Tree to house 〜魚沼の山とあなたを繋ぐ家づくり〜
仕事と私事が繋がった
建築業界に足を踏み入れてはや14年、齢37歳にして、ようやく人生でやり遂げたい事を見つける事ができました。
タイトルにもあるように「Tree to house」
木から家へ。
まぁ、家は木で作られてますから、当たり前と言えば当たり前のことなんですけど…笑
重要なのは「どこの山から来た木なのか」という事。
私がやり遂げたい事。
それは、生まれ育った故郷である魚沼地域の山に凛とそびえる杉=「魚沼杉」を標準仕様とした住宅を建てる事で、魚沼地域の里山保全に貢献したい、という事です。
もしかしたら越後杉、という名前は聞いた事があるかも知れません。越後杉とは新潟県内で伐採した杉の事を指します。
私が目指すのは、その中でも自分のルーツである地域の「魚沼杉」を余す事なく採用した住宅をブランド化し、適正な流通を確保する事です。
何故?
特に戦後、建築資材として不足していた木材を賄うために大量に植林された杉が、伐採適齢に達したにも関わらずほとんど活用されていないのが魚沼の、いえ新潟県全体の林業の最大の課題なのです。
活用されていない理由は沢山あるのですが
・安価な輸入外材との価格競争
・過疎、高齢化による担い手の減少
・大雪による根曲り杉という地域的特徴
兎にも角にも、切った方が良い木、切らなきゃいけない木が活用されずに放置されているんです。放置されると、木は生い茂ります。伸びた枝葉が太陽光を遮り、地上に光が差し込まなくなってしまい、足元の植物が育たずかえって土壌が荒れてしまう。
実はもう、待ったなし状態の山が多いのが、我らが新潟県なのです。
それによるデメリットは?
では、これらの要因で魚沼の山の木が活用されないまま放置されると、私達にとってどんなデメリットがあるのか。
・土砂崩れなどの災害がおこる
上記したように土壌が荒れる事で、土砂崩れなどの災害リスクが高まります。
・動植物の生息、生育環境の悪化
山が荒れる事で、山で暮らす動植物の生活が脅かされます。また、それによる獣害も増えてしまいます。
・水源涵養機能の低下
森林の土壌が、雨水を貯留し、河川へ流れ込む水の量を平準化して洪水を緩和するとともに、川の流量を安定させる機能を持っています。また、雨水が森林土壌を通過することにより、水質が浄化されます。これらの大切な機能が低下してしまいます。
里山の周辺に住む方はもちろん影響はありますし、私が今住んでいる新潟市でも、影響はあるんです。何故なら、川は繋がっているから。
川上である山が荒れる事で、川下である私たちの暮らしに多大な影響を与えてしまうんです。
住宅業界の今
恐らくこれを読んでいる方の殆どは、木造の建物に住んでいるのではないでしょうか?
その建物に使われている木材は、どこから来た木材が知っていますか?
これは建築業界に精通した方でない限り、よく分からない、という方が殆どだと思います。それが当たり前です。
実は今の一般的な新築住宅で採用されているのは6〜7割程度が海外から輸入された木材なんです。
特に新潟県内は斜面に立つ杉が積雪により根本がグニャリと曲がった根曲り杉が多いのが特徴です。
皆さんは築ウン十年の古民家を見に行ったことはありますか?
昔はこんな根曲り杉を曲がったまま上手に使って梁にしたりと、大工さんが一本一本、木の癖を見ながら適材適所に配置し、家の骨組みを組んでいたんです。
でも、今では正方形の柱が当たり前ですし、長方形の梁が当たり前。
これは品質、強度の平準化に伴う社会のニーズの変化ですが、根曲り杉達は自分でこのニーズに合わせる、なんて事は出来なかった訳です。
さて、そんな魚沼杉をどう使う?
上記の様に、構造材としての利用は現状、かなりハードルが高いと言えます。
では、どう使うか。
主に外壁材と、フローリングに使用します。
それがどんなメリットを与えるのかはまた別の機会に詳しくお話しするとして…
そもそも、私がこの事業を思いついた大きな大きなキッカケがあるんです。
それは、同じ新潟の同業である石田伸一建築事務所(SIA.inc)の石田伸一さんが5年ほど前から既に魚沼杉を広めようと活動をしており、2019年の4月に「魚沼杉の魅力を伝えたい」 というクラウドファンディングに挑戦した際に、私も知りました。
100万円の目標金額を上回る支援を集めたこの活動を知った私は、とても大きな衝撃を受けました。
何故なら、長年住宅業界にいながら、この時まで魚沼の杉を活用しようとか、林業が危ないとか、全く知らなかったし知ろうともしなかったからです。
その後も精力的に活動されている石田さんから様々な情報を得られる事で刺激を受け、今年の初めにこの事業をやろう、と決意しました。
ちなみに、石田さんは十日町出身で、石田さんの言う魚沼杉は主に十日町地域の山で伐採した杉の事を指します。
そして私は少し離れた旧北魚沼郡の広神村という地域の出身なのです。
ですから、実は少し地域が違っていたんですね。
だからと言って私は私で勝手に活動しよう!という事ではなく、事前に石田さんにも相談させて頂きました。
競争よりも、協働。
実は新潟では「住まいの学校」(通称:住学)という、同業他社が沢山集まって勉強会や懇親会をするグループがあるのです。
私も石田さんも参加しています。
ですから、私は石田さんの活動を邪魔しようとは1ミリとも思いませんし、むしろサポート出来たらと考えています。
目指す場所は一緒ですから、石田さんは今の十日町ルートを更に開拓していき、私は私の故郷である広神村方面ルートを新規に開拓。
ある程度地元の材木屋さんや林業の方とのコミュニケーションが取れて、流通を生み出す事が出来れば、ルートを一本化し更にパイプを太くしたい。
そんな風に考えています。
ですが、この事業はすぐに結果が出るものではありません。杉は伐採適齢になるまで、30年以上かかるからです。
だからこそ、今。すぐに取り掛からないと、本当に手遅れになってしまいます。
今日は特に今の正直な想いや、理念についてお話しさせて頂きました。
まだまだブランディングの初期段階ですが、その構築の模様も合わせて、逐一投稿していきます。
ここまで長い文章を読んでいただき、どうもありがとうございました!
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