【126話】【ネタバレ】俺だけレベルアップな件【翻訳】
「架南島の魔法石の所有権を放棄する旨が記載されている覚書です」
DFNハンター協会会長のゲオは、向かいに座る後藤清臣に向けて一枚の紙を滑らせた。
「……? なぜです?」
「代わりに水篠旬さんの力を借りたい」
通訳からその言葉を聞いて後藤は苦笑して答えた
「残念ですが、彼はハンター協会所属ではありません。」
「存じております。しかし、彼は日本の協会を通じなければ連絡さえできません。 なにも彼を奪い取ろうというのではありません。
交渉の機会をいただきたいのです」
(その機会のためにこの天文学的な金額をあきらめるとは…)
差し出された書類に目を通して後藤は考える
(リューを失った今、S級ゲートのダンジョンブレイクを防ぐ力もないということか。 水篠ハンターへの報酬を考えれば悪くない交渉だと言えるが··· )
「うむ···通訳者なしに私たち二人だけで話しましょう」
「あなたは····D語が出来たのですか?」
突然D語で返答した後藤に、ゲオが驚きの声をあげる。
「私が幼い頃、父がDFNで小さな事業をしていたのでね。
ゲオ協会長。また悪知恵を企んでいるならやめた方がいい」
通訳の2人をドア横の壁際まで下がらせてから後藤の口から放たれた言葉は、ゲオを混乱させた。
「どういう意味ですか?」
「抜剣ギルドの責任をを負うことになったという噂は聞きました」
「それをどうやって···!!」
思いもよらない言葉を聞いて、ゲオはその場で立ち上がった。
「抜剣ギルドがハンター協会からの支援金を拒否し、政府支援金だけを受け取ったという話を聞いただけでも簡単に推測できます」
「抜剣ギルドは以前は、ハンター協会の手足に他ならなかった。 以前はリューを中心にS級ハンターたちを結集させることもできたが、今はそれも難しい。
抜剣ギルドが力を失い、他のギルド間での権力競争は激化。協会の統制力の無さが露呈した。そうじゃないですか?」
「今回のゲートを防げなかったら全ての責任は···」
核心をつく後藤の指摘。
ゲオは青ざめて力なく肩を落とした。
「協会長、全てあなたに全て返ってくる羽目になりましたね。 意図は不純だったが、リューも一国を代表するハンター。
抜剣ギルドからリューを失わせた責任。 自国のギルドを統制できず分裂させた責任 そして猿知恵を働こうとした責任」
後藤の手によって机の上に拳大のボックス型の機械が置かれた。
「これは···?」
「あなたたちの送受信機についていたブラックボックス。リューのチームが使っていたものです」
「私が··· 知らないと思ったか。」
まさに憤怒の表情。
架南島で、日本のメンバーを洞窟に置き去りにしようとしたDFNの目論見が、そのブラックボックスには全て収められていた。
「魔法石がどうとかいう問題以前に、これが公開されれば、あなたの浅知恵のせいで全国民が責任を負うことになるのでは?」
ゲオの顔は土気色で、額は冷や汗が止めどなく流れる。
DFNが日本を陥れ、S級ハンターを見殺しにしようとしていた事実が世界に知られれば、助けを乞うどころではない。
「しかし、そんな残忍なことをするほど、私は非情ではありません。」
後藤はゲオの目の前で、ブラックボックスを片手の握力で握り潰した。
まるで怒りをぶつけるかのように。
その勢いで来客用のローテーブルまでも真っ二つに割れた。
「1人の策略で、1つの国、いや。 アジア全体を危機に陥れることはできない」
「あなたは水篠ハンターに感謝すべきでしょう。」
ゲオを真っ直ぐ見つめ返すその眼は、侮蔑と怒りで猛獣のように爛々と光っていた。
その件の水篠ハンターはデュアルダンジョンで石像の兵士の首を跳ね飛ばしていた。
(本当に際限なく押し寄せてくるな)
次から次に襲いかかってくる石像の兵士たちのその背後には、王の石像がその巨体で待ち構えている。
王の石像の目が強烈な光を放った。
(避けるには間に合わない!こうなったら…)
(支配者の手!)
