クリシェはまだまだ続く~5度からの上行(及び上下行)~
おさらいですが、クリシェとはコードトーンのうちの一つの音を動かす技法です。今回はまず、コードの5度の音を半音で上下行させるパターン。変化する音だけを音符にします。以下の譜例はすべてコードとクリシェのラインを示すためのものなのでコードの長さは仮のものなので実際の長さは曲によって変わりますのでご了解ください。
譜例1
例としてジョン・レノンの「スターティング・オーヴァー」を。
マイナーコードの時もそうですが、5 +5 M6 +5 と上下行するパターンは繰り返すこともよくあります。ジャズの場合などは同じコードが続く時、演奏者が自己の裁量で、色々他のコードを挟んで動きのある進行にすることがあります。その時の技術の一つとしてもこれは使えます。
次に5度から7度まで半音で上行するパターン。半音で動くラインを提示します。
譜例2
この進行の例として、サザン・オールスターズの「みんなのうた」を。
この進行もよく聴く進行なのですが、探してみると完全にこのままのは思ったよりは少ない。というのは、このコード進行だった気がするなと思って検索してよく聴くと、このコード進行の
G→G#→A→B♭
というラインを生かして例えば次のようなコード進行なども多いのです。
C→E7→Am→C7
譜例3
例えばハーマンズ・ハーミッツの「There's A Kind Of Hush(見つめあう恋)」。カーペンターズのが有名かもですね。
次はこの進行のバリエーションでカーペンターズのオリジナル曲、I Need To Be In Love (青春の輝き)。
キーをCに直して書くと
C→C+5→C6→B♭/C→C7
譜例4
C7sus4→C7というのはよく見ると思いますが、B♭/CはC7sus4と同じ役割のコードです。
次はクマムシの「あったかいんだから」ですが、下の動画では基本通りのクリシェの
C→C+5→C6→C7
となっています。
しかし次の動画のアレンジでは「There's A Kind Of Hush」のコード進行と同じようになってます。ベース音の動きなどを加味するとちょっと違いはありますが(具体的に言うと「There's A Kind Of Hush」ではE7がE7/B→E7となって、「あったかいんだから」ではC7を分割してGmC7としてる)まあ基本的には同じです。
くまむしの「あったかいんだから」はネタではアカペラでやっているわけですのでコードはないのでしょうが、前者の動画をオリジナルとすると後者はそれをリハーモナイズして
C→C+5→C6→C7
から
C→E7→Am→C7
のようにしているわけですが、逆が可能なこともあるわけで、例えば「There's A Kind Of Hush」を
C→C+5→C6→C7
と弾いても違和感はないはずです。
C→E7→Am→C7
という進行自体はクリシェの概念を使わなくても説明できるのですが(セカンダリー・ドミナント)、多分もともとはこのクリシェの進行が先にあってそれをリハーモナイズして出来たものなのではないかと思います。知らんけど。いずれにしても代替可能なことが多いということです。
ところでこの記事を書くに当たり色々検索してると下記のページに行き当たりました。
この中でこのサイト主の自作の曲での使われ方として下記のようなものがありました。
この進行でも譜例1と同じラインを見つけられます。
譜例5
もちろん全く問題ないのですが、個人的にはそれほど見たことがないかもしれません。曲例を他に知ってる方がいたら教えてほしいです。ちなみに下記のような曲(We Want Our Daddy Dear, Back Home (Hello Central, Give me France))がありますが、augは一瞬の経過的に出てきてるだけなので上記のものと同一のものと考えるべきなのか迷うとこです。まあいずれにしても不自然というわけではないのですけど。
ところでクマムシの曲でC+5とE7が代替関係になってますが、こちらの方がよく聴くような気がします。
譜例6
Fの後にFmが来てもいいのですが、他のコードが来ることも多いので敢えて省きました。E7からF(Ⅲ7からⅣ)というのはよーく見かける進行ですが、どういう理屈なのかは色々な考え方があるようです。
今回はクリシェ自体以外についても言及しました。この話題はもっと書きたいことが多いのですが、クリシェの解説としては逸脱しすぎてしまうのでこれで終わります。クリシェについては次回でとりあえず最後にする予定です。
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