被虐児はずっと見捨てられてきたので、見捨てられ不安(恐怖)はありません。
愛着障害の子ども、つまり親に虐待されて育った子どもにとっては、暴力をふるう親でも親であるという認識はあります。ですからある程度の年齢に達するまでは親と一緒に居ようとします。それは「見捨てられること」が怖いからではありません。
※今回の記事はラジオでも視聴できます。テキストを見ながらどうぞ▼
※この記事は、Twitterの質問箱に来た質問を深掘りして回答したものです。
■見捨てられ恐怖とは?
見捨てられ恐怖という言葉を調べてみたのですが、そのような言葉をググることはできませんでした。見捨てられ不安が強まったものと定義してもいいかもしれません。ということは、本態は「見捨てられ不安」ということですね。つまり不安型愛着スタイルであり、愛着不全ですね。
見捨てられ恐怖という用語はあってもいいですが、心理学用語としては定着している用語ではありません。児童虐待の相談者がどういう文献からその言葉をもってきたのか不明です。
さて、虐待を受けて育った成人になった人は、回避型愛着スタイルになります。不安型愛着スタイルにはなりません(一部例外あり)。見捨てられることを怖れるというよりも、人間関係自体を怖れているわけですので、見捨てられる恐怖とは言えないでしょう。見捨てられ恐怖は、見捨てられないようにするということですので、人間関係をつなぎとめようとします。これは回避型の行動ではありません。
■被虐児は、子どもの頃は見捨てられ不安があるか?
衣食住は人間の生存に欠かすことができないものです。これらは大人になればなんとか自分の力で得ることができますが、子どもには無理難題でしょう。被虐児は、幼少期から学童期まで通して安全ではなかったため、見捨てられるという意味が分からないと思います。なぜなら、ずっと見捨てられてきたからです。見捨てられる不安というものは、見捨てられなかったという体験をしていないと感じることができません。
被虐児の心性としては次の2つがあるでしょう。
まず、この親から離れてしまったら、食べるものも、住む場所も、着るものもなくなってしまうという、切実な恐怖はあります。
このような虐待の状況に放り込まれたら、誰だって恐怖です。戦争の恐怖と同じです。
ですから、なんとか暴力する親に取り入ろうとします。これは生きるための生存戦略です。まず、精神的なものよりも、物質的なものが無くなる恐怖があります。これは見捨てられ不安とはいいませんね、【生存戦略】です。次に虐待された人(子ども・成人問わず)には、親へのファンタジーがあります。
この親は暴力をふるってくるが、いつか改心してくれて自分を大事に扱ってくれるはずだ、というファンタジーです。この精神的な作用があるので、こころが親にくっついているように見えます。
援助者は、このファンタジーを見捨てられ不安の延長と誤解することがあります。ポイントは、見捨てられ不安には親子の愛着が前提としてあります。虐待の場合、実際には愛着関係は成立していません。
このような子どもたちが、10歳を越えて思春期を迎える年齢になると、例えば友だちの家を転々としたり、学校の先生に生きる術を教えてもらうなど、なんとかひとりで生きられる状態になってくるので、親を見捨てていきます。見捨てられ不安など微塵もありません。そして「回避型」の愛着スタイルとして定着していきます。
◇見捨てられ不安について再考する
ところで見捨てられ不安は、誰にでもあるのでしょうか?いいえ、そうではありません。
普通の子どもは、親への基本的信頼感があるので、見捨てられ不安はありません。
この基本的信頼感がない子どもは、見捨てられ不安を抱く間もなく、つねに生存戦略を練りながら生きています。
見捨てられ不安は、基本的信頼感のある子どもが機能不全の家庭で育った場合に芽生える感情といえるでしょう。
■まとめ
見捨てられ恐怖という心理学用語はないが、見捨てられ不安が強まったものと思われる。
被虐児は、ずっと見捨てられてきたため、見捨てられるということがどういうことか理解できません。だから見捨てられ不安(恐怖)はありません。
被虐児が親から離れないのは、見捨てられ不安からではなく「生存戦略」からです。
◇ラジオおやすみカフェ:今宵のメニューは…Go / Paul Chambers
■他の助けを求めるのもいいでしょう
もし、あなたが見捨てられ不安を持っていたり、あるいは人を回避してしまう場合は、臨床心理士などの心理の専門家にアドバイスを求めるとよいでしょう。時間はかかるかもしれませんが、あなたのカウンセリングがうまくいきますように。
■この記事に興味を持った方は、ソレア心理カウンセリングセンターをLINE登録ください。登録いただいて「プレゼント希望」とメッセージを送っていただけると、「歌と心理学」の小冊子をもれなく差し上げます。下のQRコード(を長押しして)からご登録ください。▼
■Twitter でも発信しています。フォローいただくと、発信ばかりでなく質問箱への質問やそのQ&Aを見ることもできます。【Twitter】→ https://twitter.com/soleapsy
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?