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【シャニマス】「シャケ」からかいつまむ『海へ出るつもりじゃなかったし』【ノクチル】





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一昨日、ノクチルの新規イベコミュ『海へ出るつもりじゃなかったし』が追加されました。

僕自身まだ何回も見直せているわけじゃないですが、各話、各人、多くの台詞、展開の巧さなど語りどころが至るところにあって個人的にはぶっ刺さったシナリオでした。

ただ、それ故に正直言葉でまだまとめきれていません。


今回は自分自身が整理するために、『海へ出るつもりじゃなかったし』のふわっとしたところを掘り下げてみる、というコンセプトで書いています。


○「シャケ」

今回のイベント、浅倉透を通したフレーズがかなり印象的で、もちろんそこに関しても山のように語るところがあるのですが……

シャニのシナリオを読み込んだことがないよという人は、全体的に抽象的に感じて、かえって混乱してしまうかもしれないので、まずは、「シャケ」というフレーズからノクチル全体の動きを掴んでいくのが今回に関してはわかりすいでしょうか。


この「シャケ」、

第6話『あけの星に口づけ』

にて、透の家に3人(透は居残りのため不在)がいる状況で登場しました。

円香と小糸ちゃんがとある本の話をしている裏で、雛菜がオウムに対して言わせようとした言葉です。


まず、雛菜がこんな返答をするオウムのことを「透先輩じゃん」と言っています。

表向きは何気ない部分に思えますが、これは「(飛べる)鳥」を透としているところがまずはキーポイントだと思います。

ノクチルの中でこの時点では唯一、「海」だけでなく「空」という二つの原風景を持つ透


そして、円香と小糸ちゃんは、とある本の話になります。
ほぼ間違いなくこの本の元ネタは、アーサー・ランサムの『ツバメ号とアマゾン号』シリーズ(『海へ出るつもりじゃなかった』)。

その時に裏で雛菜は、

とオウムに対して聞いていて、ここで「シャケ」というフレーズが出てきます。これは最終的に、「透先輩、おにぎりいる~?」にかかっていくのですが、この「シャケ」というキーワードは、おそらくそれ以上に意味を持った表現になっています(後述)。

そして、

「航海士みたいに呼び合って、どこかの海で海賊と戦ってるつもりになっている」子たちと、私たち(ノクチル)は同じだと、そう言おうとしてやめた小糸ちゃんに円香は言います。

「ほんとは、なのにね」


円香がそれを掘り起こしたのは、おそらく、その後の

「海を知らないわけじゃない」
これを言うためでしょうね。

この時、円香が回想している透の言葉は、『天塵』エンディングでのものです(↓)。






は、淡水域で生まれ、海水域に向かっていく魚ですよね。


○『汽水域にて』

今回のコミュイベのタイトルに『汽水域にて』(第4話)があります。

汽水域とは、知っての通り海水と淡水が混ざる場所。先ほどの「シャケ」を例にするなら、海に向かう(あるいは戻る)境だと言えます。

そして、この回は、仕事を断った直後の話です。また、もう一度仕事の連絡が入ってくる回でもあります。

プロデューサー『みんなでどうなりたいか、ってことも少しずつ考えながら、選んでみてくれると嬉しい。』




これと合わせると「海」「湖」「シャケ」を使ったフレーズの意味が段々見えてきます。


と言っても、かなり今回のイベコミュは『天塵』を踏まえている部分があるので、『天塵』を読み返してみるとより分かりやすいかもしれません。



では、もう一度、第6話『あけの星に口づけ』の話に戻します。


円香が透の言葉を回想し「海を知らないわけじゃない」と言った直後、

透のようなオウムは、鳥は、ついに「シャケ」と言うのです。


ただ、雛菜が勝手にやっていたことなので、円香と小糸ちゃんは聞いていませんでした。

もう一度、雛菜は「シャケ」と言わせようとするのですが、オウムは「アー……ンー……」としか言いません。

ちなみに、円香が席を外すとオウムは「シャケ」と再び言っています。



◯余談:「シャケ」から始まる市川雛菜さん妄想

この場面、雛菜と透(オウム)/円香と小糸ちゃんという、天塵で見られた構図にわざわざ明確に分かれています。
天塵ではこれがミスリードに繋がっていました。
実は雛菜が一番、昔の思い出(約束)を残していたっていうやつですね。


ちなみにですが、雛菜のコミュでこんなセリフがあります。


……さて、
鮭って、淡水域で生まれ、海で育ちますが、最後には鮭って自分が生まれたところに帰ってきますよね

ここで(初期のノクチルを表していると考えられる)思い出演出を見てみます。
透はまさに「進んでいるっていうか、のぼっているっていうか」演出になっていますね。この「のぼっている」は、「てっぺんに登る、空に昇る、ステージに上る」と考えられます。
そして、それとは逆に「沈んでいく」雛菜。「のぼっていく」の対比ではないでしょうか。

