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シン・仮面ライダーレビュー

以下、大いにネタバレを含みますのでご注意ください。

1.総評

 先ず、全体を通して「作りが雑」。本郷猛がルリ子のボディガード程度でしかなかったり、セリフが聞き取り辛いところがチラホラあったり、VFX戦闘シーンがダサかったり(邦画に求めるのも酷な気がするが)、それらがある意味での「仮面ライダーらしさ」と言えば、そうかも知れない。
 また作品内には漫画版とTV版の要素が大量に組み込まれている。全体的な話の進み方は漫画版で、その中にTV版での様々なエピソードを盛り込んだ形になっているのだが…漫画版は御大の作品の多くに見られる少し暗い純文学のような(読者に疑問を呈するような)作品であり、TV版の大衆娯楽っぽいところは余計な部分になる。対してTV版は漫画版から脱却して親しみやすさを目指した大衆娯楽作品であり、漫画版の純文学的な要素は余計な部分になる。今作品はこの二つを上手く擦り合わせたいという意図を感じるが達成できていない。

2.細かいところ

(1)ショッカーについて 
 首領が存在しない。怪人各々が自分の考える「幸せ」の実現を図っており、そもそも組織として成立していない。漫画版もTV版も「世界征服」という経営理念が先ずあって、様々な作戦を遂行するために適した怪人を製造し、敵や裏切り者は徹底した態度で臨むという、涙が出るほどわかり易すい組織形態だった。しかし今作のショッカーは、なんか金持ちの創始者の開発したAIが皆を幸せにするために個人の絶望を乗り越えさせるとかなんとか。かなり大層な説明と映像で組織の誕生について語られるが、それらが生きる部分は皆無で、その後はロボット刑事みたいなキャラがちょいちょい出てきて、怪人が倒される度に自分の胸ポケットに花を挿すだけ。組織としてまともな体を成していないので、「裏切った」とか「戻って来い」とかなどの演出も宙に浮いたものになっている。また作中でのラスボスの目的は「みんなで精神世界に行きましょう。肉体的には死にましょう。」という「行きたきゃ勝手に一人で行け」と誰もが思いそうなもので控えめに言って退屈(監督が他作品で散々使ってきた目的であり、筆者がそれを知っているからということもあるが)。

3.好みの問題?

【戦闘や特撮について】
 戦闘シーンの演出全般が粗末。例えば高速戦闘シーンはマジで速いだけ。別の戦闘シーンでは、力を演出するため拳と拳がぶつかった瞬間に衝撃波が出るが、それだけ。トンネル内でのバイクアクションシーンに至っては暗すぎて何が起こっているか理解するのに苦労を強いられる始末。

【ギャグについて】
 TV版を語る上で、どうしても外せないのが、どう見てもギャグとしか思えない回や演出の存在。今作にもあったが、「え?なんでこのシリアス展開でギャグ挟んでくるの?」という方向にしか働いてない。シリアスに進めるならもっとこう、碇ゲンドウが脳ミソ拾うくらいのさりげなさでやってほしいところ。一応、本作もツッコめるところは多少あるが…

4.まとめのまとめ

 「なぜ仮面ライダーを好きになったのか?仮面ライダーの好きな部分はどこか?」という点が個人で違うのは当たり前で仕方ない。自分と違う好きな部分を掘り下げているか?という目で見ても、「掘り下げられていない。」という感想。

ちなみに筆者の「仮面ライダーの好きな部分」は、「本物」の部分。
・下が水ならライダーも戦闘員も7~8mから落ちる。
・本郷猛はエキスポランドの階段をバイクで駆け上がる。
・バイクアクションで軽くぶつかったりすることもある。
こういう部分。

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