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父娘、旅に出る。Day6_180917

この旅、最後の朝がやってきました。私は、名残惜しい気持ちできっとほとんど眠れなかったであろう、父の物音で目が覚めました。

そして再び、ふたりでVILLA DE ISE(≒伊勢家)へ。

2階建ての白い建物に、小さなアトリエ。そして、陶芸家の叔父もかつて作陶したという窯が備え付けられたパティオがある家です。

スペインを去り日本に暮らす中で、アロラの家を手放さずに持ち続けることは、4人の子どもを育てる両親にとって簡単ではなかった日々のことを、改めて思いました。

自分の家族が始まった場所に、いつかまた帰ってくることをずっと夢見ていた父。

でも実際は、お金も時間も、そのすべてを子どもたちに注ぎ、余裕などなかったはずです。さらには、子どもたちにようやく手がかからなくなった頃には、相棒だった妻(私にとっては母)を亡くしました。

そして、70歳を迎えた父に、アロラを再訪する気力が残っているようには、到底思えませんでした。

父も街もそして家も、25年の歳月の中ですっかり変わってしまっている。だからもしかしたら、美しい想い出のままにしておいた方が幸せなのかもしれない。
旅に出る前、お節介な娘はそう思っていました。

実際父にとって、嬉しいばかりではなく、様々な「限り」を感じた旅だったと思います。でも、屋上に上がって朝陽を浴びながら「ここにまた帰ってくる」と父は言いました。

「もう一度生きる」という意味を込めた、父の宣誓を聞いた朝でした。

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