22.皇子の謀反

私たちが遅くに城に戻ると、城内が慌ただしかった。

侍従官を呼び止めて訳をきくと「皇子が謀反を!」という。

誰もかれもひどく動揺していた。

皇子と若い将校10名が王の寝室を占拠し、譲位を迫っているという。

「どうか皇子をお諫めください。皇子はとてもお優しい方なのです。」

王の寝室の前まで来た私たちに皇子の乳母が膝をついて懇願する。

「茶番だな。」パトスが独りごちた。

「あなたがけしかけたようなものじゃないか?」

私がいうと、パトスは鼻をフンっとならして不敵な笑みを浮かべた。

「オキニス皇子、ここを開けられよ。パトスが参った。」

「他人の家庭のことに口を出すものではないぞ!」

中からオニキス皇子が答える。そうとう興奮しているようだ。

「皇子よ、あたら王たるものは玉座によって成るものではありませぬぞ。

乳母を泣かせるような者が臣民の支持を得られるとお思いか?」

「バカにするのか!乳母の乳を飲んでる子供と言いたいか!?」

「そうではありませぬ。処世訓を言っておりまする。

よく考えなされ、下克上で得た権力は、力で奪われまするぞ。

信任のない権力など飾りにすぎぬ。その力を欲するものが刃を向ければ、

玉座など誰にでも襲うことができるもの。」

「私は皇子である。正当な王位第一継承者であるぞ。」

「貴国の王位はかつて3代前の王が弊国ディコーラム前王と共に、

蛮族の王と干戈を交え、血盟のもとに築いたもの。その信頼関係は厚く、

交友も温かかったが、現王の時代になり、魔王の跳梁を許すこととなり、

交易も疎遠となり古きを懐かしむよすがもありませなんだ。

しかし、ことここに至り、改めてお諫め申す!

建国の理念を思い出されよ。聖王と呼ばれた前王がこの地を拓かれた、

その理念をこの国の民はお忘れか?」

一瞬の静寂のあと、扉が開いた。皇子が顔を出して、無言で中に招いた。

私はパトスと共に中に入った。

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