低酸素ジムを2年間経営してみて感じたこと
【はじめに】
✔️低酸素ジムとは?
低酸素ジムは、酸素濃度が通常よりも低い環境でトレーニングを行うジムです。通常、私たちが暮らす標準的な環境では大気中の酸素濃度は約20.9%ですが、低酸素ジムではこれを15%前後、時にはそれ以下に設定することが一般的です。この低酸素環境は、標高2,000メートル以上の高地に相当し、登山や高地トレーニングを模倣した環境で運動を行います。
低酸素トレーニングの最大の特徴は、酸素が不足している環境で体が効率的に酸素を使おうとするため、より短時間で持久力や筋力、回復力を高められる点です。
この低酸素ジムを2年間経営してきて感じたことや、得た教訓、そして将来的な可能性について、詳しくお話ししていきます。
✔️日本国内の低酸素ジムの状況
日本国内における低酸素ジムは、まだ新しいコンセプトであり、全国的に数が限られています。しかし、フィットネス業界における注目度は年々高まっており、特にアスリートやランナーの間では徐々に認知が広がりつつあります。
全国的に、低酸素トレーニングを提供するジムが増えていますが、普及にはまだ課題があります。
低酸素トレーニングは、アスリートにとっては持久力向上や回復力の強化などで効果が実証されているものの、一般のユーザー層にはその有効性がまだ十分に浸透していません。また、低酸素環境を再現するための設備には高額な投資が必要であり、ジムの設立や運営には相応のコストがかかることも、普及の障害となっています。
運営の困難さから毎年閉店を余儀なくされる施設も少なくありません。
酸素濃度を管理するための専用設備や技術、さらに認知度の低さが課題となり、運営コストが高いために収益を維持するのが難しい状況です。そのため、全国的な施設数は増加することなく、ほぼ横ばいが続いています。
【集客の壁】
✔️認知度との戦い
低酸素ジムを運営する上で、最大の課題の一つが「集客」です。
特に低酸素トレーニングそのものの認知度が低いため、そのメリットを効果的に伝えることが難しく、集客に直結しないことが多々あります。
低酸素ジムの認知度を把握するためには、まず市場において「どれだけ検索されているか」という指標が重要となります。
Google検索のデータを活用すると、同じフィットネス分野である「パーソナルジム」「ヨガ」「ピラティス」と比較して、低酸素ジムの検索数がいかに低いかが明確にわかります。
Google検索データをもとに「パーソナルジム」「ヨガ」「ピラティス」と「低酸素ジム」を比較すると、ピラティスやヨガは、月間数十万回単位で検索されるのに対して、「低酸素ジム」はその100分の1、あるいはそれ以下の検索数にとどまることが多いです。
この検索数の差は、単純に認知度の違いを表しており、低酸素トレーニングがまだ一般的なフィットネスとして浸透していないことが原因と考えています。これにより、Web検索からの新規顧客獲得も難しくなり、集客の壁となっています。
✔️コンセプトとターゲット層
低酸素ジムの運営において、コンセプト設計とターゲット層の選定は非常に難しい課題です。低酸素トレーニング自体は幅広い効果を持ち、一般の人々にも適している手法であるにもかかわらず、現実としてターゲット層は持久系アスリート、特にランナーやサッカー選手などに限られているのが現状です。
この狭いターゲット層は、低酸素トレーニングが持久力強化に特化しているという認識が強く、他のフィットネス目的(健康維持、体重管理、ストレス解消など)には適していないという誤解が広がっているためです。
実際には、低酸素トレーニングは短時間で効率よく効果を得られるため、一般の健康志向の方や、忙しい現代人にとっても理想的なフィットネス手法であると言えます。
しかし、これを伝えるためのコンセプト設計が難しく、単に「持久力向上」や「アスリート向け」といったメッセージに留まってしまいがちです。
その結果、集客の幅が広がらず、特定のターゲット層に偏ってしまうことが課題となっています。
✔️顧客満足度の可視化
