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憎悪の時間ネズミの死姦

空っぽの一行目でカーソルが点滅し続けて既に10分が経つ。

「書くことがない事を書く」、小学生の私の常套手段だった。

小学生の作文にしては斬新な切り口(どんなに好意的に見てもカマしているだけだ)かもしれないが今の私がそんな事をしようものなら目も当てられないくらい陳腐である。

いや。待ってくれ。違うのだ。許してくれ。アカウントを作った手前何かを書かないという義務感が私を脅すのだ。助けてくれ。

む。これはどういうことだろう。このカーソルの点滅、何やら不自然でありながらもどこか規則的である。

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SOS、SOSだ。そうか。助けて欲しいのはお前も同じだったんだな。待ってろ。今、本文を入力してやるからな。

タイトルを考えないと。また名著のパロディにすればいいか。インパクトもあるし語呂も良い。

一行目は掴みのある一文にするべきだ。「メロスは激怒した」、「吾輩は猫である。名前はまだ無い。」然りだ。目の前の情景をそのまま一文目にしよう。

オチを書かないと。文中のエッセンスを拾ってお洒落に纏めよう。SF的な要素も入れたい。しかし、私がそんな事を考える必要はない。ただ明滅するカーソルの示す0と1をテキストへ変換することのみが私の役割なのだ。

考えるのはカーソルの役割である。私が彼のSOSを拾った日から彼は必死に私に何かを伝えようと点滅を繰り返す。その0と1は私の手によって意味のある文字列となって姿を表す。その姿は小説であったりエッセイであったり詩であったりする。

彼の与えた文芸は私を助けてくれたのだ。

いつか私は彼を助けることができるだろうか。


















































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