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絶景温泉200#1【洞爺湖温泉・洞爺いこいの家】

新しくスタートした連載「絶景温泉200」。著書『絶景温泉100』(幻冬舎)で取り上げた温泉に加えて、さらに100の絶景温泉を順次紹介していこうという企画である。

記念すべき第1回は、地元・北海道が誇る有名温泉地「洞爺湖温泉」(北海道)だ。

2008年にサミット(主要国首脳会議)の舞台にもなった洞爺湖は、11万年前の火山活動によって生まれたカルデラ湖である。

風光明媚な観光地として人気を集めているが、その風景を特徴づけているのは、湖の中央に鎮座する「中島」の存在だ。「大島」「観音島」「弁天島」「饅頭島」の大小4つの島からなり、湖面に浮かぶように横たわる姿が独特の景観をつくりだしている。

「中島」を形成したのも火山の仕業である。11万年前の火山活動によってできたカルデラ湖の真ん中で、5~4万年前に再び噴火が起き、粘り気の強い溶岩が繰り返し噴出。その結果、いくつもの溶岩ドームができた。これが現在の「中島」である。

湖の南側に湧く洞爺湖温泉も火山活動の賜物である。湖畔の温泉街には、大自然の営みがつくりだした洞爺湖の風景を眺めながら入浴できる旅館やホテルが並ぶ。露天風呂から見る洞爺湖は、まさに絶景といえる。

だが、私が「絶景温泉」として推したいのは、温泉街の対岸にある。町営の日帰り温泉施設「洞爺いこいの家」だ。外観はひと昔前の公共温泉といった風情。いたって地味である。

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浴室も、内湯とカランだけのシンプルなつくりであるが、脱衣所の扉を開けると、意外な光景に目を見張る。大きな窓ガラス越しではあるものの、洞爺湖を一望できる。

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高台に位置し、中島との距離も近いので、温泉街から見る景色よりも迫力がある。中心にどしりと構える中島はまるで巨大な魚の背びれのようで、今にも動き出しそう。まるで一枚の絵のような美しさだ。

内湯の場合、どれだけ景色がよくても、浴室のガラスが曇っていたり、汚れたりしていて、がっかりするケースが多い。だが、手入れが行き届いているのか、窓越しでも十分に絶景を堪能できる。

中島の奥には温泉街と有珠山も見える。有珠山といえば2000年の噴火が記憶に新しい。1663年以降、火山活動を活発化させ、定期的に噴火を繰り返してきた。2000年の噴火は、温泉街から目と鼻の先で噴火したにもかかわらず、一人の犠牲者も出なかった。前兆地震が観測され、事前に住民が避難できたからである。 噴火の前に必ず前兆地震が起こることから、「噓をつかない山」ともいわれている。

湯の状態もいい。温泉街の源泉は褐色に濁っているが、洞爺いこいの家の湯は透明で、さっぱりとした入浴感。泉質はナトリウム・カルシウム-硫酸塩・塩化物泉。しかも、源泉かけ流しである。

実は、温泉街の旅館やホテルは循環ろ過されている湯船が少なくない。源泉かけ流しの湯船もあるが、源泉と景色、両方とも高いレベルで満足できるのは、洞爺いこいの家のほうである。

絶景に見とれていると、つい長湯になってしまう。のぼせないよう注意が必要なのは言うまでもない。

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