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寄付は怪しい? 寄付の “中抜き” について説明します

ジャンルを選んで寄付するsolioの代表の今井紀明です。先日嬉しいことがあったのですが、僕が代表を務める認定NPO法人D×P(ディーピー)へ幼馴染たちが寄付してくれました。

「活躍見ていたら、寄付したくなってしまったよ」と小中の同級生たちが言ってくれて。10期目を迎えたNPOでお願いもしてもいないのに寄付してくれたことが驚きとともに嬉しさもありました。特に地元の友人たちとってはNPOとは馴染みの薄いもの。「NPOってよくわからないけれど、応援するよ」と言ってくれて「信頼が少しずつ積み上がってきたのかもしれない」と思えた瞬間でした。

ただですね、年末にこちらの記事を書いたら引用RTやリプ欄に「NPOは中抜きしているし、信頼できない」というコメントの嵐がきました汗

「中抜き」、つまりNPOに寄付した時に直接支援する物資やお金になるのは一部しか使われず、人件費やその他の経費に使われるなど、そういったことが多くあって信頼できない、ということを多くの人が思っているということです。

NPOへの信頼感は増しているのか

ここで一度、NPOへの信頼について考えてみましょう。

僕が代表を務める認定NPO法人D×P(ディーピー)は寄付がこの1年強で2倍近くになっているので確かに信頼感は増えてきてるかもしれませんが、NPO全体では実際にどうなんだろう、と思うことがありました。年末に取締役の桂に指摘されたのは「個人寄付自体は増えているが、NPO法人自体への寄付が増えているかは怪しいんじゃないか」と言われ。

個人寄付に関しては増えてきているという調査があります。

20年の日本の寄付市場について、同協会は日本全体の個人寄付総額を1兆2126億円と算定。前回調査(2016年1月〜12月)の個人寄付総額7,756億円と比較して、約1.5倍と大きく増加した。増要因に「ふるさと納税」の寄付があり、2016年と比較すると、ふるさと納税を除いた個人寄付総額は16年が4912億円、20年が5401億円、ふるさと納税に限定すると16年が2844億円、20年が6725億円となった。ふるさと納税の影響を除外しても個人寄付総額は拡大傾向にあると同協会は見る。

明らかにふるさと納税の方が伸びています。それ以外の個人寄付総額は微増、しかもNPO法人単体だとわからない。

日々のニュースを見ていると、自治体への寄付へのニュースばかり見る日々を考えると、そこまで増えていなんじゃないか、NPOへの信頼って増しているのだろうか、という疑問が出てきました。寄付先に選ばれなくなってしまってはいないだろうか、と。

「中抜き」を無くすサービスも

こうした中、お金配りで有名な前澤さんが新しいサービスを立ち上げました。

これは今までできなかった個人間のダイレクト寄付ができるという面白いアプリです。いわば、直接支援。個人でチャレンジしたい人や困窮している人にダイレクトに支援できる仕組みです。

そのため、個人で誰かに「支援をしたい」と思ったときにプロジェクトを立てるハードルが下がりました。純粋に困っている人に直接寄付ができたりすることができるのは、便利だし個人が社会に貢献しやすくなったとも言えるでしょう。

そして、当然このサービスが立ち上がった時に聞こえた声として「これでNPOによる中抜きがなくなる!」というような声でした。

冒頭で話した通り、「中抜き」は批判もあって、当初は国連やユニセフなど国際協力機関に寄付する際に日本では数十年前から言われてきたことでした。

NPOが寄付をうまく使うことで効果的に成果をあげることもできる

日本だと寄付を人件費に使うということが「けしからん」という言葉は僕も10代で様々なNGOに関わっていた時から聞いていました。

ただ、実際にNPOの経営をしてから思いますが、事例としてお金だけの支援で困窮している若年層支援が成り立つかというと、それでは成果の出る支援になりづらい可能性があります。

