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冬の日本海廻りで行く、東日本一周秘湯巡りの旅

 予め決められた旅程やツアーで行くよりも、自分の地理感覚と時刻表を頼りにつくるオリジナルの旅が好き。 12日深夜家を出る。快速電車で日付まわって翌13日水曜日。東京駅八重洲口。深夜、喫茶店で珈琲とホットサンドを注文。仕事をしながら始発の新幹線を待った。

駅まで少し歩いて05:30に指定席券売機できっぷを発券。一つ目の改札を抜け、05:40頃に新幹線改札を通り、エスカレーターを上がって、20・21番線ホームに着くと、ホームは人々でごった返していた。3月の少し肌寒い風を感じながら自販機でホットコーヒーを買い、1号車の自由席列で待った。隣のやまびこ51号盛岡行きの自由席列は絶対に座席に座りきれないほどの人が並んでいる。先に、隣のホームにメタリックグリーンに桜色のラインが入ったはやぶさ号が入線し、その数分後に自分が乗車する新幹線が入線した。

上越新幹線グリーン車
さらに上のグランクラスもある。

 東京06:08発上越新幹線とき301号新潟行に乗車して上越方面へ。東京・上野駅の時点では空席が目立っていたが大宮から乗車率120%くらいに。18番線ホームから大量の通勤客が乗ってきてやがて全席埋まり自由席はデッキや通路に人が溢れた。隣にも人が座ってきて、パーソナルなスペースが無くかなり不快感を感じた。トイレに行くことも難しく身動きがとれなかった。たぶん、大宮から次の停車駅である高崎まで混雑が続きもしかしたら終点新潟までこの状況だ。通路に立つ人々の間を抜け、3-4両分なんとか移動。車掌さんのいる号車までなんとか辿り着いた。大宮-高崎間で座席に座っている際に、ネットで空席照会をして指定席は満席なのを知った。グリーンは半分くらい空いていることを知った。車掌さんに「自由席からグリーンへ変更したい。」とお伝えした。お二人とも驚いていた。グリーン車の快適・静寂性とストレスの無さはお金に変えがたい。仕事や電源も確保できるので、自分にとってはこっちの方が大事だ。高崎を出る前に着席できた。残り1時間と少しの時間ゆったりとして気を休めた。長いトンネル(清水トンネル)を抜け新潟県南魚沼へ出るとまさに雪国だった。川端康成の声で冒頭が脳内再生された。

上越新幹線の車窓から。
「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。」
『雪国』川端康成 著

 定刻通り新潟駅に到着。在来線とのリレー方式なので対面ホーム乗り換え。しかし、ホームに人が溢れ返ってとんでも無いことになっていた。乗りきれない程の人で自由席は立ち客でごった返した。乗るか乗らないか迷ったが発車ベルと同時にグリーン車の先頭車に飛び乗った。羽越本線・特急いなほに乗車。08:22新潟駅を定刻通り発車。7両編成でこちらも推定150%の乗車率。秋田まで約3時間半。自由席の人々は終点まで立って行くことになるだろう。

羽越本線・特急いなほ
車窓から冬の荒れた日本海を望む

 車窓を眺めながら珈琲を飲んだり、カウンター席でうたた寝をした。冬の荒れた曇天の日本海沿いをひたすら走り抜ける。秋田に到着したのはちょうど正午。駅ナカでぎばさ蕎麦を食べたり、買い物したりして夕方まで時間を潰した。16:17発秋田新幹線こまち号東京行で田沢湖へ。こまちも1時間に一本しかない。普通列車は一日数本。車内を不安そうに見つめながらお見送りする人、この春新幹線で上京し一人暮らしをはじめると思われる18歳くらいの女性、出張できたサラリーマンなど、様々な人々の思いをのせていた。

