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カヌレ、その配合と焼成温度

はじめに

こんにちは。白雨菓子店の染谷です。四国香川県の街で、菓子店をやっています。
白雨菓子店は工房の名前で、通販と委託製造がメインになってきています。

対面販売は、apres la pluieというお店で、ジェラートと焼き菓子をご提供しています。

今日のコラムは「カヌレ」。実際に白雨菓子店とapres la pluieで販売しているレシピを皆さまに。

カヌレのレシピ

レシピ

中力粉 1500 *ラフランセズトラディショナル
上白糖 3000
牛乳  6000
生クリーム 500 *42%のもの
発酵バター 300
ラム酒 150
バニラビーンズ 2本
卵黄 600
全卵 1400

作り方

1 バニラビーンズを入れた牛乳を沸騰させ、粗熱をとり冷蔵庫で1晩休ませる。
2 中力粉、上白糖を粉末混合し、卵黄、全卵を割る。
3 発酵バターで焦がしバターを作る。色合いはヘーゼルナッツ色程度まで

4 牛乳、生クリーム、焦がしバター、卵類、粉類、ラム酒の順で入れよく混ぜる。
5 濾し器で2回濾し、冷蔵庫で最低24時間以上寝かせる。

焼成

1 オーブンを240℃に予熱する。
2 冷たいままのアパレイユを、下に溜まった小麦粉を全体に行き渡らせるようにヘラ、ホイッパーで撹拌する。
3 型に流し込み、冷たいまま220℃のオーブンで20分焼成する。
4 オーブンから取り出し、2-3分程度ベンチタイムをとる。
5 再びオーブンで180℃40分程度焼成する。
6 焼き上がりはすばやく型から抜き、ケーキクーラーなどで常温まで冷やす。

ポイント

・ラム酒は最大で3倍まで入る。白雨/apres la pluieではラム酒は少なめに効かすようにしている。
・焼成時に型から大きくアパレイユが飛び出すことを「爆発」と表現している。原因はグルテン過多、焼成温度が低いと白雨/apres la pluieでは考えている。焼成開始後にアパレイユが沸騰せず、天面に火が通ったグルテンの膜ができると、型の下部で発生した蒸気の逃げ場がなくなり、爆発する。「では、アパレイユを加熱して常温程度まで上げてから焼成すればいい?」と考えられるが、常温にする過程で時間が経過し、型の中で小麦や砂糖など固形分が沈殿して食感が変わることを避けるために採用していない。湯煎で温めて型に流す場合、温度の上昇に伴い寝かす工程で分断していたグルテンが再結合し、爆発の原因になると考えるのでこれも採用していない。
・バターは発酵バター、それも明治やよつ葉など発酵香の強いバターが向いている。逆に紅茶、カカオなどのヴァリエーションをつける場合、無塩バターで、カルピスなど淡白な風味で、それでいて乳脂の旨味がしっかりあるバターが向いている。
・焼成は下火を強くすることが必要なので、デッキオープンが向いている。白雨/apres la pluieではコンベンションオーブンを使用しているため、熱伝導率の高い金属の台座を使うことで下火を補完している。ご家庭のオーブンは上に熱源があることが多いので、難しい伝統菓子といえる。
・型のなかで溶け出したバターの油分で「揚げ焼き」のような状態になる菓子のため、使用する小麦粉の性質に合わせ、10%程度分量は上下させる。
・フランスではカソナードといった粗糖を使用することが多いが、白雨/apres la pluieでは上白糖を使用している。その理由は、上白糖の含水性の良さと、メイラード反応の加減。粗糖を使用する場合には砂糖の分量を下げるほうが焼き上がりがよりよい感触がある。
・生クリームは焼成後の滑らかさのため。使用しない場合は牛乳の量をプラスする。味わいは軽くなり、ラム酒やバニラの風味がより立つようになる。

思い出

カヌレを初めて食べたのは、オーボンヴュータンだった。その後、フランス
やイタリアでも食べたが、オーボンヴュータンのカヌレが一番美味しいと感じた。川田氏は偉大だと心の底から思う。

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