支配者の手で石像の兵士を、自身と王の石像の間に集める。
灼熱のビームが即席の盾となった石像の兵士を穿つ。
[スキル'支配者の手'が最終形態スキル'支配者の権能'に上がります]
システムが告げた文言を見返す間もなく、灼熱の炎が石像の盾を突き抜けて旬の服の裾を焼いた。
(危なかった。今の私の能力でもあれが直撃したらタダじゃすまない)
(やはり先にアイツを倒さなければならない! )
(疾走)
疾走スキルを使い地面を踏み抜き、文字通り目にも留まらぬ速さで距離を詰める。
巨大な石像が旬を踏みつけ、石畳が大きく割れた。
石像は勝利を確信し一瞬ニヤリとしたが、土埃の中自分に向かって飛び上がってくる旬を見つけるや否や両目からビームを放った。
(この線上ならすぐに死角に入ることができる!支配者の権能!)
旬は石像の肩と自分の間にロープを張るように糸状に支配者の権能を巡らせ、自分の体を引っ張り上げた。
旬の元いた場所を目からのビームが穿つ。
(すごいスキルだ。少しだけど、コイツほどのの大きさでも動かせる! スキルアップで何倍も使えるようになったな)
「乱刀」
再び悪魔王の短剣を呼び出し、顔の真横という至近距離から乱刀スキルを繰り出す。
だが、石像の顔は傷こそ付けられたが致命傷とはならず、石像は余裕の笑みさえ浮かべている。
(ある程度のものなら、全部切り裂くことのできる悪魔王の短剣ですら傷をつけるのがやっとだなんて…。)
(切れないなら、壊す! あの亀裂を狙えばいい!)
石像の巨大な顔に飛びかかり、ロッククライミングの要領で頬につけた傷に左手指を引っ掛けると、右の拳に力を込める。
膨張した腕の筋肉で服の袖が細かい布切れになって弾け飛んだ。
そのまま十字に亀裂を入れた場所に拳を叩き込む。
「ぶっ壊す!!!!」
「私の自信作をあんなやり方で相手にするとは」
天使像は戦いの様子を見ながら愉快そうに笑った。
(103レベルの力を全部注ぎ込んでやる!)
頬の亀裂に捕まったまま、全力の拳を何度も叩き込む。
そしてついに、初めて目にした時に全知全能とすら思えた巨大な石像の顔は破壊され、その巨体は地面に倒れた。
地面に降り立った旬に、他の石像達が襲いかかってくる。
[スキル'支配者の権能'を使用します]
直接手を触れることなく、全ての石像を石畳に沈める。
(今日の戦いで一段と強くなったような気がする)
旬は自分の拳を握りしめた
「素晴らしい」
天使像が拍手を贈る。
「約束は守れ」
賞賛に1ミリも表情を動かすことなく冷たく言い返す旬。
「試験は終わっていない。 ここに, 私がいるんじゃないか」
[「緊急クエスト」が発生しました。]
突然告げられたシステムからの通知。
「私が最後の試験だ。」
[決められた時間内に敵を倒すことができないと、あなたの心臓は停止します] [残り時間10分00秒]
「お前は一体何者だ」
[残り時間9分58秒]
質問に対しての答えは、天使像の口からではなく、聞き慣れた通知音によって知らされた
[その質問は愚問だと言ったはずだが]
[そうだね、答えてあげよう]
[私のことか?]
「私がシステムの設計者だ」
[ 私がシステムの設計者だ。]
「満足できる答えになっただろうか。」
[満足できる答えになっただろうか]
天使像の言葉が、そのまま通知音と共に表示された。
※ほぼ24時間遅れで申し訳ありませんー😭
次回は12日0時更新ですね!
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ただし実行は自己責任でお願いします。
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