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【産婦人科専門医のQ&A】vol.6 私のつわりって「普通」なの?/妊娠中、これ食べていい?

この連載では、読者から妊娠・出産・育児にまつわるさまざまな疑問を募集。そして、子宮頸がん予防やフェムテックなど、エビデンスに基づいた情報発信に力を入れている産婦人科専門医・稲葉可奈子先生にお答えいただきます。

第6回は、つわりの代表的な症状や対策、妊娠中の食べ物についてです。


■つわりが出てくる時期や代表的な症状・対策、収まる時期を教えてください。

つわりとは、妊婦さんにみられる胃や胸のむかつき、不快感、吐き気・嘔吐、食べ物の好みの変化といったさまざまな症状のこと。妊娠初期の5~6週からはじまり、8~9週ごろにピークを迎え、12週ごろに落ち着いてくるのが一般的です。ただ、個人差が大きいものなので、つわり自体まったく感じない方もいれば、飲み物すら飲めないほど症状が強い方、中期や後期まで何らかの症状が続く方もいます。第一子ではほとんどなかったつわりが、第二子ではとてもつらい……なんてケースも。ただ、妊婦さんの性格や体格、赤ちゃんの性別などとつわりの症状は、まったく関係がありません

<代表的な症状>
・吐きづわり
胃や胸がむかむかして吐き気がする人や、実際に嘔吐してしまう人は少なくありません。お腹がすくと吐き気が強まるけれど、いざ食べようとしたら気持ち悪くて食べられないことも。症状が重い方は、食べ物のにおいをかいだり、水を飲んだりするだけでも気持ち悪くなってしまいます。

・食べづわり
何かしらの食べ物を口に入れていないと、気持ち悪くなってしまうタイプのつわり。空腹が吐き気の引き金になります。ガムやグミで気をまぎらわせたり、食事を小分けにしてとるなどの工夫をするといいでしょう。

・においづわり
においに敏感になり、いままではまったく気にならなかったかすかなにおいで気持ち悪くなることがあります。炊き立てのごはんのにおいやあたたかい食べ物の湯気、パートナーの体のにおいや化粧品の香りなど、気になるにおいは人それぞれです。

・眠りづわり
「とにかく眠い……」もつわりの一種。しっかりと睡眠をとっているのに眠気を感じたり、だるくて何もやる気が起きなかったりします。怠けているわけではなく、身体が休息を求めている証です。

つわりをやり過ごすポイントは、まず無理をしないこと。食生活が乱れて悩む方もいらっしゃいますが、この時期は栄養バランスを考える必要はありません。食べられるものや飲めるものを、食べたいとき飲みたいときにとってください。ちょっとずつでもかまいません。

まったく食べられなくても、赤ちゃんは母体に蓄えられているエネルギーを使って育っていくから大丈夫です。ただ、お母さんのほうがつらいと思うので、あまりに食事や水分補給ができないときは病院で相談してみてください。重いつわりは「妊娠悪阻」「重症悪阻」として、入院する方もいらっしゃいます

もうひとつ気にかけてほしいのは、歯みがきです。小分けにしか食べられず食事が不規則になったり、歯ブラシを口に入れると吐き気がしたりすると、虫歯リスクが上がります。虫歯は意外とあなどれず、切迫早産の原因になってしまうことも……。可能な範囲で口の中を清潔に保ち、妊娠中の歯科検診も活用しましょう。

■つわりがつらいし、そろそろ14週になるというのにまったく終わりません。これって大丈夫なんでしょうか?/つわりがまったくありません。これって大丈夫なんでしょうか?

つわりの症状はコントロールできないし、体質によって期間もさまざまなので、重くても軽くても異常というわけではありません。つわりがないのはラッキーなこと。ただ、終わらないつわりは大変ですよね……。

つらいときは自分でなんとかしようとせず、ぜひ病院に相談してみてください。吐き気止めや点滴での水分補給など、医療が力になれるケースもあります。

多くの妊婦さんを見ていると、なかには、実際に起きている症状よりもつらさを感じてしまう方がいらっしゃいます。たとえば、日ごろのストレスが大きかったり、家族との関係性がうまくいっていなかったり……精神的な要因が絡むことで、つわりをより重く感じることがあるようです。なので、妊婦さんはぜひストレスを溜めないようにゆったり過ごしてみて下さい。とはいえコントロールできないストレスもあると思います。つらいときは我慢せずに、かかりつけの産婦人科で相談してみてください。

■つわりの時期は、ほかにどんなマイナートラブルがありますか?

頭痛や倦怠感、立ちくらみはよく聞かれます。もう少し週数が進んでくると、貧血もありますね。眠さや疲れやすさは、妊娠期間中を通してずっと付きまとう問題です。

そのなかで気をつけてほしいのは、下腹部痛や不正出血。様子をみてよい症状なのかどうかは、診察してみないとわかりません。すぐに受診することをおすすめします。

■妊娠中に積極的に摂りたい食べ物、避けたほうがいい食べ物が知りたいです。生ハムやチーズもだめって聞いたけど、なんで?

積極的に摂ってほしいのは、葉酸と鉄分です。妊婦さんは貧血になりがちなので、レバー(食べ過ぎに注意)やほうれん草、赤身のお肉などを食べましょう。葉酸はサプリメントでOKです。

とくに避けてほしいのは生肉。加熱していないお肉には、トキソプラズマという寄生虫が含まれている場合があります。妊娠中にトキソプラズマ症に感染すると、胎盤を通じて赤ちゃんにもうつってしまい、目や脳、肝機能に障害が生じる可能性があるのです。レアなローストビーフや生ハムも避けましょう。

また、カッテージチーズやモッツァレラチーズ、カマンベールチーズといった加熱していないナチュラルチーズは、リステリア菌食中毒になる可能性があるため、避けておくに越したことはありません。
反対に、多少食べてもよいのは生魚です。水銀を含む、食物連鎖の上の方のメカジキやミナミマグロを毎日たくさん食べる……などはNGですが、普通の量のお刺身やお寿司などをいただくくらいは大丈夫。もちろん生ものなので食中毒のリスクはありますが、我慢する方がストレス、という場合は、新鮮で衛生的な食材を、ご自身の体調と相談しながら楽しんでくださいね。

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