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快速急行、運ぶ春の風。

 この街に住んで2回目の春が去った。他人の人生を生きるほどの暇はない。反対してくる人、トヤカク言ってくる人、冷笑する人たちを押し退けて、心で「うるせぇ!」と言い放ちながら、逆方向に全力疾走し、書面にサインした日から休学2年経った。自分を肯定してくれる人は、誰ひとりとしていなかった。でもいま、周りにはたくさんの友人や仲間たちがいる。1年間に何百人もの人と会って話をした。仕事をした。様々な場所へ行った。連れて行ってもらった。夢のような場所まで行った。ものすごい成長を実感した。

複々線の真ん中、急行線を通過する電車がスピード感をもって春の風を吹かせた。ひらりと桜の花弁がプラットホームに舞った。新宿まで持って行きたかった花びらは、あしもとに一枚、西陽が照らした。

季節とともにあった気持ちが段々と移いだ。土曜の弱い日差しがカーテンにディフューズされるのはあのときのようだなと思いながら横たわっていた。案の定浅い睡眠になって悪夢を見た。記憶は水で薄められたみたいに滲んでいった。虚ろな半目で数十分、時報が聞こえて三時だとわかった。なぜかあの時々の病床からのあの景色が想起された。夕景を眺めながらゆらりと下北までチャリを漕いだ。内側で燃え続けているもの。挑戦し続ける。快速急行が止まらないこの街で、次の春を想像している。


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