田沢湖駅の跨線橋から

 ちょうど1時間くらいで田沢湖駅に到着。わりと立派な駅舎だけど人がまばら。春の融雪。足元は水分を多く含んだ湿ったぐちゃぐちゃな雪で覆われたロータリーを足早に、到着後約8分の短い乗り換えで乗合路線バスに乗車。3月中旬でも東北の辺境は冬の厳しい雪山だ。チェーンをつけた中型バスが田沢湖湖畔を経由して、ひたすら雪山を登る。バス停と言っていいかよく分からないほど雪道の真ん中で下車。旅館最寄りのバス停に着いた頃にはちょうど日が暮れかけていた。

あやうく一つ手前で降りそうになった。
運転手さんに教えてもらった。

 降り積もって除雪が追いついていない街灯がまばらな暗い雪道を10分くらい歩いた。なぜか、ドイツ・ミュンヘンの光景がフラッシュバックした。もし降りる場所を間違えたり、バスがスリップして崖から落ちたり、何かの手違いで宿が予約できていなかったら、雪山で野宿するかもしれない、という緊張感があった。でも、こういう旅が好きだ。チェックインを終えいったん旅館の部屋へ。少し休憩してレストランへ。豪華な山の懐石料理を頂いた。

旅館の夕食[懐石料理]
これで半分。

 2日目。07:00頃起床。たぶん、自分ともう一組くらいしか泊まっていないといった雰囲気と人気の無さだった。こんなオフシーズンにこんな東北の秘境に行く人はちょっとおかしい。だからいい。

はだけた浴衣を着直して、エレベーターで旅館の一階へ。客室以外暖房されておらず氷点下。内風呂も露天風呂も貸切だった。硫黄で湯の花が広がる源泉掛け流しの半露天風呂。床も天井も壁もすべて木製。木の温もりがあって安らぐ。加温も加水もされてなくて、外気によって冷やされて。

露天風呂は40℃くらい。

 フロントで10時にチェックアウト。自分だけのために宿の方が送迎バスで最寄りのバス停である「アルパこまくさ」まで送ってくださった。

バスを乗り継いで田沢湖湖畔へ。一旦、下山した形になるがこれからまたさらにバスを乗り継いで登山する。乗り換え時間約20分。湖を散策した。冬の東北・秋田の山奥は本当に気候が厳しいが、日本の良い自然が残っている。冬季は店がやっていない。人があまりいない。

田沢湖からさらに雪山をバスで登ること約30分。最深部の「蟹場温泉」へ。とんでもない場所に来てしまった。生半可な気持ちでこんな山奥に来てはいけないとさえ思った。夏季ならまだマシだが冬季の雪降り積もる時期はやばい。ある程度の水や食料を蓄えておく必要がある。一歩間違えれば、遭難しそうだ。温泉の建物に入って、まず内風呂へ。こじんまりした木風呂に入った。その後、いったん外に出て細い雪道を下り、5分くらい歩いて小川が見えると突如、開放的な露天風呂が現れた。「こんな場所があるのか!」と心底驚いた。

雪山の混浴露天風呂
[蟹場温泉・唐子の湯]

 先に入っていた会社員らしきおじさん3人組が入れ替わりで居なくなって貸切に。大自然の雪山で入る源泉掛け流しの天然露天風呂に入る贅沢を味わった。

風呂から上がってお昼過ぎ、宿のフロントで1時間くらい路線バスを待った。いったん山を下って、また山を登る。東北・秋田の名湯「鶴の湯」へ。江戸時代から続く伝統ある秘湯。ここは観光客がいた。意外と同年代の男女の利用も多かった。雪山の混浴露天風呂が本当に素晴らしかった。途中から雨がポツポツ降ってきてさらに趣が増した。

秋田・乳頭温泉郷「鶴の湯」

15:40の最終送迎バスで下山。乗合路線バスを乗り継いで田沢湖駅へ。時間を持て余したので乗車変更して17:35の秋田新幹線こまち39号東京行きで東京へ。一泊二日・東日本一周の旅、完。

到着した上野駅では早咲きの桜が満開だった。

上野恩賜公園の夜桜。



今回のルート。

冬の日本海廻りで行く、東日本一周の旅。

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