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白いもんが見つかるようになってから

《「ここになあ・・・」と大庭はみだらに優しい声で以和子のあたまの上からそっという。指は以和子のやわらかい陥穽(おとしあな)の縁辺(ふち)まわりをそっとなぞっているのだった。「白いもんが見つかるようになってから、男と女は楽しおすねや。これから、やねんで。先途(せんど)、楽しみまひょなあ・・・」》 #田辺聖子 『雪の降るまで』

楽しそうやな!

📙読書記録
『せつない話 第2集』 #山田詠美 編
装画 #山本容子
'89年の『せつない話』が評判も売り上げもかなり良かったようで、'97年再び山田詠美編集で第2集が出た。当時は "せつない" というキーワードも受けたようだ。当時の俺にも受けた(笑。

その時は #内田春菊 『夜の足音』が強烈だったが、再び読んでみると、この浮気は外道すぎる!と引いた。でも主人公が見る、足についての不可解な夢には惹かれてしまう。「怖かったけど..また見たいかも」と思うタイプの悪夢ってないですか?

ウィリアム・メルヴィン・ケリー #WilliamMelvinKelley 『雪掻き』が今回良かった。1960年代頃の真冬のブロンクス、雪掻きアルバイトの黒人少年と独り暮らし白人中年女性とのほんの数十分の出会い。他の作品も気になるな。訳者の #浜本武雄 はラングストン・ヒューズの小説や、マルコムXの自伝も翻訳しているようだ。ていうか俺が大好きなマラマッドも訳してた..

今回の作家の中で一番若い1961年生まれのデヴィッド・レイヴィット #DavidLeavitt (訳 井上一馬)がこの本のラスト。レイヴィットの短編集は河出文庫を一冊前々から持っている。この『テリトリー』読んで、ゲイの作家なんだと知り文庫買ったのかな。いや文庫買ったのが先なのかな。どうでもいいか。80年代の小説だけど、母親に複雑な感情を抱えながら(両親にカムアウト済みではあるが)、ゲイパレードに参加したりなど、そんなに好きでもないのにつきあっちゃう感じとか(笑、今読み返したほうが面白かった。

編者山田詠美は『せつない話』第1集で #山口瞳 の『庭の砂場』を選んだが、今回の第2集のあとがきで山田は、当時亡くなって間もない山口瞳との思い出を記している。これも良かった。

さぁ、(まだまだ生きてるボクらは、)これから、やねんで。楽しみまひょなあ..


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