「10代の孤立を解決する」NPOとしてD×Pも現金給付支援をコロナ禍で約2800万円ほど給付していますが、お金だけで一人暮らしで親に頼れない子どもたちの現状を解決することは難しい。なぜならば、困窮している状態の若者は複数の問題を抱えているからです。問い合わせの時点で滞納や借金が6割、また精神疾患を長いコロナの影響で抱えていたり、仕事を探す必要があったり、その時点で公的支援の申請を自分でしなければいけない状態であったり。そこには誰かに相談して、一緒に問題解決に向けて動く必要があります。相談に乗りつつ公的支援につなげることや就職までサポートしていかなければD×Pの出している成果は出なかったと断言できます。

批判の言葉でいえば「中抜き」と呼ばれるかもしれませんが、それが正当な人件費で支援で成果が出ているならば、私は人件費をかけて支援することは大切なことだと思っています。

(2021年度の人件費率は5割ほどに現状はなっています。古い記事ですが、上記は財務諸表を見ながら解説記事を書いているので、より詳しく知りたい方は読んでみてください)

僕はNPOが重要な活動を様々なジャンルで活躍していることを知っています。子どもの教育分野では政府の対応が遅いときに対応していったり、困窮者支援では皆さんもよく知っているような年末の炊き出しなどの食糧支援、環境問題では様々な政府に対して環境のNPOやNGOが声をあげていたり。

そういった国家や企業がどうしても解決に動けていない、また課題すら発見していないような社会課題を発見して解決に向けて活動する、声をあげるNPOの存在は貴重です。

個人間のダイレクトの寄付も良いと思っています。ただ、僕は同時に現金だけの直接寄付は自己責任論を助長しそうで懸念もあって、NPOが活動する意義がここにあるような気がしています。

「中抜き」と批判する人に伝えたいこと

福祉の分野で言えば、本来支援とはお金だけではなく人との関わりで話を聞いてもらい受け止め、仕事や生活など一緒に考えるもの。お金だけ渡して「できないならば、あなたが悪い」にしたくないですよね。お金だけ渡して「はい、頑張って」は支援や福祉を切り捨てたものになると思ってます。


NPOの存在価値ってそこにあると思っていて、寄付型でも人件費はかかるし、寄付した金額全てが現金給付や食糧支援などの支援になるわけではないです。しかし、そこに人が関わるプロセスがあるから、良い支援ができると。

だから、NPOに寄付する意味はある。お金だけではない、様々な支援ができるから。もちろん、寄付されたお金をできる限り無駄なく、効率的に使う必要があると思っています。

しかし、「中抜き」だと考えているだけでは支援も進まず、またNPOが成長する機会も失っていくでしょう。僕が代表を務めるD×Pもスタッフが業務委託合わせて20人以上いますが、寄付が増えていくことで支援がより多くできるようになり、組織の様々な制度が充実かできたり、幅広い人材募集ができるようになってきました。

NPOを育てていくことは、繰り返しになりますが、政府や企業がどうしても課題解決できないことに声をあげ、解決していく仕組みを作っていくことにつながっていきます。政府ができないならば、自分たちで社会を作っていくことをができることを育てられます。

そのことを一緒に考えることができたら、と僕は思います。


最後に。ジャンルを選んで寄付するsolioをなぜ作ったのか。そこには自分のNPOだけではなく、多くのNPOに寄付が集まる環境を作っていきたいという想いがあるからです。

寄付に関心持っていて「寄付したいけど、寄付先がわからない」という方も多い、というのは別のnoteでも話しました。

多くのNPOが現場や政策提言などで奮闘する中、もっと資金的なリソースがあれば、と思っています。継続の気風だけだと年間500万円ぐらいの寄付ができるぐらいですが、solioがきっかけで個人から数十万、数百万単位などもつなげることができて、うれしいものです。

自分たちで自分たちの社会を作る。それは寄付からもできます。一緒に考えることができれば嬉しいです。

今井 紀明

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