小沢健二のエピソード、ひとつふたつ
中学2年の時に「恋とマシンガン」でフリッパーズ・ギターと出会い、その後ファーストアルバムを聴いてガツンとやられて今に至る者の1人です。
フリッパーズ解散後は小山田圭吾と小沢健二の動向が気になって、とにかく早くソロ作品を聴けるのを楽しみに待っていました。
子供ながら、小山田が創る音楽は「フリッパーズの声(ヴォーカル)だったから」大丈夫だろう、と思っていましたが、小沢のヴォーカルはどうなんだろうと少し不安だったのでソロデビューシングルの「天気読み」は買わずにレンタルで済ませました(笑)
カセットに録音した「天気読み」はやはり地味に思えたものの、ある日学校帰りに「君のいっつも切り過ぎの前髪のような」のフレーズが頭の中に突然流れて来て、やっと「良いかも」と思えました。その後「犬キャラ」がリリースされ、聴くたびに良い気分(フリッパーズを聴いた時とは違う何か)に浸ることが出来て、高校2年の秋の夜長に何度も繰り返し聴いていました。
そう言えば、
犬キャラのCDの帯は、赤色の微妙なグラデーションがかかっています。ずっと印刷の問題か目の錯覚くらいにしか思ってませんでしたが、このアルバムの制作に関わった人から「よく分からなかったけど、あのグラデーションにはすごいこだわっていた」という話を聞きました。どういう意図だったんでしょう?
他にもその人からはレコーディング現場で「珍しいエフェクターを自慢してた」とか「クネクネしながら歌ってたよ」というエピソードを聞きました(笑)
閑話休題。
その後、「ブギーバック」でガツン、「愛し愛され生きるのさ」でガツン、「LIFE」で超ガツンとやられました。特に「LIFE」はカジュアルなニヒリズムと微量のシニシズムを纏っていた高校3年の僕の心を解かし、人生に軽めのポジティブさをもたらしてくれた恩人的作品になりました。
(中略)
いつからか小沢健二に対しての強い気持ちは薄れていたので、2017年の新曲もテレビで一回見たくらい。フジロックも行かず、公式サイトの「ひふみよ」も「小沢健二の帰還」も特に読む気にもなれず。
先日、「シティ・ソウル」という新しい音楽ディスクガイドを買うために入った本屋で「小沢健二の帰還」が面出しされていた(いまだに!)のが目に入り初めて実物を手に取ってみました。目次に「Jay-Zとの極秘来日」とあり気になったので読んでみました。
それは2002年頃の話で、表参道や秋葉原でJay-Zと買い物をしている姿が目撃されたというものでした。初めて知った話だったので驚きました。
ここで1つの記憶がよみがえりました。
古い友人から聞いた話です。この友人も僕と同じように中学生の頃からフリッパーズを聴いていて、1つ年下だった高校1年の僕にストーン・ローゼスやスクリーマデリカを貸してくれた先輩です。
2002年、サッカー日韓ワールドカップの少し前のころ、友人(地方の電気屋の息子)は、今はなき秋葉原の有名電気店に「勝手に丁稚奉公」して店員として働いていました。
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「これと同じデジカメありますか?」
どこか聞き覚えのある声だ。懐かしい、青春時代の匂いがする。すぐ分かった!
「あ、あちらになります」
驚きを隠しながら案内した。
すぐ分かった! すぐに分かった!!
「これ、同じの3つ欲しいんですけど、、、」
彼は照れくさそうに、はにかんでみせた。
商品を用意しカウンターに案内して「こちらにお名前、ご住所、お電話番号のご記入を、、、」
アフター・サービスを徹底している店の決まりであるカスタマー登録をいつものように促すと、彼は少しだけ表情を曇らせた。
(保証の関係で必要なんだけど、、、)
「失礼しました、ご記入いただかなくて結構ですよ」
とっさに空気を読み、笑顔とともに野暮なことはしない意思を彼に暗に伝えた。
「ありがとう、助かります」
いや、感謝してるのはこっちなんだよ。
支払いを済ませ、商品を用意していると、彼の連れの外国人がはじめて口を開いた。
「さっきあの人と何を話していたんだい?」(もちろん英語)
「本当は必要なんだけど、僕の事を知っててプライベートなことは書かなくていいって言ってくれたんだよ」
「へぇーすごくクールな人じゃないか!」
「そうだね。クールな人だね」
照れくさかった。
そして、彼は喧騒の中に消えていった。
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もちろん、彼とは小沢健二です。
友人は、「フリッパーズの頃からずっと聴いてて、特にソロになってからのあなたのアルバムには毎回感動させられて救われました」という感謝の気持ちを伝えることはしませんでした。
これだけの話です。
友人の妄想の可能性もゼロではありませんが、こんな話もあっていいですよね。
P.S.
友人よ連絡ください!
【お知らせ】
個人で作った音楽ディスクガイドZINEの第2弾「渋谷系特集」では、フリッパーズの前身バンド「ロリポップ・ソニック」とも対バンしていた「フィリップス」のインタビューがあり、その中にも若き日の小沢少年と小山田少年の微笑ましいエピソードが登場します。
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