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父娘、旅に出る。Day4_180913

父と私が滞在しているのは、ピカソの生誕地としても有名なマラガから、車で30分ほど離れた、アロラという街です。

観光客にすれ違うようなこともなく、散歩をした後カフェでコーヒーとカタラーナ(固いフランスパン?に、トマトのすりおろしと生ハムをはさんだもの。とても美味しい)を注文して、昼間からビールを飲みつつ、八百屋をのぞいてフルーツを買う。地元の人と同じような毎日を、過ごしています。

父はというと、時間を惜しむように、相変わらず、会いたかった人を訪ね歩いています。スマホも使わないしインターネットにも縁がない人なので、手書きのメモを頼りに突如家を訪ねたり、残念ながら入れ違いになったりと、なんだか手触りのある再会を果たしているようです。

この日もまた、父が帰ってきていると聞きつけて、訪ねてきてくれた何人かの友人がいました。

23歳で偶然にこの街を訪れ、自分の場所にしようと決めた父。ほどなくして、これまた偶然に旅をしていた母と出会い、家族を持つわけですが、父には若い友人もたくさんいました。そのひとりが、この日2時間かけて駆けつけてくれた彼女。45年ほど前に地元アロラに住んでいた少女は、絵を描き詩を愛する若き東洋人の住まいを訪ねては、いろんな話をしたり宿題をしたり、大事な時間を過ごしたようです。

自宅から手鏡をキラキラと反射させて父の注意を引いては、さっと窓の陰に隠れていたなんていう、淡すぎるエピソードも。

「みんなそれぞれの人生を生きている。でもね、あなたのお父さんは私にとって、muy importante(とても大切)な人なのよ。それはこれからも変わらないことよ」

たくさんの人から、時を超えて伝えられる大切な思い出たちは、私が「私の知らない父」に出会う時間でもあります。

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