低酸素トレーニングは、細胞レベルでの負荷を通じて、ミトコンドリアの活性化や心肺機能の向上といった効果が期待できます。しかし、これらの効果は短期間で目に見えるものではなく、定量的に数値化することが難しいのが現実です。たとえば、心肺機能や筋力の向上は体感できるものの、具体的な変化を数値で証明する手段が限られているため、顧客満足度を可視化しにくいという課題があります。
通常のトレーニングであれば、体重減少や筋力の向上といった目に見える効果を数値で確認できるため、顧客自身もその効果を感じやすいですが、低酸素トレーニングでは、ミトコンドリアの活性化や心肺機能の向上といった内部的な効果が中心です。
そのため、トレーニング後に効果を実感するまでの時間がかかり、短期間で目に見える変化を求める顧客に対しては、満足度を視覚的に訴えるのが難しくなっています。このような効果を数値化できないことが、顧客が即座に満足感を得ることを妨げ、集客やリピーター獲得の壁となる場合が多いと考えています。
【低酸素の効果を実感】
✔️自分自身での体感と変化
約2年間の中で、もちろん自分自身でも定期的に低酸素トレーニングは実施してきました。頻度としては週に1〜2回のペースで1回30分間、内容としては主にインターバル(ダッシュ&ウォーク)による低酸素トレーニングを続けた結果、身体への変化が現れてきました。まず、体重は約7kg減少し、体脂肪率も約5%減少しました。体型はスマートになり、見た目にも大きな変化が現れたと感じています。
体型だけではなく、身体がとても軽く感じ、疲労感を感じることがかなり減りました。体力がついたおかげか、普段の生活でもエネルギーが増えたように感じています。
✔️お客様からの声
ジムに通われている会員様とのコミュニケーションを通じて、低酸素トレーニングの効果について多くの成果を知ることができました。ヒアリングを行う中で、体重の減少や体脂肪率の低下だけでなく、持久力の向上や日常生活における体の軽さを実感されている方が多いことがわかりました。
たとえば、ある会員様は、週に数回のトレーニングを続けたことで、普段のジョギングや階段の上り下りが驚くほど楽になったと話してくれました。また、別の方は、トレーニングを始めてから疲れにくくなり、運動後の回復力が格段に向上したことを実感しています。これらの声から、低酸素トレーニングは外見の変化だけでなく、持久力や体力の向上、疲労回復の速さといった内面的な効果も強く実感できるということが分かりました。
【マーケティング戦略の成果】
私の運営する「高地トレーニングスタジオSOLERA」では、店舗に特化したマーケティング戦略と手法を私自身が徹底的に学び、それを実践してきました。その結果、多くの成果を得ることができましたので、その一部をお伝えします。
✔️2つの日本一を達成
SOLERA独自のマーケティング戦略を展開した結果、2つの日本一を達成しています。1つは「公式LINEのお友達登録人数」、もう1つは「Googleマップの口コミ投稿数」です。これらの指標において、日本全国の低酸素ジムを調査した結果、SOLERAが日本一であることを確認しています。(2024年9月現在)
①公式LINEのお友達登録人数
公式LINEの運用は、顧客との関係構築に大きな影響を与えると考えています。会員様との直接的なコミュニケーションを容易に可能にし、キャンペーンやイベント告知、アップセル・クロスセルとして販促のアプローチを行えるプラットフォームとして機能しています。この登録人数が全国の低酸素ジムの中で最も多いという実績は、SOLERAの集客力を証明する大きな成果であると自負しています。
②Googleマップの口コミ投稿数
Googleマップにおける口コミ投稿数でも、低酸素ジムの業態では日本一の投稿数と評価を得ています。お客様からの信頼と満足度を示すこの口コミの数は、MEO施策の観点で新規顧客を惹きつける重要な要素であると考えています。
これらの2つの日本一という実績は、単なる数字ではなく、集客に非常に大きな効果を生み出しています。公式LINEでの定期的な情報発信や、Googleマップでの良質な口コミの蓄積が、新規顧客の獲得と既存顧客のリピートを促進しているのです。
