽の底面にうつ伏せになって、キンキンに冷えたネクターを飲みながら、最新刊の雑誌を読んだ。

最高過ぎて、つい長風呂してしまった。

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