母親でも父性を発揮できる｜【スターウォーズは古い】父性とは、助言せず、後ろからついていくこと
【質問】我が家には父親は居ますが、家族に無関心な為、子供にとっての父性が徹底的に欠けています 。そんな折、16歳になる息子が、「大人になりたくない、赤ちゃんに戻りたい、楽しかったから。大人になってもつまらない、働きたくない。」 と話しに来るようになりました。母親としてど のように接していけば良いでしょうか。また母親でも父性をあげることは出来ますか?
【お返事】母親には、母性も父性もあります。同様に、父親にも、母性も父性もあります。世の中の映画やドラマ、小説、現実などは、分かりやすいように、母親＝母性、父親＝父性という公式を作っているだけです。
だから、あなたが息子に父性をあげることは、十分に可能です。思春期のお子さんですから、思春期対応してみましょう。
※この記事は、Twitterの質問箱に来た質問を深掘りして回答したものです。
■思春期対応とは父性に近いもの
思春期への子どもへは、何か助言などをせずに、相手の言う方向に一緒についていくようにしましょう。
例えば、「今日は友だちとオールだ」と言えば、「友だちとオールは楽しいね」とか。不機嫌な顔をして食事に降りてこないなら、「ご飯置いとくよ」とか。相手の行く手を阻まないようにするのがコツです。ぶつからないことですね。同じ方向を向いていればぶつかりません。
この対応は何でしょうか？これは父性に近いのです。父性とは、
・余計なことをいわず
・半歩さがって、ついていく。
なぜ「ついていく」のが重要かは、養育事典で芹沢俊介氏が解説しています。それは、次の２つのことを押さえておく必要があります。（ ）は高間の補足です。
(1) 教え導くという父親の在り方（は幻想であり、そこ）から離脱する必要がある
(2) 人生の最早期における親子関係は母子関係が最重要である。だから子どもにとっては父親の重要度は二次的あることを認識・自覚する必要がある。
父親は教え導くものでなく、母子関係を補完するようなものである。母親をサポートする役割が課せられています。そのためには、カッコ悪い父親を演じることも必要でしょう。この目的を達成するなら、「ついていく」くらいがちょうどいいということです。
ついていくとは「見守っている」ということです。ついていくには、子どもが動くまで「待つ」ことが必要ですね。つまり父親からぐいぐいと動かないこと。これが父性です。
これによって、子どもは大樹に守られながら育っている感覚をもつことができます。スターウォーズで描かれる父親像とはちょっと違う印象があるでしょうか。スターウォーズや伝統的精神分析では、父親殺し（エディプスコンプレックス）がテーマになっています。
父親殺しとは物騒ですが、精神的に父親を乗り越えていくことですね。マンガの巨人の星も同じで、伝統的なテーマです。でも父親殺しはもうやめようというのが (1) です。カッコ悪い父親像でいきましょう、というのが新しい父性像とも言えます。
別に新しくないのですけどね。アダルトチルドレンの概念から出発した父性像です。アダルトチルドレンが提唱されたのが1990年代以降ですので、ここ30年といったところですね。
またコフートは、父性のことを理想化自己対象と言っており、これはどういうものかというと、
・この人がいれば大丈夫という感覚 です。寄らば大樹の陰（身を寄せるには大樹の元が安全である）ということですね。これが父性です。
■大人になりたくない思春期
赤ちゃんに戻りたいという気持ちは、学童期に妹や弟ができたときに芽生えがちです。しかし、思春期でもその気持ちが出現することが稀にあります。
思春期のその次にやってくるのが成人期です。大人ですね。社会の中に飛び出して責任のあることにまだまだ嫌悪感があるのが、思春期です。大人になる過大なストレスがかかったとき、赤ちゃん返りをします。実際に、赤ん坊のようになる人もいます。あるいは、赤ん坊にならなくとも、母親への甘えや怒りが強くなることもあります。
質問者さんの息子さんは「赤ちゃんに戻りたい」と言っていますが、実際に戻りたいわけではなく、「大人になりたくない。働きたくない」これが本音でしょう。ですから、この場合は、「16歳だから、まだまだ世の中に出なくていいよ」と見守ってあげててください。「そんなに早く大人にならなくていい、あと10年くらいね。」そんな感じでいると、子どももすっかりと安心して、そのうちあなたに寄ってこなくなるでしょう。自立へ加速するでしょう。
この見守る作業が、さきほどの父性ですね。
父性については下記も参照ください。
■まとめ
・思春期対応は父性を発揮しよう
・父性とは、余計なことを言わず、半歩後ろをついていく。動くまで待つこと。
・スターウォーズ的父性からは決別すべき
・大人になりたくないのが思春期。見守っていましょう。
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