✔️価格とサービスのバランス
SOLERAは、最近流行している格安ジムや24時間ジムとは異なり、ブティック型ジムとして少しだけ高めな価格帯でサービスを提供しています。このため、価格に見合った価値をどのように訴求するかが大きな課題でした。
特に、低酸素環境だからこそ得られる時短効果が強みであり、30分間という限られた時間の中でいかに効果的なトレーニングができるかを伝えることが重要でした。
この価格とサービスのバランスは、新規体験者の入会率や既存顧客の継続率に直結する重要な要素です。
ブティック型ジムとして、通常のトレーニングとは一線を画した高付加価値のサービスを提供し、その価値を体感してもらうためには、価格に見合った質の高いサービスをしっかりと届けることが欠かせません。
具体的には、スタッフの教育を通じて、顧客へのケアやコミュニケーションを徹底し、彼らの満足度や継続意欲を最大化することが効果的だと考えています。スタッフ一人ひとりがトレーニング効果や低酸素のメリットをしっかり理解し、顧客に伝えることで、顧客のニーズに応え、リピーターへと育てるナーチャリングを強化することが、低酸素ジムの成功に直結しています。
【今後の低酸素ジムの可能性】
✔️業界の垣根を超えたブランディング
現在、低酸素ジムの認知度はまだまだ低く、ターゲット層も限られているため、市場規模が非常に小さいのが現状です。この小さな市場の中で顧客を取り合うことは、業界全体の成長を阻害し、結果としてマイナスな影響を与える可能性があります。今後の低酸素ジムの成長を促進し、新たな市場を切り開くためには、業界全体が統一したブランディング戦略を持つことが不可欠であると考えています。
市場の成長と新しいターゲット層の開拓
現在、低酸素トレーニングは特定のアスリート層や持久力強化を求める一部のユーザーに認知されていますが、それ以外の層には十分にアプローチできていないのが実情です。この限られたターゲット層を広げるためには、低酸素トレーニングが持つ「短時間で運動効果を出せる」「効率的なフィットネス」といった強みを、一般のフィットネスユーザーや健康意識の高い層に向けて継続的に発信する必要があります。
業界としての統一したブランディングの必要性
繰り返しになりますが、低酸素ジムが新たな市場を切り開くためには、各施設が独自のマーケティング戦略を展開するだけでなく、業界全体としてのブランディングが重要であると考えています。統一したメッセージを発信することで、低酸素トレーニングの有効性やメリットを、より多くの人々に伝えることが可能になり、それが認知度として定着してくるはずです。
✔️多面的なマーケティング戦略
低酸素ジムの市場拡大において、従来のアプローチにとどまらない多面的なマーケティング戦略が不可欠であると感じています。特に個人的に注力すべき3つのマーケティング戦略を記載しておきます。それは、「プレスリリースによる全国への発信」・「ヘルスケア領域とのパートナーシップ」・「デジタルマーケティングを主体とした潜在層へのアプローチ」です。
これらの戦略を組み合わせ、幅広い層に低酸素トレーニングの効果を伝え、ジムの認知度を高めていけると考えています。
プレスリリースによる全国への発信
まず、低酸素トレーニングの認知度を高めるために、プレスリリースを活用し、全国に向けて発信することが重要です。新たなサービスやイベント、研究成果などを定期的にメディアに提供することで、広範囲にリーチし、興味を引くことができます。特に、メディア露出を増やすことで信頼性も向上し、低酸素ジムのブランド力が強化されます。
ヘルスケア領域とのパートナーシップ
次に、ヘルスケア領域とのパートナーシップを構築することは、低酸素ジムの価値をさらに広げる鍵となります。フィットネスだけでなく、健康増進や予防医療として低酸素トレーニングの効果を認めてもらうことで、アスリートや従来のフィットネスユーザーだけでなく、健康志向の高い一般層にもアプローチでき、市場の幅を広げることができます。
デジタルマーケティングを主体とした潜在層へのアプローチ