これを踏まえると、
「"シャケ"というフレーズを、透みたいな鳥に言わせようとしている雛菜」というのは、
「沈んでいく雛菜は、進んでのぼっていく透に『海へ出た後戻ってくる』と言って欲しい」という構図と見ることもできます。

「しゃけ〜 言ってみて〜」
「しゃけ〜!水飲みたくないの?」
「そっか〜言えないのか……」



こじつけですが、こういった解釈も面白いのかもしれません。




では、続けてエンディングの『うみを盗んだやつら』の話をします。

○うみ、ジャンプ、ピース・オブ・エイト


●うみ

シャニマスにおいて、普通漢字で書くもののひらがな表記はかなり意図的に使われています。

その多くは二重の意味を内包しているパターン、または、パッと思いつく漢字の方にミスリードさせるパターンです。


ちなみにこのうみは、おそらく、「海」と「湖」の二重の意味でしょう。コミュ内で湖を「うみ」と呼んでいることもありますので。


では、海と湖、違いは何だったでしょうか。

湖とは、海と違い、閉じた4人だけの「うみ」。そこで、海賊を倒しているつもりになっていた。

対して、海とは、開かれた「うみ」です。まさしく、「本当の世界」。

ここで、冒頭から顔を覗かせていた「世界」というワードが活きてくるんですよね。


だから、エンディングの『うみを盗んだやつら』は、

「"海"で優勝を取りに行って、"ジャンプ"をする話」になっている。

盗むというフレーズは、「海賊と戦っているつもり」とは真逆のフレーズ。むしろ、海賊側


●ジャンプ

さて、まずは、第2話『風のない夜』。

ジャンプすればどうなるか。

そう、だから、あのジャンプは、"海"で優勝するためのものだったんです。


ピース・オブ・エイト

冒頭から出ていた、オウムが喋っているこの言葉。

片足がない海賊が飼っている、かつての船長の名をつけたオウム。

「ピース・オブ・エイト」は海賊の言葉です。

だから、「海を盗んだやつら」。



ここで、『海へ出るつもりじゃなかったし』について考えてみます。

ごっこ遊びをしていた彼女達は、ほんとうの海に出てしまう。湖では海賊と戦っていたつもりになっていた彼女達は、海では海賊行為(未遂)をした。
これが『海へ出るつもりじゃなかった』というワードのとりあえずの回収ということで問題ないでしょう。



と、ここまでだと、"海"だけで説明は事足ります。

でも、知っての通り、それで終わりじゃないんですね、この話。




ジャンプした彼女達は、結局ばらばらになってしまい、負けてしまいます。


OAでもほぼ映ることはありませんでした(報酬s-SSR参照)。


その意味においては、『"海"を盗んだやつら』にはなれなかったのです。


でも、それでも、

「海に出るつもりじゃなかったけど

海に出てしまったから

風を探している

そういう夢に」


今回の語り部たる透にとっての「海へ出るつもりじゃなかった」は、より深い意味合いがあるような気がします。


『天塵』で「(海へ)進んでいるっていうか、(空、てっぺんへ)のぼっているっていうか」と言っていた透が、そう感じたわけですから。


アイドルを始めて、"空"を見て走り出した透は、幼なじみの3人とアイドルユニット「ノクチル」を組んで、『天塵』では"海"へ向かった。

今回だってそう。元々、仕事の依頼を断るというフェーズを挟んでいます。他愛のない、暇な正月を4人は送って、そんな正月が終わってまた番組の話が来て。

"空"は浅倉透の原風景だけど、

"海"は4人共通の原風景。

きっと、だから。

『"海"へ出るつもりじゃなかった。』

でも、出てしまったから、風を探している。



そんな中で、風が吹くラストシーンなんですね。



小さなヨットに乗った4人を透は思い描きながら、

4人のもとに吹く風を受けて、


これにて『うみを盗んだやつら』は幕を閉じます。



めちゃくちゃ綺麗な展開だな……



○彼女達が正月イベを担当した理由や時系列の予想~ちょっとメタな話~


ノクチル単体のイベが正月イベだった理由


正月イベって今まで283プロ全体での話でしたよね。そのパターンを破ってまで、なぜ今回ノクチル単体のイベが正月イベだったのかという考察もしていきたいと思います。

(ちなみに、今までの正月のユニット全体イベのs-SSR枠はアンティーカ
それに対して、ノクチルユニット単体で正月イベ。
知っての通り、アンティーカはノクチルの対比として『天塵』で扱われていましたから、意図されているのかも。)


