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旅先の食事は「食べログではなく直感」に頼る

ソロ温泉や温泉ワーケーションに限らず、食事は温泉旅の楽しみのひとつだ。せっかく遠出したのだから、その土地ならではの逸品に舌鼓を打ちたい。

では、どうやってお店を探し当てればよいか?

多くの人がネットの情報を頼りにする。なかでも大手グルメレビューサイト「食べログ」の存在感は抜群である。飲食店を探すときは「とりえあず食べログを開く」という人もいるだろう。

だが、必ずしも食べログに正解があるとはかぎらない。自分の直感を信じてお店を選ぶのも、旅の楽しみである。

食べログは信用できるか?

宿泊する宿に食事がついているなら、もはや身を預けるしかない。宿選びをした時点で、勝負はついている。

だが、素泊まりで滞在するときは、何を、どこで食べるか自分で決める必要がある。もちろん、朝食やランチも同様である。

このとき、多くの人はネットの情報を頼ることになるが、ほぼ必ず検索結果として表示されるのが食べログのサイトである。

食べログはユーザーの評価が星やランキングの形で表示されるので、とてもわかりやすい。

私も食べログで飲食店を検索することはあるが、ほとんどは都市部の飲食店の場合である。都市部の店舗はユーザーのレビュー数も多いので、新店でないかぎり、星の評価と店舗の実力はおおむね一致する傾向にある。だから極端な話、「星3.5以上なら間違いない」といった判断も可能になる。

だが、地方の温泉地では、食べログの評価はあまりあてにならない。

まず、都市部の店舗に比べてレビュー数が少ないので、星の評価をそのまま信用するわけにはいかない。レビュー数が少なければ、星の評価もブレやすい。また、口コミの数も少ないので鵜呑みにはできない。

そのうえ、観光地の店舗だと地元の人が応援の意味で評価を高くすることもあるし、旅という非日常の空間で食べたものはポジティブに認識されやすい。

極端なことをいえば、都内の飲食店と同じレベルのものが出てきても、旅に来ているという非日常性がスパイスとなり、高評価につながりやすい。つまり、旅先で食べるものは、「わざわざここまで来たのだからおいしいに違いない」というバイアスがかかりやすいのだ。

だから、私は地方の温泉に行くときは、ネットの情報も頼りにはするが、食べログはあまり参考にしていない。利用するのは、営業時間や定休日、地図を調べるときくらいである。

「行き当たりばったり感」も旅の醍醐味

食べログに頼らなくても、ネット上にはたくさんの情報が眠っている。個人のブログを丹念に拾っていくという手もあるし、インスタ検索で気になったお店に狙いを定めるという方法もある。

もちろん、どの方法も否定しないし、私自身もある程度はネットを通じて情報を拾っている。

たしかにネットで情報を検索するのは便利だが、弊害もあるように感じる。それは、旅の醍醐味である行き当たりばったり感が薄れてしまうことだ。

ネット検索をして情報を頭に詰め込んでから食べにいくと、どうしても「確認行為」になってしまう。「ネットで見た通りおいしかった」と。私も一時期、ネットで事前に調べまくっていたことがあるが、「おいしかった」という印象のみで、あまり思い出として残らない。

だから私は、食事選びに関しては旅の行き当たりばったり感を大事にしている。ネット検索では、その土地の名産を調べるくらいにとどめて、あとはできるだけ自分の感に頼るようにしている。

その温泉地で蕎麦が名物であれば、いくつかの蕎麦店の店構えを見て決める。言葉で表現するのは難しいが、私なりに「この店はおいしいだろう」となんとなく察しがつく。

あえて具体的に言えば、店舗が大きすぎず、看板などがごちゃごちゃしておらず、少し控えめな店である。でしゃばりすぎず、「味で勝負しています」という心意気が伝わる店構え、とでも言おうか。

もちろん、直感が当たることもあれば、外れることもある。直感が当たれば、それを食べたときの感動は大きくなり、記憶にも刻まれる。

反対に外れたとしても、その場では後悔するものの、長い目でみれば忘れがたい旅の思い出となる。旅は失敗も含めて愉しむものである。

「直感」が外れても旅の一コマになる

ある大きな温泉街で、直感的に「ここは間違いない」と思った小料理屋に飛び込んだときのこと。

職人ぽいご主人が一人で切り盛りする店内は雰囲気もいいし、お品書きには注文したくなる品がいくつも並ぶ。すぐに「当たり」だと勝利を確信した。

ところが、主人の低い声で事態は一変する。

「お客さん、お品書きは手で持たないで!」

なにやら怒っている様子。私はわけもわからずに固まっていると、「油や水が飛んでお品書きが汚れるから、カウンターに置いたまま見てって書いてあるでしょう」とご主人。

たしかに、そんなことがお品書きの最初のページに書いてあった。見落としていた。

その店は調理場とカウンターの間の敷居が低く、ご主人と客の距離が近い。カウンターの目の前で調理のために水や火を使うため、油や水がはねる可能性があるというわけだ。

だとしたら、お店のつくりに問題があるし、お品書きに水や油が飛ぶということは客にも飛んでくるということ。お品書きが汚れるのはイヤだが、客が汚れるのは構わない、ということか。

この時点で、私は一気にテンションが下がってしまった。早く帰りたい。注文した料理はたしかに味はよかったと思うが、何を食べたか、どんな味だったかはまったく覚えていない。食べ終わったら、そそくさと店を出た。

その直後は、その店を選んだことをひどく後悔したが、今振り返ると、旅先での忘れられない思い出のひとつになっている。現にこうしてネタにしているし、「こんな失敗をしてさあ・・・」と話のタネとしても使わせてもらっている。

変な言い方だが、無難においしい食事よりも、旅の貴重な思い出として記憶に刻まれている。脳は、よくも悪くも予想外のことに喜びを覚えるようだ。

自分の直感に頼ることはリスクもあるが、トータルでみれば得られるものが大きい、というわけだ。

観光案内所で情報を聞き出す方法

「自分の直感に自信がない」という人には、観光案内所などでおすすめのお店を聞いてみるという方法もある。

飲食店一覧のパンフレットなども置いてあったりするので、立ち寄って損することはない。

ただ、尋ねるときは注意が必要だ。「おすすめのお店はありますか?」と訊くと、観光案内所の人は「ここも、あそこも」といくつも紹介してくれる。観光協会に加盟している店舗は平等に扱わなければならないので、「私はここ一択です」とズバリとは教えてくれない。

だから、こちらからある程度範囲を狭めて訊くことが大切だ。「地の食材を食べたいのですが・・・」「蕎麦が名物と聞いたのですが・・・」とジャンルを絞る。そうすれば、案内する人の本音にも迫りやすくなる。こうした駆け引きも旅のエッセンスとして愉しみたい。


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