最後に、デジタルマーケティングを活用した潜在層への効果的なアプローチについてです。SNS運用・Web広告やSEOの強化はおそらくどの店舗も力を入れているとは思いますが、実際に成果に結びつけるのは難しいと思います。これらの原因として、デジタルマーケティングへの理解が乏しく、ほとんどの場合は広告代理店やコンサルティングへ集客を丸投げ、もしくは闇雲な努力をしている店舗が多いからと考えています。
正しいデジタルマーケティングにより、低酸素トレーニングに興味を持つであろう潜在顧客に対して、的確に情報を発信することで、新規顧客を取り込むことは可能であると考えていますし、実際にSOLERAでは新規入会者の半数以上がWeb集客での流入経路となっています。
このマーケティング手法に関しては、また詳細記事を別途作成する予定です。
これらの戦略を組み合わせることで、業界全体として低酸素ジムの認知度を向上させ、さらに広いターゲット層へのリーチを確保し、市場全体での成長を促進していけると考えています。
✔️健康寿命延伸に貢献する社会的意義
低酸素ジムの可能性は、単なるフィットネスの枠を超え、社会全体における健康寿命の延伸に貢献するという大きな社会的意義に貢献できる可能性を秘めていると考えています。特に、高齢化が進む日本において、健康で活力ある生活を長く続けるための方法が求められており、低酸素トレーニングは、筋力や持久力を効率よく向上させ、予防医療としても有効な手段となり得ると信じています。
低酸素トレーニングは、肥満や糖尿病など、生活習慣病の予防にも効果が期待されています。医療機関や健康保険会社との連携を強化し、肥満や糖尿病といった生活習慣病の予防に役立つことが科学的に証明され、低酸素トレーニングが予防医療の一環として認識されることで、より広い層にトレーニングの効果を届けることができると考えています。
それはつまり、さらなる市場拡大が期待されますし、医療費の削減や健康保険制度の負担軽減にも貢献する可能性があります。
【2年間の低酸素ジム経営で得たこと】
現在までの2年間にわたり低酸素ジムを経営する中で、最も大きな課題は集客でした。開業当初、低酸素トレーニングという新しいコンセプトを理解してもらうことが難しく、従来のジムとは異なるため、ターゲット層にどうアプローチするかで苦戦しました。特に認知度が低いことが原因で、ジム自体の存在を知ってもらうことからスタートしなければなりませんでした。
そのため、SNS広告やイベント開催、口コミの促進、SEO対策など、あらゆるマーケティング手法を実践し、試行錯誤しながら集客を図りました。
その結果、徐々に低酸素トレーニングの認知度が高まり、少しずつ会員様を増やすことができました。短時間で効果を発揮するトレーニングとしての特性を前面に出し、効率的に健康を改善できる点を訴求することで、利用者のニーズに応えることができたと感じています。
また、私自身も低酸素トレーニングの効果を体感し、体力向上や疲労回復の速さなどを実感しています。体重減少や持久力向上といった身体的な変化だけでなく、普段の生活の中での体の軽さや疲れにくさが大きな実感として残っています。この経験が、低酸素トレーニングが確かな効果を持つことの確信につながっています。
さらに、お客様とのコミュニケーションを通じても、成果が明確に現れていることがわかりました。多くのお客様がトレーニング効果を実感し、日常生活やスポーツパフォーマンスでの向上を報告してくれています。このことから、低酸素トレーニングは効果が確実であると断言できます。
難しい業態でありながら、2年間で一定の実績を築くことができたのは、継続的なマーケティングと顧客との信頼関係の構築にあります。低酸素ジムの可能性をさらに広げていくため、これからも挑戦を続け、より多くの方にその効果を届けたいと考えています。
低酸素ジムの開業を考えている方、すでに低酸素ジムを運営しているが集客に困っている方、その他フィットネスジムのマーケティングに興味のある方は、お気軽にご相談ください!
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