今回のコミュは『天塵』に呼応している部分が多々あります。

そこから考えるに、おそらく正月イベで彼女達の話をしたのは、
「夏の『天塵』を代表するノクチルの一年目が終わり、お正月も終わって、風が吹くノクチルの新たな年が始まる」というメタな意味合いがあくまで強い気がします。


何が言いたいかというと。

正月という年度で言えばかなり後半の出来事だと混乱してしまうのですが、おそらくこの話は『天塵』からそこまでの経験を積んだ後の話ではない気がするのです。

あくまで、夏の『天塵』に対する、一種の補足、というか"自由記述"という感じ。

『天塵』って、浅倉透の心理描写ってほとんどないんですよ。雛菜もない。
主に、円香と小糸ちゃん視点で物語は進んでいます。

(そして、なにより『天塵』では、透雛菜:円香小糸の2:2の構図が目立ちます。おまけに透と雛菜側の心理描写がほぼないために、ミスリードが組まれていたのですが。)


だから、『海へ出るつもりじゃなかったし』では、"空"に向かって既に走り出していた透の"海"への見解を描いたのだと思います。


もちろん、先述した通り、話の流れだけを見ても4人全員の「海へ出るつもりじゃなかったし」というフレーズは成立します。
ごっこ遊びをしていた自分達がほんとうの海に出てしまって、海賊行為(未遂)をする。

しかし、此度の語り手である浅倉透は、「海に出るつもりじゃなかったけど、海に出てしまったから風を探している」と続けています。

これは、浅倉透が語るフレーズだからこその意味合いがありますよね。


正月というイベントを利用して、透の視点や新たなテーマにより"海"の解像度をあげつつ、『天塵』に呼応することによって、ノクチルのより明確なスタートを年の始まりに提示した。

これが正月イベがノクチル単体イベだった理由の一つだと思います。
まぁ、絶対、全体イベという今までのパターンをノクチルに崩させてみたかったってのはあるでしょうけど……


要するに、『海へ出るつもりじゃなかったし』は『天塵』の続編で、それでいて別視点を描いている側面が強く、時系列的にはそこまで経っていないということです。(あくまで個人の感想です)


時系列

じゃあ、時系列はどの辺なの?という話になりますよね。

この「時系列」という表現はかなり難しくて、メタ的に彼女達が年を取らない以上、正月ってもう最後の方じゃんって感じてしまいますよね。

しかし、おそらくこのイベント、少なくともファン感謝祭より前の話です。
いや、ここはほんともう感覚なのですが。

もっと言うと、WING編の途中くらいの時系列じゃないのかなと思います。

まず、個人的によく語ってるので、雛菜を例に考えてみました。

まず、p-SSRの雛菜のコミュはほぼ間違いなくWING編後の話です。ここら辺の話は前の記事でしてます。

で、今回の雛菜とプロデューサーのやり取りを見ている感じ、WING編の途中の感覚に似てるなぁって思ったんです。少なくとも、p-SSRコミュの感じではないかなと。

……雛菜で特定するのは難しすぎて断念。


続いて小糸ちゃん。

まぁ、結論から言うと、こじつけレベルでなら……という感じ。

小糸ちゃんってアイドルをすることを最初は親に伝えていなかったですよね。プロデュースイベント『ガラスの嘘』でそれが発覚します(親にもここでばれている)。これはシーズン2での出来事です。

で、今回、小糸ちゃんだけ親とのそういうエピソードがない。

まぁ、それだけで、シーズン2って言うのはいささか無理があるなとは自分でも思います。


ということで、シーズンまではわからないけどおそらくWING編の途中の話だろう、という結論に至りました。




まぁ、時間の長さ自体は矛盾しちゃうんですけど。

「時系列」って表現がよくないですね。



○最後に

今回は、「シャケ」というワードから『海へ出るつもりじゃなかったし』について自分の中で整理しました。

ただ、『海へ出るつもりじゃなかったし』本編だけではなく、今回の報酬s-SSRのイベントコミュもめちゃくちゃ掘り下げがありますし、

タイトルの解釈や感想らしい感想もあまり書ききれていません。


こうやってnoteを書くと自分の中で考えが整頓できるのでいいのですが、人に見せることを前提にするとなんだか嫌な消費をしている気もしてそこは悩みどころです。せいぜい身内でインタラクティブな感想の共有をするに留めておくのがベストだと思ってはいるのですが、noteは少し違うというか。

とにかく時間ができたら、個人的に整理したいところです。





彼女達がノクチルを始めた年は終わり、正月も終わりました。

雛菜「でも、年が始まるよ~」


風が吹く今年は、どのような彼女達が見られるのでしょうか。




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